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2000/08/11 産経新聞朝刊
【主張】国立問題処分 校長らは教育改革の緒に
 
 東京都国立(くにたち)市立第二小学校の卒業式で、児童が校長に国旗を降ろさせ土下座を迫るなど「国立の教育」をめぐる問題で、都教育委員会は校長の指示に従わなかった教員ら十七人の処分を発表した。これで問題は一区切りついたように見えるが、本当はこれからが大変だ。市の教育委員会と校長らは力を合わせ、教育改革の緒についてほしい。
 この問題は単に、国旗・国歌の指導のあり方にとどまらない。また、国立二小、五小だけの問題ではない。国立市全体の教育現場には、戦後教育のゆがみが凝縮した形で澱(おり)のようになってただよっている。
 「起立」「礼」などの号令は、「軍隊につながる」という理由で行わない学校がある。校旗や校章のない学校もある。ある学校では、紅白の横断幕は「日の丸を連想する」という理由で禁じられ、運動会では紅白の玉入れの代わりに青と黄色の玉入れが行われているという。また国立二小では、三年生の児童に自衛隊を否定的に描いたアニメーションビデオを見せていたことが明らかになった。
 いずれも、民主主義や平和主義の理念をはき違えたものだ。世間の常識から大きく外れている。こうした一部の学校でしか通用しない“非常識”な教育の実態を一つひとつ洗いだし、健全な姿に改めていくことから始めなければならないだろう。
 国立市の公立小中学校は、日教組や全教などの系列にある教職員組合に所属する教員の比率が高く、校長や市教委が十分な指導力を発揮できない状況にある。教員人事が停滞し、組合幹部らが国立市とその周辺自治体に集まりやすい傾向があるともいわれる。一方、校長は国立市の学校に赴任したがらない。これでは、十分な教育改革は期待できない。
 都教委の人事面での支援も必要だ。孤立無援に近い校長を支えるため、他の市区町村で実績のある教員を国立市に異動させることも考えるべきではないか。極端な偏向教育を行った教員に対しては、いったん学校現場から外し研修を命じる措置も必要である。
 卒業式や入学式での国旗・国歌の実施をめぐり、生徒会と教職員組合が校長の指導に反発していた埼玉県立所沢高校は現在、正常化に向かっている。県教委が同校に管理職候補の教員を送り込むなどして、人事面でも支えたからだ。都教委も、この埼玉県教委のやり方を参考にしてほしい。
 組合側もいつまでも反抗的な態度をとらず、今回の処分を機に、自らの過去を謙虚に反省すべきである。


 
 
 
 
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