瀬戸内海海洋環境体験学習
8 セミナーを終えて
8.1 セミナーの内容
平成13年度から平成14年度にかけて合計10回行ったセミナーはどれも、机上の学習ではなく「体験すること」を中心としたものであり、学識者と専門家によって企画・立案されたプログラムに沿って、子どもたちに様々な角度から海の環境を直接肌で感じとってもらい、そして学ぶものでありました。
平成13年度から平成14年度に行ったセミナーの概要を以下に示します。
表8.1 瀬戸内海海洋環境体験学習セミナー概要一覧表
年度 |
回 |
開催日 |
開催
時間 |
場所 |
テーマ |
参加者数 |
平成13年度 |
第1回 |
平成14年
1月26日(土) |
9:30〜
12:30 |
兵庫県明石市
・兵庫県立水産試験場
・兵庫のり研究所
・のり流通センター |
海苔の秘密を知ろう!
−ノリの養殖について学び、海の環境を考える体験学習− |
40人 |
第2回 |
平成14年
2月9日(土) |
10:30〜
14:30 |
兵庫県赤穂市
・赤穂市立海洋博物館 |
塩づくりを楽しもう!
−塩田開発の歴史を学び、海の環境を考える体験学習− |
51人 |
第3回 |
平成14年
3月26日(火) |
10:30〜
15:30 |
広島県呉市
・安芸灘大橋
・三津口湾安浦干潟
・ |
独立行政法人 |
|
産業技術総合研究所
(瀬戸内海水理模型) |
|
瀬戸内海ってどんな海だろう!
−瀬戸内海について学び、海の環境を考える体験学習− |
43人 |
第4回 |
平成14年
3月30日(土) |
13:00〜
15:30 |
大阪市
・海遊館 |
水族館の秘密を知ろう!
−水族館の管理技術を学び、海の環境について考える体験学習− |
24人 |
平成14年度 |
第5回 |
平成14年
6月23日(日) |
9:00〜
16:20 |
淡路島
・洲本市由良海岸
|
淡路島で海の中の森(藻場)を見て、海藻のしおりを作ろう! |
30人 |
第6回 |
平成14年
8月8日(木) |
9:00〜
16:00 |
大阪湾沿岸域
・和歌山県住吉崎
・大阪府水産試験場
・泉佐野漁港
・大阪南港 |
大阪湾海辺の探検隊、君は大阪湾を知っているかい! |
37人 |
第7回 |
平成14年
8月19日(月) |
9:30〜
18:00 |
岡山県牛窓市
・牛窓沖合(船上)
・黒島
・岡山県水産試験場 |
牛窓のアマモ場を眺め、離れ島で潮干狩りを楽しもう! |
38人 |
第8回 |
平成14年
8月24日(土) |
9:00〜
16:00 |
大阪湾周辺
・大阪湾沖合(船上)
・大阪南港野鳥園 |
干潟ってどんなところ? いろんな生物の集まる浅場の秘密を知ろう! |
24人 |
第9回 |
平成14年
10月12日(土) |
9:00〜
18:00 |
岡山県笠岡市
・笠岡市立カブトガニ博物館
・海水浄化船 |
生きた化石カブトガニの観察と、海水浄化船の見学! |
44人 |
第10回 |
平成14年
12月21日(土) |
9:30〜
15:00 |
神戸市
・神戸市立須磨海浜水族園 |
「水族館の秘密を知ろう!II
−水族館の管理技術を学び、海の環境について考える体験学習−」 |
36人 |
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図8.1 瀬戸内海海洋環境体験学習 開催位置図
8.2 募集方法
応募方法については、以下の方法により行った。
1. インターネットによる公募
2. 開催地近くの小中学校への呼びかけ
3. 開催地近くの子供エコクラブヘの呼びかけ
4. 地元新聞等への記事掲載
5. 一度参加した人にはダイレクトで案内を送付
8.3 セミナーを行う上での注意点
瀬戸内海海洋環境体験学習セミナーを行っていくことで感じた、屋外体験型の環境学習を行ううえでの注意点としては以下のようなものがあげられる。
・海洋環境に触れることは、同時に危険を伴うことにもなるため、安全管理には細心の注意をはらう必要がある。
・多人数の参加者の安全を確保するためには、協力者(スタッフ)を十分確保しておくことが必要である。
・自然海岸のような場所でも、実際には事前の申請等が必要な場合もあるので注意する。
・多人数で移動しながら学習する場合には、バスの停車場所等の確認など、事前に下見して置くことでスムーズに運営することができる。
・屋外での学習がほとんどであり、天候によってはプログラムを変更せざるを得ない場合もあるので、状況により事前に変更プログラムを想定しておくことが理想的である。
・子どもの理解力、洞察力にあわせた説明や喋り方が重要であるが、慣れていない人の場合は困難なことがある。
・場所によっては移動に長時間を必要とする場合もあり、バスの中などで行うクイズ大会などの準備をしておくことが理想的である。
・バスや船などに長時間乗る場合は、酔い止め薬などを用意しておく。
・船上での学習などの場合に、船上では自由な移動が制限されるので、説明や実演などを全員が見られるように配慮する必要がある。
・参加者をできるだけ退屈させないように時間配分することが必要である。
・参加者同士、また主催者と参加者との意見交換の場を多く持つことが理想的である。
8.4 おわりに
これまでに行ったセミナーを振り返ると、どれも身近なテーマで行われており参加者にとっては、子どもから大人までの幅広い年齢層にとっても十分に楽しめるものであったと感じる。参加して下さった方の中には親子揃って参加していただいている方も多く、最初のうちは保護者としての立場で参加されていた親御様もセミナーが進むにつれて、子供と一緒に楽しみながら学習している姿が多くみられた。体験型の環境学習では、もともと危険が存在するだけに、保護者までもが安心して夢中になれる環境をつくってあげられたことが大きな要因の一つではないかと考える。
このことは現在、教育現場で取り入れられている“総合的な学習の時間”のモデルとして以上に、地域や市民団体による環境教育活動にも十分活用できると共に、家庭環境における親子のコミュニケーションを増進させるといった効果も十分あると考える。
各参加者からのアンケート結果では「海についてもっと知りたい」、「これからも環境のことについて学んでいきたい」など海についての興味を示しているものから、「一度汚してしまった海を元に戻すのはとても大変だとわかった」、「海を別の角度から見ることができた」などの気づきや視野の広がりを示しているものも多く見られた。
また、「もっと多くの人にこの企画を知らせて欲しい」などの企画する側にとって大変励みになる意見も見られた。
都市に住む私たちにとって、海が普段関わることのない遠い存在である限り、海洋環境の悪化を実感することは難しい。このような「体験すること」を中心とした環境学習が社会に浸透することにより、より多くの市民が海の環境の現状、海の大切さに気づき、海の環境問題に対する認識を新たにすることが出来ると考える。
さらにその認識が社会に浸透することにより、将来的には海の環境問題の解決、環境の保全に繋がっていくことを期待する。
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