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2003/02/09 読売新聞朝刊
[社説]高校入試改革 多様化の流れにどう応えるか
 
 高校入試がたけなわだ。その中で、公立高校の入試改革が、各地で進んでいる。
 東京都と和歌山県が今春の入試から、学区制を廃止した。受験生は、都や県内全域のどの高校でも志望できるようになった。学区を拡大した地方自治体も多い。
 受験生の選択肢を増やし、高校間の競争を促す狙いがある。
 各高校独自の出題で試験を実施する動きも広がりつつある。教委が一部の問題を複数作成し、どの問題を出題するかを高校側に選ばせる地域もある。
 トップクラスの学力の受験生が集まる高校の場合、他校と同じ問題では学力の差を見極めにくいなどの事情による。
 ともに、受験競争の緩和や試験の平等性を重視した従来の考え方を、大きく覆すものだ。転換を歓迎したい。
 狭い学区の中での学校選択は、各校が特色を持つことを妨げてきた。
 高校進学率が97%に達した今、受験生の学力、興味・関心、希望進路は、幅が広がっている。高校の多様化を進め、それぞれの受験生に合った高校の選択を保証するのは当然のことだ。
 「ゆとり」が叫ばれる余り、公立高校には、学力重視を打ち出しにくい雰囲気もあった。そうした事情もあって、日本の子供は、平均点は高いものの、飛び抜けた学力の持ち主が多くないことは、各種の国際調査でも明らかだ。
 学力の高い生徒を選抜し、育てることは、国家戦略としても重要である。
 問題は、各高校がそれぞれ特色を十分に打ち出すには至っていないことだ。
 都立高校はそれぞれ、「期待する生徒の姿」を公表するなどしているが、多くは、学校像を絞り切れていない。独自色をより明確に打ち出すことが必要だ。
 そのためには、校長のリーダーシップを確立しなければならない。予算の使い方を校長に任せ、高校ごとに教員を公募するなどの工夫も進めるべきだろう。
 中学から高校に提出される調査書(内申書)のつけ方も変わった。成績の順位による相対評価をやめ、到達度を見る絶対評価に切り替えたところが多い。
 だが、中学の教員が公正で客観的な成績判定をしたかどうか、高校側には依然として不安がある。調査書の比重の大きい公立高校では、絶対評価の影響はより大きい。狙い通りの評価がなされたかどうか、十分な検証が必要である。
 入試改革の背景には、急激な少子化が進み、公立高校といえども生き残りを図らねばならないという事情がある。生き残るには、入試の検証と、入試に連動した教育内容の改革が不可欠だ。

 
 
 
 
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