卒業式や入学式での国旗・国歌実施率が全国最低レベルの札幌市で、国旗・国歌の指導を求める同市教育委員会の職務命令に同市教職員組合(札教組)が反発し、指導主事の学校訪問を拒否するなどの妨害行為を行っている。このような抵抗戦術は他の都府県では通用しない。子供不在の闘争は、そろそろやめたらどうか。
北海道の学校現場は日教組のなかでも闘争色の強い北海道教職員組合(北教組)の影響を受け、正常化がかなり遅れている地域といわれる。とりわけ、札幌市は北教組の支部、札教組の組織率が六〇%を超え、日の丸・君が代への反対運動が激しい都市である。
文部省の再三の指導もあって、札幌市教委が正常化に向けて本格的な取り組みを始めたのは、昨秋からだ。しかし、札教組側の抵抗が激しく、今春の卒業式や入学式で、国旗の実力撤去など混乱が相次いだため、来春に向け、職務命令を出したという。困難が予想されるなかで、あえて強い指導に踏み切った市教委の判断を支持する。
札教組の上部団体である北教組は、国旗・国歌の指導義務を定めた学習指導要領について「法的拘束力はない」とし、実施のあり方は「教職員みんなで決めるものだ」としている。こうした考え方も、今は通らない。指導要領の法的拘束力は複数の最高裁判決で認められ、学校行事のやり方は校長が職員会議などの意見を参考にしながら決めるものとされている。
広島県や三重県、東京都国立市など組合勢力の強い地域では、校長の指導が困難な学校も多く見られたが、文部省や教育委員会の指導により、徐々に正常化に向かっている。北教組や札教組も、かたくなな抵抗姿勢を改め、譲歩すべきところは譲歩し、歩み寄ってほしい。子供や保護者も、それを願っているものと思われる。
二年前、長野五輪で金メダルをとった北海道出身の女子選手が表彰式で、帽子をかぶったまま君が代吹奏と日の丸掲揚に臨み、違和感を抱かせたことがあった。彼女のせいではない。ふだんの学校教育で、国旗・国歌に対するマナーを教えられていなかったのだろう。国旗・国歌のことを知らずに社会に出て、つらい思いをさせられるのは、北海道の子供たちなのだ。教組側もこのことに早く気づくべきだ。
札幌の教育をめぐっては、国旗・国歌問題以外にも、行き過ぎた組合活動によるさまざまな問題が山積しているという。札幌市教委はこの際、長年の病巣にメスを入れてほしい。そして、市教委の指導が北海道全体の教育改革につながることを期待したい。
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