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私が望むカウンセラー像
 私がこの分野に関わる用になったきっかけは単純なものだった。
 『頑張っている人達を応援したい。頑張る人達の手助けがしたい』
 特別のようだが、そうではなく人と人との触れ合いの中で、ごく当たり前の事として。こんな想いに動かされて、今私はオンブズパーソンが開く訪問カウンセリング養成講座を受けている。
 私がこの気持ちを強く持ったのは17歳で左半身マヒという傷害を負ってからだ。それまでも、漠然と人に接する職業に就きたいとは思っていたが、実際に自分が苦しい時に多くの人に助けてもらい、“カウンセリング=人と接して生きること”がどんなに大切で難しい事なのかを思い知らされた。心の手助けは多種多様で、成果が目に見えない上に時間をかけなければならないので大変だ。
 
 この講座を受け始めた時、ある人に「そんな勉をして偉いわね」と言われ、とても違和感を覚えた。確かに厳しい不況で人間関係が希薄になりつつある今、他人に手を差し伸べるのは難しいかもしれない。しかし、だからこそ私は多くの人と接して同じ目線で共に学び、成長して行けたらうれしいと思う。
 同じ人として、どちらかが与える側、与えられる側に別れるのではなく、対等に、時には励まし、共に悩み喜び成長していける。そんな、平凡で人間的な相談相手になりたい。その理想に近づくために、まずきちんと知識を学び、自ら進んで多くの人と出会って色々な刺激を受けて人との付き合い方を経験したい。
 他人に誇れる両親がいて、どんな時にも笑い励まし会える友人もいる私は恵まれていると言えると思う。しかし、だからできるのではなく、わたし自身が人の温もりを痛感したから、そこから人と接して行きたいと思ったからするのだ、という事を忘れずに
 
 『みんなも私も精一杯生きている。他人がどう見てかんじるかじゃなく、あなた自信で精一杯だと思える生き方をしていこうよ。』
 
と、前向きに笑顔で言えて、ささやかでも手助けができるカウンセラーになりたいし、頑張って行こうと思う。
 
今回の夏休みレポートのテーマ
《ひとに向かう前に自分と真正面に向き合って自分を見つめ直し、私がこの講座を受けよう、カウンセラーになろう。と思った気持ちを明確にする。》
 
無題
 24歳になる息子の友達が 高校の時 不登校になりました。昼夜の生活が逆転し、人をこわがるようになり、そして引きこもり その後色々あって、結局 病院へはいりました。幸い、症状がだいぶ回復し 退院しました。今は 病院へ通いながら、週に、2日か3日 父親の働く市場で理解のある周囲の人達の助けをかりて一時間から、2時間と少しずつ働く時間を増やしてがんばっています。その人のお母さんの話を ときどき聞く機会がありました。ただ話を聞くだけでした。
 又、22歳の娘の友達、明るく 利発な女の子だったのですが、大学へ入学し、2年、いまは ひきこもっているということ、お母さんも事情がよくわからない、何故こんなことになったのか、わからないといいます。
 昨年、立て続けにこのような、話を聞いて、引きこもりが身近な問題になりました。そんなときに 知り合いの子ども―縁があって赤ちゃんの時から知っているのですが、とても神経質で幼稚園に行くのも大変でした。友達もほとんどいなく、小学校へ通えるかしら、と心配でした。 4月、入学しとりあえず通っていますが、いつ 不登校になってもおかしくない、いつひきこもりになってもおかしくない そんなこどもです。
 私は、この子の為に もし、この子が不登校からひきこもりになりそうな時のために、学びたいと思いました。まわりの若いお母さん達のお話を伺うと、引きこもり予備軍のような子供達がたくさんいます。ひきこもってしまった人達への働きかけを今学んでいますが、その学んでいる中から、実は私が、一番関心があるのは、ひきこもりにならない手助けはないかを さがしていきたい、と いうことなのです。
 2回ほど、続けて 実際の訪問を学びました。私には無理かもしれないというのが 正直な気持ちです。 自分の対応一つでその人の人生が変わるかもしれないなんて、こわい と思いました。私は、この講座で期待されているような働きはできないかもしれない。 でも、まず今年の夏 教育委員会へいって、学校での安全面でのお手伝い要員として登録をしました。子供オンブズパースンと言うわけにはいきませんが、自分の周りから、ささやかな働きかけが出来ればいいな とねがっています。その為に、又 悩み事の聞き役になったときの為に、この講座で学んだことは必ず役にたつと確信しています。
 
「今、最もやりたいこと」
 私は現在、カウンセリングを学びながら引きこもりの息子を育てています。今から6年前の中学2年生の時、まわりの人の咳が気になるという理由から、学校に行かれなくなりました。私達夫婦は理解できず、頭をかかえるばかりの毎日でした。
 病院に通い、薬を飲ませる以外には何をしたら良いのか分からず、辛い中での知人のアドバイス「薬ではなく愛情で直しなさい」という言葉がきっかけとなって、少しでも彼の心を理解できるようになりたいと思い、カウンセリングを学び始めました。2年前からは、不登校の人たちのサークルで知り合った23才の女性にも係わっています。
 2人に共通しているのは、不安感が強いということです。表面的には様々な不安を訴えますが、根の部分は1つで、自分はダメな人間だという存在不安です。多くの場合は、家族のこのままではいけないという思いが、この不安に拍車をかけます。増幅したこの不安は、無意識のうちにも彼らの存在を常に脅かすので、そのことに気をとられてしまい、他のことに心を向ける余裕がなくなります。この為、日常生活の中で起こる様々な出来事も、彼らは脅威になるのです。些細なことにも不安と緊張を感じるので、外に向かってチャレンジすることができず、可能な限り行動範囲を狭め、安全な中で過ごしたいと願うようになります。
 では、どうしたら彼らの不安を和らげることができるのか、私はこのことを6年間、考え続けて来ました。またこの問題は、訪問カウンセリングの重要な課題でもあります。私のやりたいことは多くはありません。引きこもっている人、一人一人に「あなたはとても大切な人です」と伝えたい。自分はダメな人間だと思っている彼らに「あなたはすばらしい」と言葉だけではなく、私の存在全体で伝えたい。何故なら全ての人が、その人だけの特別な人生を歩むようにと、かけがえのない個性が与えられているのだから。
 自分の存在が喜ばれ、受け入れられていると知った時に、人は強められます。彼らの心が強められ、暖められて緊張が和らげば、彼ら自身の中からエネルギーが沸いてきて、成長に向かってチャレンジしていかれるようになります。そのための手助けがしたいということが1つと、引きこもりは本人もさることながら、親の苦悩も大変なもので、何年にもわたる出口の見えない不安は計り知れないものがあります。親の気持ちを落ち着かせることができれば、本人の負担も減り、良い効果が期待できます。このこともあわせて行っていきたい。
 我が家の息子は昨年の4月から、少しづつ外に出るようになりました。自分でやるという言葉が増え、親を頼らずにやっていこうという意志がうかがえます。まだ社会復帰には時間が必要ですが、段階を踏んでサポートしていきたいと思います。6年間のつたない経験を生かし、1人でも多くの人にかかわりたい。これが私の願いです。
 
「訪問カウンセリングの必要性について」
 私は、訪問カウンセリングはいろいろな問題を抱える現代社会に必要な働きかけだと思う。
 引きこもりや不登校、出社拒否と働けなくなってしまう人は今、本当にたくさんいる。今は、普通に元気に見えている人でも、悩みを抱え、次の日には働けなくなってしまうこともないとは言えない。
 だからこそ私は、人間は一人では生きていけないと思う。辛いことがあった時、一人で乗り越えられることもあれば、悪い方にばかり考えが向いてしまい死にたいと思うことさえあるだろう。
 しかし、もしその時に話を聞き支えてくれる人がいたら、時間はかかっても乗り越えられると思う。そういう存在が本来ならば、身近な親や友人なのだろう。
 引きこもる人には、助けを求める相談相手が身近にいなかったのではないだろうか。
 だからと言って、相談相手を派遣したから単純に問題が解決するわけではないが、良い方向に少しづつでも働きかけることができると思う。
 私は、人とコミュニケーションをとる事はとても大切だと思う。人間関係を育む中で、心が豊かになり支え助け合うことが出来る。訪問カウンセリングがその大切なステップの役に立てたら良いと思う。その中で、少しづつでも心の傷が癒えていってほしい。
 しかし、全ての人に訪問カウンセリングと言う応援の形が合うわけではないだろう。
 その人それぞれのタイミングがあり、どうしても人を受けいれられない時期がある。引きこもりや不登校になるまでに、人との関わりを拒絶してしまう程の辛い体験をしている。人が怖くなったり、信じられなくなっている場合がほとんどだと思う。
 そんな時期に初対面の人に心を開いてくれるだろうか。普通に生活している私達でさえ、緊張したり、人見知りをしてしまうのだから会う事さえ難しいと思う。そういう時期には私たちの存在を知ってもらいつつ、そっとしてあげることも大事だろう。
 私は、その人それぞれのタイミングに合わせて、上からではなく同じ目線で対等に話せる相手になれたらと思う。
 今、こうしてカウンセラーを目指している私も昔、不登校を経験している。学校へ行けなくなった時、自分が皆からとり残されるのではないかとすごく不安に思った。
 そんな辛い思いを、引きこもりや不登校、出社拒否の人達もしているのではないかと思う。私は、その人達のためにも訪問と言う形で、心の支えになっていけたらと思う。







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