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明治神宮(I)
 
出典
:明治神宮社務所著『「明治神宮の森」の秘密』1999年8月1日、小学館文庫
 
参考文献
:本郷高徳著「明治神宮御境内林苑計画」
 
 
上原敬二著「人のつくった森」
 
 
「明治神宮境内総合調査報告書」1980.
1. 経緯
 1912年(明治45年)7月30日 明治天皇崩御
 1915年(大正4年)4月30日 明治神宮造営局官制公布、着工
 1920年(大正9年)11月1日 創建
2. 概要
(1)面積 約71万2千m3(22万坪)・・・かつては練兵場の一部で全く樹木のない草地
(2)全国から約10万本にのぼる献木が寄せられた(植樹に使用された十二分の十がこの献木)
(3)延べ十一万人もの青年たちが、勤労奉仕に参加した。
(4)国民から寄せられた浄財で外苑が造成され、神宮に献納された。
 
明治神宮図
「明治神宮の森の秘密」小学館文庫 1999
(拡大画面:112KB)
 
図1 明治神宮林の造成当時の樹種配置の模式図
 
図2 明治神宮境内林の林相の変化を示した模式図
 
『林苑計画』
第一次の林相
 森の誕生当時、つまり創設当時の主木とされたのは、おもにアカマツ、クロマツです。これらは御料地時代からのものが利用されました。主木であると同時に、森を高さで見た場合、もっとも高いところを支配する樹木、つまり林冠を支配する樹木でもありました。
 このアカマツ、クロマツよりもやや低い層として、ヒノキ、サワラ、スギ、モミなどの針葉樹を交えて、さらに低い層にカシ、シイ、クスなどの常緑広葉樹を配して、もっとも低いところに、常緑小喬木および灌木を植栽しています。
第二次の林相
 創設当時の主木であり、最上部の林冠をなすマツ類は、相当に成長することが予想されます。しかし、やがてヒノキ、サワラなどの旺盛な成育に押されて、次第に衰退して、数十年もたたないうちに、これらがマツに代わって林冠を支配すると予想されました。マツ類はヒノキ、サワラ類の間に点々と散生する状態です。
 そして、その下の層であるカシ、シイ、クスなどの常緑広葉樹がしだいに良好な成長を見せ、上木のヒノキ、サワラなどとその成長を競うようになります。
第三次の林相
 創設後、一〇〇年内外でカシ、シイ、クス類が支配木となり、全域をおおう常緑広葉樹の大森林となります。その常緑広葉樹の中にスギ、ヒノキ、サワラ、モミ、わずかながらクロマツ、あるいは場所によってケヤキ、ムク、イチョウなどの老大木を混成する森となります。
第四次の林相
 第三次からさらに数十年から一〇〇余年で、針葉樹は消滅し、純然たるカシ、シイ、クス類の欝蒼たる老大林となります。とくにクスは、歳月を経て頭角を現わし、いっぽう林内には天然下種によって発生する多くの常緑樹の稚樹(若木)や小灌木を交えると予想されます。なお、稚樹とは一般に発芽後二〜三年程度の若木のことをいいます。
明治神宮(II)
明治神宮の現在の状況
(a)以上のように予想されていますが、約八〇年を経過した現在の姿を見ると、多少の違いも出ています。
 
 その一つは、マツクイムシの被害を受けて、予想よりも早くマツ類が枯死したことです。そのために、カシ、シイ、クス類がすでに林冠を支配し、予想では一〇〇年後に現われるはずだった第三次林相が出現しています。
 もう一つの違いは、「林苑計画」に「林内には常に落下する種子より発生した大小の年齢のことなる同種の樹木があり、これ等が順次生育して」と書かれている部分です。現況を見ると、落下した種子から発芽はしますが、コナラ、イチョウなどの陽樹、つまり明るい光の下を好み、よく発芽し、成長も早い樹木は、ほぼ一年で枯死しています。カシ、シイ、クスなどの陰樹、つまり日陰でもよく発芽、発育する樹木も二〜三年で枯死しています。
 これは、予想以上に林内が、密になっているからかもしれません。
コゲラ出現状況(川内)
東京都内の緑地におけるコゲラの出現状況。上記の場所では月1回以上の調査や観察会が行なわれている。(*生息確認)
 
図42 東京の明治神宮と自然教育園のねぐらに集まるカラスの数 自然教育園の資料については、1981年までは『自然教育園報告』No.13を、1991年までは『URBAN BIRDS』No.9とNo.39を、2000年までは自然教育園による調査報告書(2000)を参考にした。明治神宮については川内・遠藤(2000)を参考にした
 
表1 植生の違いと土壌動物相(本多,1972) (m2当たり)
(拡大画面:55KB)
 
表1 東京都内の大規模な緑地における針葉樹の生育状態(亀山、1996)
(拡大画面:30KB)
注:
胞高周囲30cm以上のもの、1)石神(1974)、2)長谷川(1980)、3)亀山(1986)、4)密度(面積当りの本数)







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