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2002/11/20 毎日新聞朝刊
[新教育の森]基本法見直し 「日本人」をつくる/下 教師や親、関心薄く
 
◇「生煮え」報告に不満も
 「あなたは、教育基本法の内容をご存じですか」
 今年5〜7月、日本PTA全国協議会(日P)は、各小中学校でPTA役員を務める会員らにアンケートした。約4800人から寄せられた回答は、予想通りの結果だった。「本文を見たことがなく内容もよく知らない」43%、「見聞きしたことはあるが内容はよく知らない」41%。PTA活動に比較的熱心な親でも、8割以上が関心を持っていないという数字である。
 中教審の中間報告は、基本法改正の目的として「新時代を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げる。しかし、赤田英博会長は「保護者が改正を望んだわけではない。今なぜ、誰のために変えるのかが、よく分からない」と首をひねる。
 中教審委員には日Pの元会長もいるが、「個人」の資格で参加しており、連絡も取り合っていない。
 「私どもの代表は参加しておらず、一般会員の率直な意見とデータをお話しする機会がありません」
 赤田会長は9月末、アンケート結果に手紙を添え、中教審の鳥居泰彦会長あてに郵送した。
 返事はなかった。
 
 日教組は5月、基本法見直しに反対する集会を始めた。全国5万カ所で「基本法の理念を生かし、子供のための教育改革を」と保護者らに訴えるという。
 しかし、参加者は組合活動に熱心な一部の教師に偏り、熱気も感じられない。
 「改悪反対というが、誰にとってどこが改悪なのか、話を聞いてもさっぱり分からない」
 6日、東京都八王子市で開かれた同市教職員組合主催の反対集会。参加した市民から声が上がった。
 主催者は「愛国心の強制は戦争ができる国家を目指すもので、教員への管理強化も懸念される」と説明したが、質問者は「教員の立場からの議論。見直しが子供にとってどんな問題があるのか」と納得しない。
 司会者は「時間の制約」を理由に強引に質問を打ち切った。参加者は約80人。会場の会議室の後ろ半分は大半が空席だった。
 「教師も保護者も、毎日の授業や指導、生活に追われ、基本法まで気が回らないのではないか。国民が反対しないという選択をするなら、やむを得ない」
 日教組の中村譲書記長は“あきらめ”を口にした。
 
 「中間報告は半分近くが審議未了だ。これで国民に意見を求めるのは、生煮えの料理に調味料も振らず、『味はいかが』と聞くようなもの。聞かれたほうも返事に困る」
 14日に都内で開かれた中教審総会の冒頭、基本問題部会の委員を務める市川昭午・国立学校財務センター名誉教授がまくし立てた。すでに報告案は固まり、この日に遠山敦子文部科学相に手渡す間際の「反撃」だった。
 しかし、鳥居会長が「国民との意見交換を通じて理解を深める努力をする」と引き取り、報告は30分後、予定通り手渡された。
 基本法の論議は昨年11月に始まったが、市川氏は「夏までは委員が意見を言い合うだけの放談会。諮問された時から見直しは決まっていた」と反対論が顧みられなかったことに憤る。
 
 中教審は今月末から公聴会を開き、国民の意見を求めたうえで最終答申をまとめる。しかし、委員の任期切れが来年1月30日に迫っている。
 「それまでに答申がまとまるのか」という質問に、鳥居会長は「不可能」と断言した。
 
 この連載は澤圭一郎、横井信洋(以上東京社会部)、佐柳理奈(東京地方部)、長谷川容子(福岡総局)が担当しました。


 
 
 
 
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