2001/04/06 読売新聞朝刊
[社説]読売新聞社世論調査 憲法改正へ深まる国民の意識
憲法問題に関する読売新聞社の世論調査の結果を見ると、憲法問題への国民の意識が深まり改正が必要と考える分野も拡大していることがうかがえる。
憲法改正に賛成の人は54%で昨年より6ポイント減ったものの、四年連続で過半数を超えた。改正反対は、昨年より2ポイント増の28%でほぼ横ばいだった。
憲法で関心のある点は、従来、「戦争放棄・自衛隊の問題」が多く、今回も34%だった。昨年30%だった「環境問題」が今回、トップで、45%にも達した。「生存権、社会福祉の問題」も昨年の18%から、28%に跳ね上がった。
冷戦終結後、九一年の湾岸戦争を機に現行憲法では国際貢献などに対応できない、という認識は広く定着している。九三年以降、改正賛成は常に反対を大きく上回り、九条問題を中心に憲法改正をタブー視する考えは、既に過去のものになっている。
有事法制の整備には、49%が賛成し、反対20%を大きく上回った。国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣を「問題ない」とする人は69%で、前回聞いた九四年調査より23ポイントも増えている。
冷戦後も、アジア太平洋地域は、依然紛争の火種を多く抱え、中国の動向や朝鮮半島情勢の行方も不透明だ。不安定な地域情勢が、安全保障と自衛隊の役割への国民の関心を高めている。
環境や生存権・社会福祉の問題への関心の高まりからは、経済発展に伴う環境の変化、長期の不況、財政危機、少子高齢化などに直面して、国民の将来不安が広がっていることが読み取れる。
こうした変化が安保・自衛隊問題に加え、幅広い分野で国民の憲法意識を大きく変えている。
部分改正にとどまらず、現行憲法の基本理念を継承しつつ、新しい憲法を制定する必要性すら感じさせる変化だ。
今回の調査では、「首相公選」制度の導入を「望ましい」とする人が63%で、九三年の前回調査53%を上回った。
リーダーシップを欠いた森首相への不満や、混迷する政党政治への不信が背景にあるのだろう。
だが、安易な首相公選導入は、政治的能力がないまま、人気取りのパフォーマンスで知事に当選し、結局は破たんした「青島、ノック現象」を、国のレベルで生むおそれがある。
気がかりなのは、国会に昨年設置された憲法調査会に「関心がある」とする人が45%から32%へ低下している点だ。
テーマや方法などを工夫し、国民の憲法意識の高まりにこたえる論議を展開してもらいたい。
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