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2.2 昨年度の検討結果
 昨年度の検討結果について、図2.2に示した環境修復策を施した場合の計算結果を簡単に復習した。ここでは、貧酸素水塊の規模が最大となる8月の計算結果を選んで、流動と塩分を中心とした物理環境と貧酸素水塊の改善状況を把握した。
 
1)流動の変化
 ここでは中海の流動、特に底層の流れに着目して、環境修復後の流動変化について検討した。現況と昨年度修復ケースについて底層(計算の海底直上層)の流速ベクトルを、観測日の中から8月5日を選び、図2.5(1)に示した。
 現況では、各日とも概ね美保湾から境水道〜中浦水門を通り中海に流入し、大橋川と米子湾方面に分離する流れを示している。しかし、本庄工区の2つの堤防を開削し、中浦水門に潜堤を設けたことによって、境水道〜森山堤を通り本庄工区に流入し、大海崎堤から中海に流入する進路に変更している。大海崎堤から進入した水は、大橋川に向かう流れと中海に拡がる流れに分離するが、米子湾方面にはそれほど拡がっていない様子が伺える。これらのことと、中浦水門を通る流量が減るため、現況で海水の影響を強く受けている中浦水門から中海中央部および米子湾付近にかけての水域では、高塩分水の影響が少なくなると考えられる。また、浅場を造成した水域で流れが若干変化しているのが認められた。
 
2)塩分の変化
 ここでは中海の底層塩分に着目して、環境修復後の塩分変化について検討した。現況における底層の塩分分布と昨年度修復ケースにおける塩分変化(修復ケース―現況)を、各月の観測日の中から8月5日を選び、図2.5(2)に示した。
 これによると、本庄工区では森山堤から高塩分水が流入してくるため上昇し、中海では中浦水門に設けた潜堤の影響で高塩分水が流入し難くなったため低下する傾向がみられた。変化の規模は、中浦水門に近い海域が最も大きく、大橋川に近づくにつれ小さくなる傾向にあった。本庄工区においては、現況では年間を通して余り動きの少ない塩分変動であったが、森山堤を開削することによって美保湾の潮位変動の影響を強く受け、日々の塩分変動が激しくなることもわかった。
 底層の塩分変化域は、季節によって規模は変わるが、分布の傾向は概ね本庄工区で5〜15psu程度上昇し、中浦水門南部で10psu程度、中海全域で5psu程度低下する傾向にあった。浅場造成した周辺海域でも最大10psu程度の減少がみられた。
 
3)DOの変化
 ここでは中海底層の溶存酸素に着目して、環境修復後のDO変化について検討した。現況における底層のDO分布と昨年度修復ケースにおけるDO変化(修復ケース−現況)を、各月の観測日の中から8月5日を選び、図2.5(3)に示した。
 これによると、本庄工区と中海のほぼ全域でDOが増加し、中浦水門南部では減少する傾向がみられた。浅場造成を仮定した海域では、DOの増加が認められ、浅場造成による効果が現れていた。底層のDO変化域は、季節によって規模は変わるが、分布の傾向は概ね本庄工区で1〜3mg/L程度増加、中浦水門南部で1〜2mg/L程度減少、中海全域で1〜3mg/L程度増加する傾向にあった。酸素消費を抑制した米子湾では、冬季で1〜3mg/L程度の増加が確認されたが、夏季では顕著なDOの増加はみられなかった。浅場造成した周辺海域で最大3mg/L程度の増加がみられた。
 
図2.5(1)昨年度の修復検討結果(流動変化)
底層の流速ベクトル、1998年8月5日
 
 
図2.5(2)昨年度の修復検討結果(塩分変化)
底層の塩分変化:昨年度ケース−現況、1998年8月5日
 
 
図2.5(3)昨年度の修復検討結果(DO変化)
底層のDO変化:昨年度ケース―現況、1998年8月5日
 







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