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1997/01/26 読売新聞朝刊
[社説]「第三の教育改革」を実らせよう
 
 文部省が橋本首相に報告した「教育改革プログラム」は、実現に向けた今後の手順と一応の全体像を示している。
 ただ、その中身については、すでに準備中のもの、審議会の論議が大詰めの段階に入っているもの、これから検討に着手するものなどが入り交じっていて、なお不透明な部分も残る。
 今後折に触れて、改革の方向を国民に説明していくことが求められよう。同時に約六十項目に及ぶプログラムを、総合的・有機的にリンクさせ、副作用や弊害が出ないようにする配慮が欠かせない。
 プログラムは、「個性を尊重しつつ、豊かな人間性をはぐくむ教育」を改革の基調に挙げている。具体的には「正義感・公正さを重んじる心や他者を尊重する心、望ましい社会性や倫理観」だとする。
 いずれも「生きる力」の前提となるべきものだ。創造性や国際性を培うことの重視を含め、異論のないところだろう。
 その上でプログラムは、中高一貫教育制度の導入、大学入学年齢制限の緩和、小中学校の通学区域の弾力化、二〇〇三年からの完全学校週五日制に向けた教育内容の再構築、入試の改善、大学院の充実と大学学部の再編成などを盛り込んでいる。幼稚園から大学まで、まんべんなく目配りしたものになっている。
 これらを通じて読み取れるものは、いわゆる「教育の自由化」が、仕上げの段階に入りつつあることだろう。
 言うまでもなく、十年前の臨時教育審議会以来の流れである。さまざまな規制を緩和して、地方や、大学を含めた学校現場の裁量の幅を広げると同時に、若者や子供の学ぶ自由を認めていく方向だ。
 プログラムの前文も「規制の緩和を進めながら多様な活動を可能とするよう留意する」とうたっている。この方向は、着実なものにしなければならない。
 ただ、「自由化」には、必然的に自己責任と自己規制が伴う。地方教委や学校には主体性と高いモラルが必要になる。
 その点、地方教育行政システムの改善をプログラムの一つに加えたことに着目したい。長い間の「中央統制」の枠組みの中で地方には、「上の指示待ち」の依存体質が強く残っている。文部省も含めた教育行政全体の見直しが避けて通れない。
 「学校の枠に閉じこもらない広い視野からの改革」の視点を鮮明にしたことも、大きな特色だろう。
 そのために、家庭や地域にとどまらず、企業をはじめ、ボランティアなどの市民セクターとの連携を求めている。
 「学校支援ボランティア活動の推進」とか、文部省・教育界と経済界との「定期的なフォーラム」の提唱などは、学校の内外で、教育機能を分担する時代に入ったことを意味する。ぜひ実現させたい。
 明治の学制公布、戦後の教育改革に次ぐ「第三の改革」は、四半世紀前の「四六中教審答申」も十年前の臨教審も、それを標榜(ひょうぼう)して今日に至っている。今度こそ社会全体で、本物にしなければなるまい。

 
 
 
 
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