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1995/07/27 産経新聞朝刊
【主張】協調時代の教育再生への道
 
 文教政策をめぐる半世紀近い対立の歴史に終止符がうたれる。五年前「阻止・粉砕・撤回」の看板を下ろし、参加・提言型へ、と運動の転換を図った日教組が九五年の運動方針案で、「日の丸・君が代」問題には一切触れず、学習指導要領や研修制度、主任制度についても、文部省への歩み寄りを具体的に明らかにしたからである。文部省側もこれを歓迎しており、運動方針案が来月の定期大会で承認されれば、両者は協調時代を迎える。
 戦後長い間、政治闘争や政治的思惑を優先させ、子供や保護者、教育現場をなおざりにしてきた日教組の責任は大きい。この反省にたっての路線転換であるなら、わたしたちも支持する。今後は子供たちを中心に据えた教育実践運動に徹してもらいたい。日教組はひところは九〇%近くもあった組織率が三四・一%にまで落ち込んでいる。組織の延命のための戦術転換としたら、国民の支持は得られないだろう。
 いま、教育現場には、いじめ、登校拒否、校内暴力、体罰など一刻も早く克服しなければならない問題がある。「個性尊重・創造性重視」の教育のための制度改善も急務である。さらに、新しい知見を生み出す研究教育体制も模索しなければならない。こうした課題に取り組むには、組合員一人ひとりに教育実践の力量と時代変化を読み取る見識が求められる。組織としては、政策立案能力が必要だ。残念ながら現状では力不足は否めない。偏差値追放、高校教育の多様化、新学力観の学習指導要領など、文部省の施策にたいする現場組合員や日教組中央の対応や分析は的確さに欠ける。
 ただ、日教組の「二十一世紀ビジョン委員会」が四月にまとめた報告書には、検討に値するいくつかの提言がある。時代変化や実践の成果を教育内容に素早く反映できるカリキュラムセンターの設置、「開かれた学校」や家庭、地域の教育力回復を目指す「学校協議会」「地域教育協議会」の設置、中・高一貫教育の先導的試行などについては文部省側と論議を深めてほしい。
 国や地方の教育行政や教育財政についても抜本的な見直しが迫られている。地方分権が叫ばれるなかで、文部省や教育委員会の役割や国庫助成はいまのままでいいのか。教員組織の運営も見直す必要があるのではないか。文部省と日教組の協調が双方の組織や利益の温存のためであってはならない。国民の教育のためには、互いに身を削る覚悟で望ましい教育政策決定システムを探ってもらいたい。


 
 
 
 
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