戦後五十年の節目を迎え、産経新聞社は憲法論議の動向をさぐるため、全国の成人男女二千人を対象に「憲法問題に関する世論調査」を実施した。その結果、七二・〇%が「時代の変化に応じて見直してもかまわない」と憲法改正に前向きな考えを示した。見直しを必要とする理由としては(1)国家的危機への対応が不十分(2)自衛隊を合憲と明文化すべき(3)国際貢献の推進に障害−など、最近の内外情勢を反映した意見が大勢を占めた。憲法問題に関心を持つ人は七割強、政府に「憲法臨調」を設置して論議すべきだとする人も六割を超え、憲法見直し問題が国民のなかに広く浸透している実態が明らかになった。(2面に特集)
調査結果によると、憲法をめぐる論議について、「大いに関心を持っている」(二五・〇%)「多少は関心がある」(四六・九%)を合わせた“関心組”が七割を超えたのに対し、“無関心組”は「あまり関心はない」(二〇・〇%)「まったく関心はない」(六・九%)を合計しても三割に満たなかった。
見直すべきだとする理由(複数回答)として最も多かったのは「国家の危機に対応する仕組みが十分に整備されていない」の五七・八%。阪神大震災、一連の「サリン・オウム事件」など非常事態への政府対応を踏まえた反応とみられる。以下、「自衛隊合憲の明文化」(五〇・四%)「国際貢献を行ううえで制約が多い」(四九・八%)と続き、国際社会での日本の責任に配慮した考え方が目立った。
一方で、「アメリカから押し付けられた憲法だから」は三一・〇%で、かつて改憲論の主流だった「押し付け憲法論」「自主憲法制定論」の位置付けが微妙に変化している傾向がみられた。「国民の権利ばかりが強調され、義務がおろそかにされている」は三四・五%だった。
これに対し、見直しに慎重な人の理由としては、「平和憲法として国民の間に定着しているから」が七三・八%でトップ。「解釈や法律の運用で十分に対応できる」(四一・六%)「国論を二分して争うことは意味がない」(三二・七%)などが続いた。
憲法見直しをめぐるいくつかの論点について聞いたうち、自衛隊の存在を憲法に明文化すべきだと考える人は六八・〇%に達し、「そうは思わない」(一九・三%)を大きく上回った。日本の国際貢献を制約しているとして議論を呼んでいる集団的自衛権についても、これを保有していることを認め明記すべきだとする人が五二・一%で、反対論の倍以上だった。
阪神大震災を契機に首相の危機管理能力が問われているが、こうした危機に際し首相に強い権限を与えるべきだとする考えには八三・七%が理解を示した。日の丸、君が代を国旗、国歌として明記することには六〇・八%が賛成、環境権の設定など時代の変化に応じた権利を盛り込むことにも八二・一%が賛意を示した。
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