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2002/09/29 毎日新聞朝刊
毎日新聞世論調査(その2止) ソフトな改憲志向 首相公選制など関心
 
 憲法に関する毎日新聞の世論調査は、過半数に迫った憲法改正派の主な関心が、「9条問題」以上に「首相公選制」や「国民投票制度」などの実現にあることを示した。過去2回の調査でも同様の傾向が見られ、政治への参加意識の高まりに伴う「ソフトな改憲」志向が国民に定着した結果とみることができる。
 毎日新聞は93年から96年までと、00年以降の毎年9月に同じ面接方式で憲法の世論調査を実施している。村山内閣当時の94年12月に行った調査では、憲法を「改める方がよい」が28%、「改めない方がよい」が27%とほぼきっ抗したが、00年以降3回の調査では、改憲派と護憲派の回答比率がほぼ「3対1」になっている。
 今回の調査で改憲志向の人が挙げた改正ポイント(3項目)は、「首相公選制」46%▽「分かりやすい日本語に」40%▽「『知る権利』の明示」37%などが上位を占めた。逆に「自衛隊の位置付けを明確にする」は過去3回の調査で最低の32%にとどまり、憲法9条の改正を最大の眼目にしてきた保守勢力とは力点を異にしている。
 年代別に改正点をみると、「国民投票」や「『知る権利』の明示」を選ぶ割合は40代以下の層で高かった。逆に50代以上の層では、「自衛隊の位置付け」や「集団的自衛権」について平均以上の回答率になった。【鈴木直】
 
◇若い層が押し上げ−−渡辺治一橋大社会学部教授(政治学)の話
 90年代以降の改憲論は、「時代に合わなくなった」という議論になってきている。改憲支持の増大は、現在の政治システムを改めたいという若い層の思いが押し上げていると考えられ、9条改正への賛成が増えたということにはならない。
 
◇質問と回答◇
 
◆憲法を改める方がよいと思いますか、改めない方がよいと思いますか。
 
  全体 前回 男性 女性
改める方がよい 47 (43) 52 42
改めない方がよい 14 (14) 18 10
分からない 37 (40) 27 45
 
◆<「改める方がよい」と答えた方だけに>いまの憲法の中で、改めるべき点があるとすれば、あなたはどういうふうにすべきだと思いますか。(三つまでの複数回答)
 
  全体 前回 男性 女性
憲法の文章が翻訳調なので、分かりやすい日本語にする 40 (44) 38 42
自衛隊の位置付けを明確にする 32 (35) 39 23
集団的自衛権を行使できるようにする 13 (13) 19 5
象徴天皇制を見直す 10 (10) 10 10
国会の2院制を廃止して1院制とする 23 (25) 24 20
重要な政策課題は、国民投票で決める仕組みを作る 37 (38) 33 42
首相を国民の直接投票で選べるようにする 46 (45) 45 48
地方分権を現在より拡大する 13 (11) 17 8
環境権を明示する 8 (6) 6 9
国民の「知る権利」を明示する 37 (36) 31 44
その他 2 (5) 2 2
 
◆どの政党を支持していますか。
 
  全体 前回 男性 女性
自民党 25 (33) 26 23
民主党 5 (8) 7 4
公明党 3 (4) 3 4
自由党 2 (3) 2 1
共産党 3 (2) 3 3
社民党 3 (3) 3 2
無所属の会 1 (0) 1 1
保守党 0 (0) 0 0
その他の政党 0 (1) 1 0
支持政党はない 56 (44) 53 59
 
◇調査の方法と表記
 住民基本台帳をもとに、全国300地点から20歳以上(02年9月30日現在)の男女4554人を層化2段無作為抽出法で選び出し、9月6〜8日の3日間、面接調査法で実施した。回答者は2891人。回収率は63%。%数字は、小数第1位を四捨五入した。カッコ内の数字は、01年8月31日から9月2日まで実施した前回面接世論調査(回答者3057人、回収率67%)の結果。
 (この記事にはグラフ「本社世論調査での憲法意識の変化」があります)


 
 
 
 
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