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1999/02/01 読売新聞朝刊
[社説]変革期迎えた教師に二つの顔
 
 学級崩壊に悩む教師と、教育改革に果敢に挑む教師と、先ごろ岡山で開かれた日教組の教育研究全国集会で、その対照が際立った。子どもと時代の激しい変化が形作る教師像の、裏と表、影と光の関係と言ってもよさそうだ。
 授業中に子どもたちが勝手に歩き回ったり、奇声を上げたり、揚げ句の果てに机を放り投げたりする。小学校低学年からあらわれるクラスのそんな騒乱状態を教師たちは学級崩壊と呼んでいる。
 急速に広がっているなどと、センセーショナルな取り上げ方もされるが、集会では「そんな言葉がない十年前に経験した」との発言もあった。ようやく実態が明らかになり始めていると言った方が正確だ。
 小学校では教師一人が一日中一つのクラスを担任するため、表面化しにくかったようだ。さらに、自身の指導力にもかかわる問題だけに進んでは口にできなかったという事情もあろう。
 「教師が弱音を吐いてどうすると思ったが、苦しい時には苦しいと言いたい。周りでそれを支えてくれる仲間がほしい」。ある教師はこう訴えた。問題をできるだけ多くの教師で共有しようという動きで、これは評価しなければならない。
 この問題への対処法は、まず問題を明るみに出すということだ。集会での多くの報告でも、複数の教師、学校全体、さらには地域へと問題を投げかけ、一体となって取り組むことが効果的だったとされた。
 子どもたちの変化に、戸惑い、たじろぐ教師たちの一方で、集会では、教育改革の最前線に立って、子どもたちをぐいぐいと引っ張っていっている元気な教師たちの姿も目についた。
 二〇〇二年度から実施される新しい学習指導要領では、教科の枠を超えて学ぶ「総合学習」が設けられる。それを先取りして実践する教師たちなどに、特にその強い意気込みが感じられた。
 富士山のふもとにある小学校の教師は、道徳を中心に国語や理科などを総合的に組み合わせた富士山研究の事例を報告した。登山客との交流、環境問題への関心の広がりなど大きな成果が上がったという。
 地域を含めた学校自慢を、学校新聞やビデオレターの形で相手校と交換し合った事例も関心を呼んだ。国語、社会の時間が利用されたが、小学三年生が自己表現力を着ける上でかなり効果的だったそうだ。
 このほか、公立の中高一貫校への準備を進める教師、総合学科高校で生徒の幅広い選択にこたえて一人で七科目も担当している教師の報告もあった。
 教育はいま戦後最大の転換期を迎えている。知識の一方的な伝達ではなく、子どもたちに生きる力、自ら学び、自ら考える力を身に着けさせようというのが基本的な方向だ。子どもの能力、関心に応じて、学級や教科、授業時間などあらゆる「枠」を超えた試みが意味を持ってきている。
 子どもや時代の求めを正面から受け止めて柔軟に対応する。多くの先行事例はそのまま学級崩壊の処方せんでもあろう。

 
 
 
 
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