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2000/11/14 産経新聞朝刊
【豊中の教育】(1)体質改まらぬ市教委 次から次へと問題表面化
 
 大阪府北部にある人口約四十万人の豊中市は、教育熱心な土地柄で知られる。現在でも、社員の子供の教育を考えて社宅を設ける大企業が多い。が、実際に行われている学校教育に対して、疑問の声があがりはじめた。「文教都市」のイメージの裏で、なにが行われているのか。
 「豊中の教育は『どこか変だ』と思っていた市民や市議は多い。その長年のウミが一気に噴き出しつつあるようだ」
 大阪府豊中市で十月十三日に開かれた市議会文教常任委員会。委員の一人で新政とよなか(旧民社)所属の北川悟司市議は、委員会でのやりとりをこう振り返った。
 主に取り上げられたのは、市教委による学習指導要録の形がい化指示や一律評価の記載▽高学年の通知表の二段階評価▽テストに点数をつけない−などの小学校の学習評価の問題。
 さらに、「豊中市教職員組合」(豊中教組)による主任制反対活動▽今春の小学校の入学式で、国旗・国歌に反対する新入生担任の男性教員が式を欠席し、加入する「大阪教育合同労働組合」(教育合同)の活動で別の学校を訪れていた−という組合員らの問題も、新政とよなかのほか、公明、共産の市議らが会派を超え、繰り返し市教委の責任や対応を追及した。
 豊中では過去たびたび、学校教育法や学習指導要領を逸脱するような教育内容が表面化してきた。
 平成九年には、一部の小学校で「国語」の授業名を「日本語」と言い換えていたことが判明し、市教委が指導。昭和五十九年には、ある小学校で、音楽の教科書の「君が代」のページに、北朝鮮の民衆歌「白頭山」の楽譜を張りつけて二年生に歌わせ、六年生の社会科で「戦争では日の丸が悪魔のシンボルのように恐れられた」などとしたプリント授業が行われていたことが問題となり、校長が教諭に降格された。
 北川市議は「市教委は、こうした問題を解決してきたように見える。しかし、実際にはもぐらたたきのように新たな問題が起きる。根本的に対応してこなかったからだ」と指摘する。
 市民の意識も、変わってきた。公明の佐野満男市議はこういう。「(評価の差のない)通知表や点数のないテストは『いまどきは、そんなものか』と思っていた保護者がほとんど。しかし、新聞や市議会で取り上げられて問題点を指摘され、『これでいいのか』という声が次々と聞こえてくるようになった」


 
 
 
 
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