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1947/05/04 毎日新聞朝刊
[社説]日章旗国民の手に
 
 新憲法は三日から実施され、大日本帝国は日本国となった。この民主日本の門出を祝福する催しが全国で行われたが、東京では宮城前広場で記念式典が挙げられ、人間天皇となられた陛下も臨場して国民と喜びをわかたれたのである。この新憲法発足の日を迎えるに当って、マッカーサー元帥は二日吉田首相に「●立憲政府の三主要部門を代表する国会、最高裁判所及び首相官邸の内と上空に、また国家と国民統合の象徴としての立憲的役割を果される天皇の居所構内及び屋上に、心おきなく掲げるために、日本国民に返還されることは、特に時宜にかなったものと信ずる」との祝辞を寄せた。この言葉にはまことに深い意義がある。
 ゆうまでもなく、国旗は国家の●、国体を表徴する。その制定の由来は国によって異なっているが、いずれの場合を問わず●・・・ており、それは国家の独立と主権の存在を意味するものである。米国国旗がこの連邦国家を形成する四十八州を星条をもって表しているこというまでもない。わが国の国旗は明治三年一月十七日制定され、太陽の徳とその恵みを理想的表号とし、赤い円は祖国愛、進取、円満を、白地は平和と正義を表徴するといわれて来たのである。
 しかし、かかる日本の理想と精神と生命を表徴する国旗が、その後いかに●れる指導者によって軍国主義、無謀な国家主義のシンボルであるかのように、国の内外にひるがえって、世界の平和を●り、国家と国民を奈落●して来たかは、ここに述べるまでもない。しかるに今や国民の自由な意思の表明によって、象徴的天皇制の下、個性の自由に徹する平和的民主憲法は制定され、主権を保有するに至った国民は、国家の名誉にかけ、全力を挙げて新憲法が明示する崇高な理想と目的に向って、実践への第一歩を踏み出したのである。ここに新憲法によって民主日本の世界に示す大道は開かれ、この時に当って、われわれ国民に返還された日章旗は、この日本国と日本国民の新たな理想と精神と生命を象徴するものである。仰ぐ日の丸の旗こそ変っていなくても、そこには民主主義、平和主義、文化主義●しようとするわれわれの理想、精神、生命がみなぎっているのである。われわれは心からなる喜びをもって、この国民への国旗の返還を喜び、同時にそれに恥じざる民主国家の完成を誓わねばならぬ。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
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