「自分がどう動くか 相田みつをさんの作品から」
この講習に参加して“引きこもり”や“不登校”といった問題に自分なりに考えてみようという意識が高まったことは確かだと思います。引きこもりと名のつく本や新聞記事には自然と目がいきます。それらを読んで気付くことは、引きこもるきっかけの多様さです。一口に人間関係のトラブルと言い切れないものがあります。いじめが原因だったり、明るく振舞うことへの疲れからであったり、漠然とした不安や無気力からであったりと実に様々なようです。これは誰にでも引きこもりは起こりえるということだと思います。
これまで講習の中で何度かシミュレーションをやってきました。カウンセラーとクライエントになってカウンセリングを行ったことが印象に残っています。私は二回ともカウンセラー役でしたがそのむずかしさを感じました。クライエントの気持ちを少しでも理解しようとする反面、間ができてお互い気まずい思いをしたくないという自己防衛の気持ちがあり自分の気持ちを素直に出し、相手の気持ちを素直に受け止める作業を同時に行うことは経験や理屈ではないと感じました。
実際、クライエントがカウンセラーや公的機関の対応によってさらに傷ついた例は少なくないようです。クライエント側の深刻な相談を受けとめる側が状況を軽く見てしまっている場合やそれぞれのカウンセラーや機関によって対応が全く異なるためにどれを頼りにすればよいのか分からないといった場合などがあるようです。人間対人間で事が行われていれば思いがうまく伝わらず知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうことはあると思います。私自身も訪問カウンセリングを行ってクライエントを傷つけない保証はありません。また相手を理解し自分を受け入れてもらえるとも限りません。
私は訪問カウンセリングにおいてカウンセラーがクライエントに対して「あなたの力になりたい」という気持ちをいかに伝えるかが最重要だと考えています。言い換えればいかにしてクライエントにカウンセラー自身のことを知ってもらうかが鍵だと思っています。その一つの方法として私はカウンセラー自身が感動し心に残っている本をクライエントに渡すことはどうかと考えています。そして私がカウンセラーの立場なら是非、クライエントに渡したいのが相田みつをさんの作品です。相田さんの作品の中に私たちがカウンセラーの立場としてどうあるべきか、クライエントの方に私たちが伝えるべきことは何なのか教えてくれるものがあると私は思います。いくつか紹介します。
カウンセラーとして一番心掛けなければならないのは、自分自身がクライエントにとって立ち直るきっかけになろうとすること、まさによき出逢いになろうと努力することだと思います。そして根気強く待つことだと思います。
相田さんの作品には、人間に対する問いかけの深さを感じます。優しさと厳しさが同位している作品が多いと思います。以下の三作品はクライエントの方にとって生易しいものではないと思います。しかし、今の自分でいいからとにかく動いていこうじゃないかという心の温かさを感じます。これはカウンセラーがクライエントに伝えたいことそのものだと思います。また、何より最終的にはクライエントのほうの決断が全てだと思います。相田さんの作品はクライエントの心の糧になる言葉だと思います。
クライエントにとって自分に対する肯定感をどう高めていくかが課題だと思います。そしてまた傷つくのではないかという不安をどう払拭していくかも難しいことですがとりくまなければなりません。社会復帰すれば全てが解決するわけではなく、最終的にはクライエントの方の生き方の問題だと思います。
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