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2003/10/17 産経新聞東京朝刊
【社説検証】(下)憲法改正 毎日新聞
 
■古い対立の枠超えた集約を
 私たちは、今の憲法を根本から否定して、全面的に直すべきだとする反憲法的態度には反対する。この意味では護憲の立場だ。
 しかし、将来を見据えた議論を十分重ねた結果、どう見ても使い勝手がよくない、不都合が生じるような個所が出てくれば一つ一つ直すべきだと考える。これには多くの国民が納得することが大前提である。この意味では改正を全否定しない論憲の立場である。(昨年11月2日)
 
■傍観癖から脱却したい
 日本国憲法が今の平和日本を守り現状継続に役立ってはいるが、世界の問題解決にとっての有効性は必ずしも高くないのではないかという疑問が誰しもの心に残るからだ。
 武力行使がからむ場面では常に傍観者的なのだ。この行動はひとえに60年近く守り抜いている日本国憲法に依拠する。それゆえに戦闘への参加は議論もなく免れた。幸いなことだが、ずっとこのままがいいのだろうか。
 時にはあたかも憲法を守る方が国民を守るより重要なようにみえることさえある。
 日本自身が世界の傍観者である状態に自然と慣れていくうちに、傍観的態度が習慣化しているのではないかという問題だ。
 もしこの傍観の姿勢の遠因の一つが憲法にあるとしたら、ここは真剣に議論しなければなるまい。(5月3日)
 
■首相は軽く扱っていないか
 ただ改憲をいうだけでなく、改正案をまとめ、改めるべき内容を具体的に国民に示すのは政党としてあるべき姿だ。
 だが、首相は指示にあたり基本的方向さえ明らかにしていない。今回の総裁選で自身の公約や、次の衆院選で自民党の公約にする考えもないようだ。
 改憲案づくりの指示が、総裁選の党員票、さらに国会議員票獲得を狙ったものとの見方が自民党内外にある。もしそうだとすれば、改憲という重い課題を軽く扱っているとしか思えない。無責任な態度さえ感じられる。
 世論は改憲論が強いといっても、政治に変わってほしいという政治変革期待の表れの要素が強い。経済打開が最大課題の時に、国論を二分するような論議に首をかしげる人々も多いことを、首相は直視しなくてはいけない。(8月27日)


 
 
 
 
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