1997/03/21 読売新聞朝刊
憲法改正、60%が賛成 国会議員の読売新聞社アンケートに465人が回答
◆9条「解釈限界」41% 国際貢献対応できず
読売新聞社は五月三日の憲法施行五十周年を前に、憲法に関するアンケート調査を衆参両院の全国会議員を対象に実施した。それによると、回答した国会議員の六割が憲法改正に賛成し、賛成の理由としては、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」という回答が最も多かった。とくに改正論議の焦点である憲法九条については、四割を超える議員が「解釈で対応するのは限界なので、憲法を改正する」と答えた。憲法と社会の実態に矛盾を感じるかどうかについても、九割が「矛盾を感じることがある」と答え、具体的には、自衛隊のほか、地方自治、環境、情報公開など幅広い分野の問題を挙げた。調査結果は、国際情勢や、政治・経済・社会の大きな変化に伴う国会議員の憲法意識の変化を示しており、今後の憲法論議にも大きな影響を与えそうだ。
(国会議員の回答一覧と解説8―14面、関連記事2・3面、地域版)
憲法が戦後の日本で果たしてきた役割については、98%が評価している。しかし、今日の時点で、憲法について活発に論議することには、97%が「望ましい」と答え、その理由として、「憲法論議をタブー視すべきではない」と「国内外の情勢の変化に応じた見直しが必要」がいずれも34%で最も多かった。
憲法改正の是非については、賛成60%が、反対35%を大きく上回り、とくに自民、新進両党では八割近くに上った。改正賛成の割合は、読売新聞社が実施した昨年三月の全国世論調査の47%、昨年八月の有識者に対する調査での一般有識者の57%に比べ、国会議員が最も多かった。
世代別にみると、改正賛成は五十歳代以上では五―六割だが、四十歳代以下では約七割に上り、若い世代ほど改正論が強い。
政党別で改正賛成が多いのは、太陽党82%、新進党78%、自民党76%、新党さきがけ60%の順。逆に反対は共産党100%、社民党94%、民主党72%が多かった。
改正に賛成の主な理由は、〈1〉国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じている72%〈2〉憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱する62%〈3〉国の自衛権を明記したり、自衛隊の存在を明文化するため52%――などだった。
憲法と国際情勢や社会の実態との間で矛盾がないかどうかについては、全体の89%が「感じることがある」と答えた。具体的には、「自衛隊の問題」79%が群を抜き、「環境問題」36%、「地方自治の問題」35%、「信教の自由、政教分離」31%、「情報公開」29%など多様な分野にわたっている。
憲法九条については、「解釈で対応するのは限界なので、憲法を改正する」41%が、「今の解釈が妥当で、これ以上拡大解釈しない」15%、「情勢の変化に応じて解釈と運用で対応」14%などを大きく上回った。
一方、自衛隊は合憲か違憲かについては、合憲68%、違憲21%で、とくに自民、新進両党は「合憲」が八割を超え、民主党は合憲47%、違憲17%だった。自民党で9%、新進党で7%が違憲と答えたが、これは自衛隊の存在が合憲であることを明確にするよう求める立場からと見られる。
〈回答者数〉
憲法アンケート調査には全国会議員七百五十二人中、四百六十五人が回答した。政党別回答者数は自民百七十一、新進百四十四、民主四十七、共産三十九、社民十六、太陽十一、公明九、さきがけ五、自由の会四、新社会三、民改連四、二院クラブ一、無所属十一。
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