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1997/03/21 読売新聞朝刊
国会議員・憲法アンケート 「9条タブー視」薄れる 若い世代ほど改憲志向
 
◆現実との落差、9割認識
 読売新聞社が実施した国会議員アンケートの結果から、憲法について、かつての硬直した発想ではなく、二十一世紀に向けて、柔軟な視点でそのあり方を見つめ直そうとする姿勢が多くの議員の間で強まっていることが浮かび上がった。とくに、憲法改正を求める声が回答した議員の六割を占め、若い世代ほど改憲志向が強いことが明らかになったことや、九割が憲法と社会の実態とのかい離を感じていることが明確となったのが特徴的だ。こうした結果は、自民党内に出ている憲法調査会の国会への設置構想をはじめ、国会、政党、有識者など国民の間の幅広い憲法論議に弾みをつけそうだ。(政治部 玉井 忠幸、本文記事1面)
 国会議員を対象とした憲法問題に関する意識調査に関しては、かつては有権者の反応などを考慮して実名では答えない議員が圧倒的に多かった。今回は六割の議員が実名公表を前提に回答しており、その点だけを見ても議員の意識の変化がうかがわれる。
 憲法観の柔軟化を最も顕著に示しているのは、憲法論議の焦点とされてきた九条の解釈と運用について、回答者の四割が「解釈で対応するのは限界なので、憲法を改正する」との意向を表明したことだ。
 かつて東西冷戦時代には、憲法九条と自衛隊の存在をめぐる解釈が五五年体制下の保守、革新陣営の対立軸となり、九条問題に絡む憲法論議自体がタブー視される傾向が強かった。歴代内閣のほとんどが、憲法改正問題を政治日程にのせなかったのもそのためだ。
 しかし、湾岸戦争を契機として「カネ」以外の分野での国際貢献の必要性に対する国民の意識が高まり、国連平和維持活動(PKO)への参加などで、自衛隊の役割も幅が広くなった。これを受け、国会議員の間でも、政治的な立場の違いを超えて九条の意義を問い直そうとの空気が一般化してきた。こうした変化が今回の調査の結果、初めて数字として表れた。
 九条をタブー視しない傾向は、特に戦後生まれの若い世代に明確に表れている。九条問題の解決策として憲法改正を選択する意見は、六十代、五十代ではなお三分の一にとどまっているが、三十代以下、四十代では約半数に達している。
 さらに、総論としての憲法改正に賛意を示す議員のうち、その理由を「環境権や人格権など新しい規定を明記した方がよいから」に求める意見が若い世代に多いのも特徴だ。かつての保革両勢力による改憲・護憲論争の残滓(ざんし)を引きずることなく、新しい視点から冷静に憲法の是非を点検しようという姿勢が読み取れる。
 改憲志向の自民、新進、太陽、護憲志向が強い民主、社民、改憲絶対反対の共産と、各党の憲法観の違いはなお大きい。しかし、護憲志向の強い民主や、かつては憲法改正反対で一枚岩を誇った旧公明党系議員の間にも、憲法への「新たな規定の明記」を求める意見がかなり見られるなど、旧来パターンの固定観念にとらわれないで憲法を見つめなおそうという空気が広がっている。
 安易な予測は慎まなければならないが、憲法改正志向派が特に若い世代で高い比率を占めているように、憲法問題に対する柔軟な姿勢が広がっていけば、憲法改正の発議が可能となる「総議員の三分の二以上の賛成」(憲法九六条)が得られる情勢が、遠くない将来に現実になる可能性も否定できない。国会が憲法論議に一層、真剣に取り組む時期がきたようだ。
 
《憲法改正問題に関する主要政党別の調査結果》(数字は%)
 
  憲法改正の是非 9条への対応 自衛隊は合憲か
自民 76 改正 56 合憲 81
19 違憲 9
新進 78 改正 51 合憲 88
16 違憲 7
民主 26 改正 9 合憲 47
72 違憲 17
共産 0 改正 0 合憲 0
100 違憲 100
社民 6 改正 0 合憲 6
94 違憲 56
太陽 82 改正 46 合憲 73
0 違憲 18
さきがけ 60 改正 0 合憲 60
20 違憲 0
公明 44 改正 22 合憲 89
56 違憲 0
(注)各欄の合計が100にならないのは「その他」「無回答」などを省略したため


 
 
 
 
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