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<第5分科会>
「障害者の安心・安定をどう確保するか」
―山間地における地域支援の取り組み―
 
発表者 瑞穂町小規模通所授産施設 はあもにぃはうす
所長 山本明子
 
I. はじめに
 全国で6,000ヶ所近くにも急増した作業所ですが、それはどうしても人口の多い都市部に集中しています。さらにその上、法定施設等の地域支援のための社会資源は、山間部には殆どないのが現状です。日中活動の出来る作業所でもあればまだいいほうで、作業所さえも作る事ができない地域は少なくありません。介護保険導入により、ある程度定着した老人福祉に比べ、障害者福祉の地域格差は大きすぎます。地域で暮らす障害者の基本的人権は、市部も山間部も同じはずです。
 はあもにぃはうすは、人口5,000人余りの山間僻地です。その小さな町のマイナーな人達の地域での暮らしを支えるため、作業所誕生から地域生活支援までの軌跡と、これからの展望や課題をまとめてみました。
 
II. 作業所誕生から限界、小規模通所へ移行
 
H9年6月
作業所開設
運営主体
運営委員会
9人
3人
設置主体
育成会家族会
H10年4月
10人
スタッフ 3+1人
H11年4月
13人
身障者協会加入
H12年4月
14人
メンバーが増え色々な問題が出る
特に作業するところだけでなく自立生活すべての必要性など作業所の限界が生じる
H12年6月
作業所今後のあり方検討会で問題提起
H12年6月
社会福祉法改正
H12年12月
作業所運営協議会にて法人化検討了承
H13年1月〜4月
検討委員8人で研修、協議、検討
H13年4月
17人
(検討委員会7回実施)
H13年6月
検討委員会の結果を町に報告
町、議会などを通じて既存の法人のもとでの法内化を決定
法人も受諾、定款変更する
H14年4月
社会福祉法人おおなん福祉会
小規模通所授産施設として認可される
19人
 
小規模通所授産の概略
 瑞穂町が設置しその管理運営を法人に委託する形式をとり町の設置管理条例に必要な事項が定められる。経費は管理運営委託料として町から支払われる。
  *利用者の人数 登録者26人
 
1日平均利用者18人(知的6人、身体5人、精神7人)
  *作業内容
 
手作りパン 廃油せっけん他
  *工賃支給額
 
年総額360万円 1人月平均15,000円
  *スタッフ
 
所長1 常勤2 非常勤2
  *H14予算 22,375千円
 
(国5,500 県2,750 町9,232 事業収入他4,893)
 
III. 通過点としての小規模通所授産
 平成14年4月から建物等は現行のままで、今までどおりの作業所の良さを生かしながらの移行です。表面的には今はそう大きな変化は見られませんが、この法内化は次なるステップアップのための大きなエネルギーを極めています。が解決すべき課題も多くあります。
(1). 効率的な経営のためには、近い将来20人以上の通所授産への移行は必然的です。人口5,000人では不可能だった20人以上の定員は合併によりクリアーが可能になります。1,100万円の倍以上の運営費は効率的な運営につながります。ただし、定員枠から外れる障害の違う人にどう対応するかは課題として残ります。
(2). 平成16年度から精神障害者の地域生活支援センターを設置して相談や支援事業に取り組む計画です。島根県のプランでは郡(7ヵ町村)に1ヵ所とされ、人口29,500人、総面積918km2の交通の不便な山間部でのセンターとして、どう機能していくかこれも大きな課題です。
(3). 生活の場の整備が急務です。現在すでに数人に、その必要性が生じています。ただしある程度の障害の枠を越えた利用が出来なければなりません。
(4). その他の問題として20人を越えると作業所の良さは失われ、良い援助は出来ないと思いますが、現実問題として3障害20人を越えており、余裕がなくなりがちです。さらに重身の受け入れも迫られ、小規模を2つ作るのか作業所を残すのか、合併を視野に入れた将来展望が必要となってきました。
 
IV. おわりに
 山間地に暮らす障害者も、生き生きと当たり前に暮らすため、これまでに様々な取り組みを続けてきましたが、これから先もたくさんの課題が立ちはだかっています。その課題を解決していくためには、地域社会の理解と行政の支援が最も不可欠です。逆に言えば地域と行政をどう動かすと言う事につながってくると言えます。小規模通所授産施設への実現を1つの契機として、山間地における地域支援にこれからもさらに挑戦していきたいと思います。







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