2001/02/24 読売新聞朝刊
[社説]問題教員 子ども守るため対策は当然だ
指導力や適格性に欠けるなど問題のある教員に対し、各都道府県教委が研修の導入などの対策に力を注ぎ始めている。
多くの教員の中に、満足に授業ができなかったり、同僚との協調性がまったくなかったりする者がいることは事実だ。教委が対策の強化を考えるのは当然だ。
「子どもが嫌いで話をしない」「期日までに試験問題が作れない」。大阪府教委が指導主事らの報告をもとに推計したところ、そんな問題のある教員が、府立学校教員約一万千人のうち、四百二、三十人いるという。全国的にも実態は同じようなものだろう。
これらには何らかの対応が必要だ。大阪府教委は来年度中に、弁護士、医師ら第三者をまじえた指導力向上委員会(仮称)を設置し、その意見を聞きながら、問題のある教員を現場から外して研修させることにしている。高知県教委も同様の諮問機関づくりを検討中だ。
九七年度から全国に先がけて指導力不足教員の研修を制度化した東京都教委は所属校内で行っていた研修を、来年度から研修センターでも実施する。
一年間の長期コースのほか、校内とセンターの双方での研修や、夏休み中だけ行う十日間の短期コースを設けた。
佐賀県教委も今年度、四人を授業から外して研修を行い、授業見学や、専門家の講義を聞かせたりしている。
心身ともに成長期にある子どもにとって、教師が与える影響は大きい。問題があればまず教壇から降ろし、適不適を見極めるのは当然だろう。遅すぎたとはいえ、こうした動きを各都道府県に広げていかなければならない。
文部科学省は、適格性を欠く教員を教職以外の職員に配置転換できるよう、地方教育行政法の改正案を今国会に提出する。問題のある教員対策に、教委の選択肢を増やす妥当な改正である。
地方公務員法によれば、適格性を欠く教員の分限免職も可能だが、実際に処分にまで至るのは極めてまれだ。九九年度の場合、全国で十一人にすぎない。
勤務状況や管理職による指導の記録が十分でなく、処分できなかったケースもあると指摘されている。教育の場にも社会の常識を改めて徹底すべきだ。
問題を抱えたままの教員に退場を促すと同時に重要なのは、指導力の優れた教員の処遇だ。表彰制度や特別昇給制度を実のあるものにしなければならない。
教育課題が複雑さを増し、教員には不断の能力向上が求められている。努力する者が正当に報われてこそ、公教育への信頼回復が可能になる。
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