日本財団 図書館


2000/11/03 産経新聞朝刊
【主張】北海道の教育 教委は組合との癒着を断て
 
 北海道教育委員会が校長の権限を明確化する規則改正を行う一方で、それを形がい化するような通知を出していたことが分かり、国会でも取り上げられた。教職員組合に配慮したものとみられるが、これでは校長は十分な指導力を発揮できない。通知をただちに廃棄すべきだ。
 この規則改正は、今年一月、校長のリーダーシップを確立するため、学校教育法施行規則が改正されたことに伴う措置である。それまでは、職員会議を最高議決機関としている学校がかなりあり、校長の権限をしばっていた。卒業式や入学式で国旗掲揚や国歌斉唱が行えない原因にもなっていた。これを改めるため、職員会議を校長の補助機関としたのが改正の趣旨だ。
 今回、道教委が行った学校管理規則改正は「校長は必要があるときは職員会議を開き、職員の意見を求める」という従来の部分を削除し、「職員会議は校長が主宰する」という条項を新たに加えたものだ。だが、この校長権限をしばっていた削除部分は「留意事項」として別の添付文書で復活していた。いわば“裏通知”である。規則改正の趣旨の有名無実化をはかった姑息な手段と言わざるを得ない。
 しかも、道教委はこの事実を文部省に報告せず、二重の過ちを犯していた。北海道の子供や保護者に対する背信行為でもある。道教委はこの裏通知を破棄するだけでなく、これを作成するに至った経過や理由についても、はっきり説明する必要がある。
 日教組の中でも過激な教職員組合(北教組)の勢力が強い北海道では、昭和四十六年、「学校管理規則などの改正は組合との交渉で行う」とする協定(46協定)を道教委と北教組が結んでいる。この協定が長年、校長の学校運営を妨げてきた。今回の裏通知の背景には、この46協定がある。
 しかし、文部省は「管理運営事項を組合との交渉の対象とする協定は、地方公務員法に違反する」としている。こんな化石のような“違法協定”が今も存在していたこと自体、驚きである。ただちに破棄してもらいたい。
 札幌では、市教育委員会が来春の卒業・入学式に向けて国旗・国歌実施の職務命令を出すなど、教育正常化への指導が始まっている。札幌市教委の毅然とした姿勢に比べると、北海道教委は組合に甘いようだ。
 組合の勢力が強い広島県や三重県でも、県教委は組合との癒着による悪弊を断とうと努力している。北海道教委もこれらの例にならい、長年の悪弊を断つ努力を始めるべきだ。そして、札幌市教委と力を合わせてほしい。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION