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1997/12/16 毎日新聞朝刊
[社説]変わる高校 魅力ある学びの場作りを
 
 脱偏差値の教育、特色ある学校を目指す総合学科、単位制などの新しいタイプの高校が、着実な歩みを見せている。
 普通科、商業・工業などの専門学科と並ぶ第3の学科として、3年前にスタートした総合学科の高校は、今年度は40都道府県、74校に設置された。来年度は、新たに茨城、長崎など5県が総合学科を開校予定で、計105校となる。長野、愛知を除く全県で出そろう。一方、単位制高校は、今年度ですでに鹿児島をのぞく全都道府県に設置され、計172校に及んでいる。
 文部省は8月に改定した教育改革プログラムで、「総合学科は通学範囲内に少なくとも1校」との目標(全国で約500校)を提示した。
 総合学科や単位制高校の眼目は、高校がほとんど義務教育に近い状況になっていることを前提に、多様な生徒の個性を最大限生かせるようにたくさんの選択科目を用意して、生徒が主体的に学べる環境を整えることにある。
 東京都初の総合学科として昨春開校した都立晴海総合高校は、2年次から情報システム、社会・経済、自然科学、芸術・文化など六つの系列を設定。系列ごとに選択科目群があり、そのほかに自由選択科目群として、138科目用意されている。生徒は、自分の進路に応じて科目を選択し、自分で時間割を作る。100人いれば100通りの時間割ができるシステムだ。必然的に授業は少人数制となる。
 単位制高校の特徴は、学年制がなく、3年間にあらかじめ定められた単位数を取れば卒業できることである。東京都立新宿山吹高校は、定時制課程と通信制課程を併設。授業は、午前、午前・午後、午後、夜間の4部制で、生徒は自分の好み、都合に合わせて選択できる。年齢にこだわらず、高校中退者や不登校の子供も積極的に受け入れている。
 当初は、生徒たちにそっぽを向かれるのでは、との懸念もあったが、ともに人気は高く、今春の志願倍率は都立ではトップクラスになった。 今、高校を取り巻く教育環境は厳しい。偏差値による学校の序列が固定化。学校生活に適応できない生徒も多く、中退率の上昇、卒業率の低下が問題になっている。
 それだけに、従来のイメージとは相当違ったものを打ち出した高校が予想を超える人気を集めていることは、注目に値する。生徒にとって魅力的な学校にするための努力の余地は、まだあるということだ。
 無論、課題もある。激しい受験競争体制が基本的に続いている中で、その理念を、現実のものにするのは、簡単ではない。競争率アップは、高偏差値の生徒が多くなる結果を招き、新宿山吹高校に的を絞った予備校まで誕生しているという。また総合学科、単位制高校は、通常の高校よりは、手間も金もかかる。
 しかし、新タイプの高校は、これからの高校教育を支えていくシステムだ。課題に取り組みつつ、一層拡大、充実するよう求めたい。
 節約して、複数の学校間で連携して取り組む道もある。4年前に始まった異なる学校での履修を単位として認める学校間連携は、29都府県122校で行われており、素地はある。学校の壁を超えた授業は、序列を揺さぶる効果も期待できる。ぜひ、検討してほしい。


 
 
 
 
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