宍道湖・中海環境修復案検討シミュレーション
1. 概要
宍道湖・中海の環境を改善するための様々な環境修復案が提案されている中で、夏季底層で形成される貧酸素水塊を軽減するための修復案について、改善効果を定量的に評価・検討するためのシミュレーション調査を行った。
1.2 作業項目
1)宍道湖・中海における水質環境の現況把握
2)環境修復策の効果予測
3)解析結果の可視化
1.3 作業内容
1)宍道湖・中海における水質環境の現況把握
中海における貧酸素水塊の挙動や宍道湖底層への高塩分水の流入等、宍道湖・中海生態系の特性を考察するため、1998年度を対象とした流動および水質シミュレーションを実施した。現地観測による実測データに基づいて、解析結果の整合性を確認した。
2)環境修復策の効果予測
環境修復策として、貧酸素水の形成に関わる修復案を3ケース実施し、改善効果を検討した。
現況解析と同じ条件設定で、環境修復策を講じた場合の流動変化および環境修復策による水質改善を予測した。現況解析結果と対比して流向・流速や海水交換量、水塊構造(水温・塩分)の変化を調べ、物理環境の改善効果を検討すると同時に、夏季に中海で広範囲に発達する貧酸素水塊の改善状況を検討した。
3)解析結果の可視化
流動と貧酸素水塊の予測結果は、CGを利用してわかりやすく可視化した。流況シミュレーションについては、漂流粒子の追跡により流れの変動を表現した。貧酸素水塊の挙動については、2ml/l(=2.8mg/l)以下の領域に着目して、その出現状況を表現した。
2. 宍道湖・中海における水質環境の現況把握
2.1 流動シミュレーションの計算条件
シミュレーションの計算範囲は宍道湖から美保湾に至る南北26.5km×東西44.25kmの海域で、この対象海域を最小250m〜最大500mの格子で分割した(図2.1)。一方、鉛直方向には1.5mピッチで6層の区分を設けた。再現期間は1998年4月1日0時〜1999年3月31日24時とした。美保湾潮位や斐伊川流量および気象要素等の入力条件は、すべて実測データを使用し、計算期間中の日々の変動を設定した。
流動シミュレーションの計算条件を表2.1にまとめた。
図2.1 宍道湖・中海水系の水平計算メッシュ(幅250〜500m)
表2.1 流動シュミレーションの計算条件一覧
項目 |
設定値 |
計算範囲 |
宍道湖・中海〜美保湾 |
水平方向メッシュ幅 |
250〜500mメッシュ |
鉛直層区分 |
海面から海底までの水柱を6層に区分; |
第1層 海面〜1.5m |
第2層 1.5〜3.0m |
第3層 3.0〜4.5m |
第4層 4.5〜6.0m |
第5層 6.0〜8.0m |
第6層 8.0〜海底 |
流況再現期間 |
1998年4月1日0時〜1999年3月31日24時 |
計算の時間刻み |
15秒 |
湾口潮位条件 |
美保湾の潮位変動記録(国土交通省 中国地方整備局 出雲工事事務所)より、1時間毎に設定(図2.2). |
湾口水温・塩分条件 |
水質調査結果(鳥取県衛生研究所)より、日毎の水温・塩分を推定. |
流入河川流量 |
流量年表(日本河川協会)より、斐伊川の日毎の測定値を設定(図2.3). |
風向・風速 |
AMeDAS測定局と大橋川水質自動監視システムの日毎の風向・風速データから、空間補間により海上風の日変化を推定(図2.4). |
降雨量 |
AMeDAS測定局の時間毎の降雨量データから、空間補間により湖上降雨量の時間変化を推定(図2.5). |
気象要素 |
AMeDAS測定局のデータより、日毎の日射量、雲量、気温、相対湿度を設定(図2.6). |
諸係数 |
コリオリ係数 |
8.45×10−5 s−1 |
海面摩擦係数 |
0.001×(0.7+0.4W)〔風速W(m/s)の関数〕 |
海底摩擦係数 |
0.0026 |
水平渦粘性係数
渦拡散係数 |
9.21×104cm2/s |
鉛直渦粘性係数
渦拡散係数 |
乱流モデルにより算出 |
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