三重県の学校教員らが三年間で、勤務時間中に六十万時間を超える組合活動を行っていたことが分かった。県教育委員会は、不当に支給された給与十億円以上の返還を求めるという。組合活動と教育活動は峻別されなければならず、当然の措置である。
三重県では昨年来、北川正恭知事らの指導のもと、勤務評定の形がい化や国旗・国歌の指導の不徹底など、教職員組合による適正を欠いた教育の実態に次々とメスが入り、正常化がはかられている。勤務時間中の組合活動調査もその一環である。
同県の公立学校の教職員は八割以上が日教組系の三重県教職員組合(三教組)に属し、「日教組王国」といわれる。平成七年に北川県政が誕生するまでは、三教組などの推薦を受けた革新色の強い知事の県政が六期二十三年続いた。このため、多くの学校では、勤務時間中の組合活動を校長らも暗に認めていたという。そうした“悪しき慣例”を断ち切ろうとする北川知事らの毅然とした姿勢を評価したい。
広島県では、教員が組合活動で学校を離れるさい、いったん年休届を出し、後で破棄する“破り年休”が明らかになり、給与の返還が行われている。小学生の土下座要求が表面化した東京都国立市でも、教員の勤務時間中の組合活動が問題になり、都監査委員は都教育長に対し給与支出の損害額補てんを勧告した。神奈川県でも、同様の問題が鎌倉市議会で指摘され、全県に波及しようとしている。
公立学校の教職員など地方公務員にも、原則として争議行為以外の組合活動が認められている。しかし、教師が組合活動を行う場合は、授業に支障をきたさないことが常識ではないか。
森喜朗首相の諮問機関、教育改革国民会議は先月の中間報告で、「教師の意欲や努力が報われ評価される体制づくり」を求めた。勤務評定の見直しや教員養成課程の改善、教員免許の更新制など課題は山積しているが、その前にやらねばならないことがある。組合活動と教育活動のけじめである。
組合活動は、原則として授業時間以外に行う。授業中に組合活動を行う必要が生じた場合は、事前に校長に届け出る。代わりに授業をする教員の手当てもしておく。まことに情けない限りだが、教員の資質改善のためには、こんな基本的な職場教育から始めなければならないのが、日本の公立学校の実態なのだ。
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