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2. 魚の回遊と産卵
 冬の間、外海に去っていた魚は春に順次遡上してくることは先に述べた。中海と宍道湖に進入してきた魚の大きな動きはどのようなものか。本水域において、個体数が多く、優占的な3種の遊泳魚(コノシロ、スズキ、サッパ)の動きを探ってみた。
 
表−2 本庄工区内のコノシロ・スズキ・サッパの動き(商取引)
(拡大画面:181KB)
 
表−3 浜佐陀におけるコノシロ・スズキ・サッパの動き(刺網)
月日 3月31日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
9.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (ワタカ)
採集尾数 1     3           10    
月日 4月22日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
14.5℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (ウグイ・ワタカ・フナ)
採集尾数       50     30 100        
月日 5月5日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
17.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (ウグイ・ワタカ・フナ)
(アユ幼魚)
採集尾数       100     7 55   3    
月日 5月12日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
18.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (フナ・ウグイ・ボラ)
(アユ幼魚・シマハゼ)
(ワタカ・ウグイ)
採集尾数 30     40     4 40   3    
*隣の網       20       30        
月日 5月26日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
21.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (ボラ・ウグイ・クロダイ)
(シマイサキ・アユ幼魚)
採集尾数 100     100 100     100 100(初) 10    
月日 6月23日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
23.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y (コイ・ボラ)
採集尾数 1     100     4 10 200 1    
 
表−4 諭田におけるコノシロ・スズキ・サッパの動き(ます網)
月日 4月1日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
9.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 10     50       5        
月日 4月14日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
10.5℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 3           1 5   10    
月日 5月4日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
15.5℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 15     2       5 5      
月日 5月20日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
21.5℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 40               5 7    
月日 5月27日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
22.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 90                 1    
月日 6月4日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
225℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 30               100 10   10
月日 6月17日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
23.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 90               170     2
月日 6月24日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
23.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 60     5   1   2 30      
月日 7月1日 サッパ コノシロ スズキ マハゼ 優占魚種(その他)
水温
20.0℃
(ステージ) A M Y A M Y A M Y A M Y  
採集尾数 30         20 2   10      
 
図−3 優占3種の出現状況の模式図(2001年)
(拡大画面:125KB)
 
 2001年の場合、3月の下旬では本庄でコノシロとスズキの1歳魚と2歳魚がやや多く漁獲されているが、宍道湖ではまだ少ない。4月に入ると本庄ではコノシロとスズキが非常に増えるが、論田では少ない。一方・宍道湖の浜佐陀ではこの2種が急増する。このことは、3月下旬に外海から中浦水門を経て入ってきたこれらの魚は、中海の北岸(大根島の南岸)を通って、一部は南岸部へ、また一部は直接に宍道湖に遡上するが、多くは西部承水路を経て本庄工区内にいったん入るものと推定できる。本庄工区内で過ごす期間は、スズキは短くて、4月中旬以降は減少する。一方宍道湖では急速に増加する様子から、多くが宍道湖に向かって出ていくものと思われる。コノシロは、本庄工区内にとどまる期間は長く、5月の中旬まで多く漁獲されている。この点は4月の上旬からすでに宍道湖においては多く漁獲されているので、本庄工区と宍道湖では同時に高密度な状態である。この時期にも南岸の論田では少数しか漁獲されていないので、南岸に廻る個体は少ないといえる。
 本庄工区内のコノシロは、5月下旬になると急速に減少してくる。それに対して、宍道湖では増加してくる。したがって、この時期は宍道湖におけるコノシロの個体数が更に増して高密度な状態となる。2000年まで数年間続いたコノシロの大量死の現象は、このように宍道湖において高密度な状態になったときに発生している。この時期は、本種の多くが産卵を終えた時期であり、体力の消耗した状態の時に水質の急激な変化が加わって大量死につながったと思われる。ちなみに本調査年のコノシロの棲息量は、宍道湖の漁師数名の実感によれば、大量斃死の発生した年の3〜5分の1程度であるという。







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