昨春、「国旗・国歌」に反対する生徒会が卒業・入学式をボイコットした埼玉県立所沢高校で、今年は一般生徒らの間から、生徒会の方針に疑問を指摘する声が上がり始めたという。同校が正常化に向かい始めた兆しであり、この新しい動きに注目したい。
今春の卒業式に向けての生徒総会では、今まで圧倒的多数に支持されてきた「日の丸・君が代」に反対する決議文が小差でしか可決されず、職員会議では生徒会活動方針が否決されたという。生徒会と教職員組合、PTAの三者が国旗掲揚・国歌斉唱を求める校長の方針に反対し、卒業式に三十一人(全校生徒の二・五%)しか出なかった一年前とは、状況が一変している。
われわれは昨年、「三者共闘による校長批判に疑問を持つ生徒・教員・保護者は少なくないはずだ。そうした人たちが声なき声を声にして積極的に発言することを期待する」と書いた。その「声なき声」が勇気を持って発言し始めたのである。
同校の「日の丸・君が代」反対闘争には、全教(全日本教職員組合、共産党系)に加盟する埼玉県高等学校教職員組合(埼高教)や日弁連(日本弁護士連合会)子どもの権利委員会など特定の政治勢力が深くかかわっている。所沢高校に芽生えた新しい動きが、学校の正常化に向けて力を発揮することを期待したい。
他の自治体でも、教職員組合の「日の丸・君が代」反対闘争で荒れた卒業・入学式を厳粛な学校行事にしようという動きが強まっている。高校の国旗掲揚・国歌斉唱率が全国最低だった東京都は今春の卒業・入学式に向けて、「国旗は式典会場の正面に掲げる」「式次第に『国歌斉唱』を記載し、司会者は『国歌斉唱』と発声する」など具体的な指示を出した。日教組(日本教職員組合、旧社会党系)の影響が強い広島県では、県教委が国旗掲揚・国歌斉唱を職務命令として通達した。
卒業・入学式での国旗掲揚・国歌斉唱の指導を義務づけた学習指導要領に法的拘束力はない−という意見がある。しかし、指導要領に根拠を求めるまでもなく、「日本の国旗は日の丸、国歌は君が代」は歴史的にも、慣習法としても定着している。児童生徒や保護者、教職員が学校生活の節目にあたる卒業・入学式に、日の丸を掲げ、君が代を歌うことは日本国民として、自然な国民感情なのである。
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