日本財団 図書館


プログラム第1日目
10月10日(木)
会場:国立京都国際会館 2階 ルームA
分科会6 時間15:00〜17:30
英語プログラム(同時通訳あり)
 
テーマ:
家族が元気になろう 〜家族のエンパワーメント〜
趣旨:
患者さんと共に暮らす家族にとって「元気」をもらえるのは家族会からではないでしょうか。その家族会に元気(活力)がなければ、自分たち家族の思い(願い)を達成することは不可能です。
新しい世紀に向けて、家族会活動のあり方について考えてみましょう。(親自身の生活を豊かにするために)
 
報告者
  
北村よしゑ
  
(京都府精神障害者家族会連合会 副会長)
 
 
 
 
「家族が元気になるには」
報告者
 
リリアン・カナイヤ
 
(ケニヤ統合失調症協会 ケニヤ)
報告者
 
タチアナ・ソロキナ
 
(ニューホープ ロシア)
報告者
 
ウーン・ダイ・ソン
 
(韓国家族協会 韓国)
指定討論者
 
広田 和子
 
(精神医療サバイバー&保健福祉コンシューマー、厚生労働省社会保障審議会障害者部会臨時委員 神奈川県)
座長
 
前田 ケイ
 
(ルーテル学院大学大学院 教授 東京都)
 
分科会6 家族が元気になろう〜家族のエンパワーメント〜
「家族が元気になるには」
北村 よしゑ(京都府精神障害者家族会連合会 副会長)
 
家族のエンパワーメント
 平和と千年の歴史と文化の伝統を誇る古都、京都は、また市民意識の強い都市でもあります。その京都で全国の心を病む入々とその家族が世界の同じ思いの家族の皆様とご一緒に各国の精神医療と福祉の現状を議論することが出来ますことは何よりの光栄と存じます。
 京都には35年前、全国の家族の結集を決意された先人の足跡があり、また京家連の発展に力をそそぎ、この大会に熱い思いを抱いておられた井上前会長の不慮の事故死という悲しい試練を乗り越えて本日の大会を迎え、先ず改めて家族会の大切な柱を失っていかに家族会が大切であるかという事を身をもって学んだ次第です。
(1)家族会は何故必要か
 家族は子供の発病によって大きな心理的ショックを受け、まず自分たちの入生の設計まで変えなければならなくなります。差別と偏見の強い日本の社会においては近所や親戚にも隠し、生み育てた母親にきびしい非難の言葉が集中します。その為にいかに多くの家族が崩壊していったか、それだけは兄の為にしてはならないと保健所に勤めていた娘が言いました。どんなに辛い事を言われてもお兄ちゃんの為に頑張ってやと私を励ましてくれました。いちばん辛い思いをしているのは本人です。暖かい家庭に迎えてやりましょう。
(2)家族会人会のメリット
 家族会に入会して来られる家族は、子供の入院時のショックからなかなか立ち上がれない深い悲しみで心の中に涙を一杯ためて来られます。これは、経験した者にしかそのショックの辛さはなかなか解っていただけません。一升ビン十本分位泣きましたと言われる父、枕が涙で濡れて十日も眠れませんでしたとおっしゃる母、そんな人々の集まりです。
 家族会員は何も言えません。お話を聞いて一緒に涙をぽろぽろこぼすだけです。しかし、それだけでいいのです。それ以上の事、人間として出来ないのです。ただ聞いてあげる事が何よりの仕事です。そのうち、子供さんが少しづつよくなってこられれば、落ち着いてほほえみを浮かべられます。悲しみ、苦しみの共有が家族会の原点です。精神の病気は、一人一人特徴があって極めて個性的です。それは当たり前の事でしょう。胃や腸の病でも一人一人違うと思います。それぞれの家庭の事情も違います。だから、余り自分の体験とか子供の病状とか皆違いますので、お互いに相手の事情に深入りはしない方が仲良く続けて行けると思ってます。しかし、困った事は同じようなケースもあり、お互いに笑って慰め合います。家族会のメリットは、お互いの喜び悲しみの共有とひとときの安らぎの語り合いです。皆でお菓子を持ち寄り、楽しく笑って、一ヶ月の苦労を忘れ、ぜんかれん誌を学び、毎月の例会は18年間休んだことなく、いつのまにか続いていました。秋には一泊旅行、これが楽しみで「オリーブの会、絶対止めませんで」と言うお父さんもいらっしゃいます。息子は止めても私は止めませんと笑わせて下さいます。
(3)家族会の団結
 平成4年、京都市精神障害者家族会連絡協議会が結成されました。なんと長い名前かなと書く度に苦労します。あけぼの会、つくしの会、図南会、ボランティアハウスの会、オリーブの会、安井病院の家族会、6家族会で団結して協議会を作り、障害者団体として市から認めてもらい、市長さんに要望書を提出できるようになりました。そして、間もなく京都府の家族会にも入会し、京都府家族会連合会と京都市家族会連絡協議会と合同で、家族の連帯団結が固まって、いろいろお互いに意見を出し合い、患者さん本人と家族の福祉を京都府にも要望し、市は年に2回の家族相談、府は北から南までブロック毎に家族相談を行うようになり、京家連として市家連としてお互いに家族の幸せの為、行政に働きかけるようになりました。
 WFSAD世界連盟の家族の方が、日本の入院患者数が30万床と驚かれるのは当たり前です。どんな病気でも早期発見、早期治療ですね。子供さんが、一ヶ月家に閉じこもったりしたら、暖かい態度で「こころの健康増進センター」等に相談してみて下さい。早い方が軽くすぐ良くなられます。
 1990年頃から京都にもたくさんのドクターが街の中で開業されています。簡単な気持ちでちょっと相談してみる事も必要です。もし医院に行きにくい時は、いつでも言って下さい。作業所の嘱託医さんが気軽に相談にのって下さいます。20年前と違って、随分、精神病も増えました。ちっとも恥ずかしい事ではありません。また、21世紀に入って、いい新薬も研究発明されましたし、以前と違って、だんだん心の健康も社会的な問題となってきました。
(4)家族と医療について
 今度、WFSADでも提案されましたが、何故、日本では外国で広く使用されている非定型抗精神病薬が広く使われないのか?この問題は、私も非常に残念に思います。まず患者自身の病気に対する知識の不足、そしてまた患者とドクターとの対話の技術のまずさがあります。私たち家族もドクターに任せきりで、我が子の病気の状態への無関心さが挙げられます。我が子がどんな薬を飲んでいるのかも知らない家族がほとんどです。ドクターに自分の子供の病状や投薬について質問する家族は少数です。私は、家族会でこれがキーポイントだと家族に毎回勧めていますが。家族は、ドクターに聞く勇気がない、ドクターを恐れてばかりです。自分の子供が長い間、同じ薬を飲み続け、副作用も明らかに出ているのにドクターも家族も新薬に切り替えようとしない、英知がないのは大変残念です。日本でも優秀なドクターは、熱心に新薬と切り替え、患者と家族に連携を取って、画期的な回復治療に成功している例はあり、新薬の切り替えによって病状の改善がなされることは、患者さんの幸せになり本人の将来を明るくする事になります。21世紀は心の世紀になりましょう。
 日本もこれから大いに変わるでしょう。山の中の暗い病院なんか誰も入院しない時代が来ると信じます。家族会がその為に行政に要望して身体、知的の障害の方と平等に街の中で暮らせるように医療センターや生活支援センターも各行政区に作って下さるでしょう。京都市は、その為に各行政区に「心の健康を考えるネットワーク」というすばらしいアイデアを創り出し、啓発運動を熱心にやっておられます。地域の人々に熱心に呼びかけられるのは、その準備のためと思って心から感謝しています。各区に生活支援センターが出来れば、新薬で回復したメンバーさんが地域で迷惑なんかかけなくて一人で暮らしてゆけます。私のオリーブの会も年老いたお母さんが3人も亡くなりましたが、自分で一人暮らしでがんばる人、グループホームでがんばる人、皆元気にけなげに働いています。「親なき後、この子はどうなるのか?」と涙をはらはら流された泉下のお母さん達にメンバーの元気な姿を見せてあげたいと私は思います。案ずるよりは何とか作業所の職員の暖かい配慮でそれぞれ自分らしい生活をちゃんと過ごしておられます。
 地域の生活支援センターと作業所の存在は、大きなメンバーさんを支える柱として、私も頑張った甲斐があったと、自分も安心して死ねると心が安らかになってきます。これは皆子を想う母の心、家族会の団結の力なのです。21世紀は心豊かな平和な世界であるようにWFSADの皆さんと手をつないで福祉先進国の仲間入りをしましょう。私は施設もお金の問題ではない、やる気の心、家族の団結の心だと思っています。全家連をもっともっと応援して、21世紀の日本に悪徳な病院を全部なくしましょう。開業医さん、頑張ってショートステイで急性期の軽い人を2、3週間、預かって下さい。日本の30万床は3,000床位になりましょう。あの病院でゆっくり養生したいといえる病院にして下さい。「入院するくらいなら、死んだほうがましや」と若い心病む人達に呼ばれるような21世紀にしないで下さい。日本の精神科医のお医者さんに暖かい治療をお願いします。
 親なき後は、家族会でメンバーを暖かく見守って行きましょう。京都で出来ることは、全国にも通じるはずです。
 
海外から参加の報告者のプロフィール
タチアナ・ソロキナ(ニューホープ、ロシア)
 欧米諸国では患者・家族および専門家のための支援団体が多く活動してきました。しかし、ロシアでは90年代になってはじめて、統合失調症患者とその家族が抱える問題についての研究が始まり、心理学教育プログラムが実施されるようになりました。この発表では、ロシアでの家族が抱える問題等を報告します。
 
リリアン・カナイア(ケニア統合失調症協会、ケニア)
 ケニア統合失調症協会が設立されて5年が過ぎました。これまでの活動での成功例や失敗例を報告するとともに、ケニアにおける家族の状況や、今後の課題等を報告します。
 
世界精神障害者家族団体連盟について
WFSAD:World Fellowship for Schizophrenia and Allied Disorders
公式ホームページ:www.world-schizophrenia.org(英語のみ)
 
 WFSAD(世界精神障害者家族団体連盟)は、1982年に世界各国の家族会の代表が集まり、カナダにおいて設立されました。WSFADは、分裂病圏を中心とする精神疾患により苦しんでいる当事者とその家族に活動の焦点をあてた唯一の国際団体です。現在、常設事務局は、カナダのトロントに設置されています。
 
 WFSADの活動目的は、世界のあらゆる地域の人々への精神保健福祉に関する情報提供、教育・訓練の提供精神疾患に対する偏見・差別の解消、精神疾患への幅広い理解の普及、また、精神障害者家族会の設立されていない国々での家族会設立の支援等です。また、各国の加盟家族団体による国際的な連携による精神科医療と精神保健福祉の向上を目指しています。
 2001年5月にスイスのジュネーブで開催されたWHO(世界保健機関)総会では、WFSAD関係者が精神障害者への理解を家族の立場から訴える講演を行ないました。
 
 現在、WFSADは、50を越える家族団体により構成されており、加盟団体は、北米、南米、欧州、アフリカ、アジア等、世界中で活動を行なっています。日本では(財)全国精神障害者家族会連合会が1990年より加盟しています。
 
 WFSADでは、2年ごとに大会を開催しており、これまでアイルランド、オランダ、ドイツ、イスラエルで開催されました。今回の京都大会はアジア地域での初の開催となります。







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