1987/07/13 読売新聞朝刊
9月入学、移行準備を 国旗・国歌尊重も/臨教審の最終答申案の全容
臨時教育審議会(岡本道雄会長)が教育改革に関する三年間の審議を締めくくる最終答申案の全容が、十二日、明らかになった。過去三次にわたる答申を総括した中で、二十一世紀のための教育の目標として、(1)ひろい心、すこやかな体、ゆたかな創造力(2)自由・自律と公共の精神(3)国際社会で真に信頼される日本人−−の育成を提示。これに関連して、国旗・国歌のもつ意味を正しく理解し尊重する態度を養うことが重要だとしたうえで「学校教育上、適正な取り扱いがなされるべきだ」として、学校教育の中で日の丸、君が代を尊重するよう求めている。また、継続審議となっていた九月入学問題については、九月入学制の意義を認めて、「将来、秋季入学制に移行すべく、関連する諸条件の整備に努めるべきだ」として、政府に対し、九月入学制への移行準備を促している。「文教行政」の中では、教職員団体の学校運営などへの不当介入が文部行政を瑣末(さまつ)主義に陥らせたとして、名指しこそ回避したものの、日教組の責任を厳しく追及し、反省を求めている。(最終答申案の要旨2面に)
最終答申案は、序文のほか「教育改革の必要性」「教育改革の視点」「改革のための具体的方策」「残された課題に関する提言」「教育改革の推進」の五章構成。このうち三章までは、過去三次にわたる答申の総括となっている。
まず、「教育改革の必要性」では、臨教審の教育改革が、社会の成熟化、科学技術、国際化の進展など社会変化への対応を出発点としていたことを強調するとともに、明治以来の近代教育の歴史的な評価と教育の現状を整理。その上で、二十一世紀に向けた教育の三大目標を提示している。
この中で、塩川正十郎文相から検討依頼のあった国旗、国歌の問題をとりあげ、「日本国民としての自覚をはぐくみ、国際社会で信頼される日本人を育成するには、国旗・国歌を尊重する心情と態度を養うことが重要だ」との認識を示し、臨教審発足以来、初めて学校教育における国旗・国歌の取り扱いについて言及、「適正な取り扱いがなされるべきだ」と強調している。
最終答申の最大の焦点である九月入学問題は、「残された課題に対する提言」でとりあげられ、入学時期委員会(中山素平委員長)の原案をほぼ踏襲し、九月入学制への移行を明確に打ち出している。移行の実施時期については、やはり原案通り、「将来」とだけで明示していない。自民党が主張していた「九月入学制の大学先行」については、原案は「とるべきでない」と完全に否定していたが、「慎重な検討が必要である」との表現で含みを残した。
このほか「文教行政」では、文部省に政策官庁としての機能を強化するため、組織体制の整備を迫ると同時に、臨教審が打ち出した「生涯学習体系への移行」を行政面から推進するため、生涯学習を担当する局の新設と法的な整備を提言している。
さらに、文教行政に関連して教職員の組合活動にも触れ、「勤務条件の改善を図ることを目的とする教職員団体は、教育の中立性を守り、教育内容・教材の取り扱い、学校運営への不当な介入や違法な争議行為を厳に慎むべきだ」と厳しく指摘し、「職責の遂行に努め、国民の負託にこたえるべきだ」として教師としての自覚を喚起するよう求めている。
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