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2003/03/23 読売新聞朝刊
[社説]教育基本法 答申生かし改正案の提出を急げ
 
 ようやく土台ができた。だが問題はこれからだ。
 文部科学省の中央教育審議会が、教育基本法改正に向けた答申をまとめた。首相の私的諮問機関、教育改革国民会議が二〇〇〇年に出した提言を、具体化した。
 新たに法に規定する理念として、「公共の精神」や「国を愛する心」の涵養(かんよう)、伝統の尊重などを盛り込んだ。
 いずれも、これまで欠けていた理念である。その点では前進だ。答申を生かして基本法を改正し、戦後教育のゆがみを是正せねばならない。
 現行の基本法は、作成過程でGHQ(連合国軍総司令部)の干渉を受け、日本側原案にあった「伝統を尊重し」や「宗教的情操の涵養」が、削除されたり書き換えられたりした。
 それが、戦後教育を「個」の偏重に陥らせ、「公」の精神をないがしろにさせることにつながった。国とのかかわりも軽視された。
 今、学校に、北朝鮮による日本人拉致事件を授業で扱うことをためらう空気がある。国の存在意義について考えざるを得ないテーマだからだ。国家をタブー視する姿勢は健全な教育とはほど遠い。
 こうした点も含め、現行法が戦後教育に及ぼした影響などについて、中教審が本来なすべき論議を十分にしてきたとは言い難い。「宗教的情操教育」についても合意形成ができなかった。
 基本法改正には、「全体主義につながる」との批判もある。民主主義が保証されていない国における愛国心の強調は危険だが、日本の民主主義は十分成熟している。イデオロギー重視の立場からの批判としか、言いようがない。
 国民会議発足に当たり、当時の小渕首相は、英文学者の池田潔氏がイギリスのパブリックスクールの留学体験を記した「自由と規律」の新書判を、関係者に配った。規律の中で自由な精神がはぐくまれていく様が、描かれている。
 自分を律することを知って初めて、自由を使いこなせる人間となる。そのための教育が必要だ。三年前の論議の出発点を思い起こさねばならない。
 幅広い宗教団体で構成する日本宗教連盟が、「宗教を文化として教える」ことを求めるなど、新たな動きもある。
 答申を受け、与党が改正案の協議に入るが、公明党は慎重な姿勢を崩していない。支持母体の創価学会に、改正へのアレルギーが強いためだ。与党三党は直ちに改正案を国会に提出することは避け、協議を続ける。
 不十分な面を改めるよう論議を尽くし早急に改正案を提出すべきである。

 
 
 
 
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