学級崩壊の深刻化とともに、教員定数を増やし、「三十人学級」の実現を求める声が強まっている。だが、教員の数を増やすだけでは、問題は解決しない。教員の質を向上させるための勤務評価体制の確立が先決である。
先月、岡山県で行われた日教組(旧社会党系)の教研集会では、従来のいじめや校内暴力に加え、授業が成立しない「学級崩壊」に関する報告が相次ぎ、「担任一人では手に負えない」「一学級の生徒数を現行の四十人から三十人以下に」という声が一段とボルテージを上げた。同時期、滋賀県で行われた全教(共産党系)の教研集会も、同じような雰囲気だったという。
だが、教員数を増やす前に、やるべきことがある。それは校長ら管理職が一般教員の勤務状態や成績を正しく評価し、給与や人事に反映させる考課システムの確立である。現在、先生がいやがる勤務評定は、ほとんどの自治体で行われるようになったが、有名無実化しているケースが多い。
例えば、東京都では、ABC三段階の絶対評価が行われているものの、その結果は本人に知らされず、給与や人事異動にもひびかない。しかも、勤務・休憩時間に関する「東京都方式」といわれる労使間の了解事項により、午後四時の帰宅が許されている。まじめに生徒指導や補習授業に取り組む先生もいるが、定時前に帰宅する無気力な先生と給料はほとんど変わらない。これでは、先生にやる気が起きない。
現在、日本は一学級四十人以下の「四十人学級」を基本とし、それに沿って教員が配置されている。教員一人当たりの生徒数は小学校十九・五人、中学校十六・九人。これに対し、米国では同じ教員一人当たりの生徒数が初等学校十八・九人、中等学校十四・八人、英国でも初等学校二十二・八人、中等学校十六・二人。欧米に比べても、日本の教員数が少ないとはいえない。問題は、先生の量より質である。
最近、日本の学校社会にも、無競争を打破しようという機運が生まれつつある。福岡県の日教組に対抗する高校教員の組織「福岡教育連盟」では、(1)授業の分かりやすさ(2)カウンセリング能力−など「あるべき教師像」の能力をリストアップし、管理職・自己・生徒の三者による評価方法を検討している。東京都では、教育長の私的諮問機関「教員の人事考課に関する研究会」が勤務評価を人事や待遇に反映させる方法を審議している。
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