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2. 港湾物流情報ネットワーク(POLINET)の概要
2.1 インターネットを導入したWeb-POLINET、Cyber-POLINET
 
 港シ協が運営しているインターネットEDIについて概観してみます。
 
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図表−4 新しいインターネットEDIと既存POLINET
 
 Web-POLINET、Cyber-POLINETの導入目的は4つある。
(1)通信コストを削減すること。
(2)Webのブラウザを利用することによって中小事業者の参加促進を図ること。
(3)EDIセンターにフォーマット変換機能を組込み、いわゆる国際標準UN/EDIFACTメッセージのやり取りができるようにすること。
(4)VAN to VAN POLINETの既存ユーザーと新しいインターネットのユーザーが相互接続して双方向のEDIを可能にすること
 
 Web-POLINETはオープン・インターネットを使っており、Cyber-POLINETはファイル転送型、つまりVAN to VANのPOLINETと同じ電子データ交換方式ですが、エクストラネットという、いわば閉じたITネットを使ってセキュリティを高め、通信コストを安く仕上げるという目的を持っています。センターには、それぞれのネットワークをカバーするサーバを置き、間にAPサーバを置いて宛先振分処理、あるいは異なるフォーマットのトランスレーションを行う機能が組込まれています。
 
2.2 POLINETとSea-NACCSの競合
 
 POLINETの対象業務範囲は図表−5に示す通り港湾物流業務全般をカバーしており、国際の港湾物流関連の事業者であれば誰でもPOLINETを利用できます。対象業務メッセージは全て用意されておりませんが、主要業務は用意されています。今後も利用者のニーズに応じて、順次標準メッセージを開発・拡張していくことにしています。
 
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図表−5 POLINETの対象業務範囲とSe-NACCSとの競合
 
 特徴的なことは、Sea-NACCSが民間業務の一部もサービス対象範囲にしていることから、POLINETの業務範囲と部分的に重なっていることです。その重複している部分は、船積確認事項登録でいわゆる民間業務でいうとD/R(ドックレシート)です。それからバンニング情報登録は民間業務でいうとCLP(コンテナ・ロード・プラン)、船積明細通知は民間業務でいうと確定運賃情報(B/Lナンバー情報)です。逆に重ならない部分(Sea-NACCS側)は、通関手続、保税業務や監視業務などいわゆる行政手続の部分です。
 Sea-NACCSが民間業務を取り扱うといってもそれはほんの一部であって、すべての民間の港湾物流業務を取り扱うわけではない。また、利用者の資格という面からみても参加できない業種があります。
 では、Sea-NACCSが扱わない民間業務を挙げてみると、船腹予約、いわゆるブッキング情報、船積指図書、いわゆるS/I(シッピングインストラクション)、検量や検数業務、陸運業務関連、コンテナ船のベイプラン情報、あるいは輸入貨物の到着予定通知、いわゆるA/N(アライバルノーテイス)など。そして、絶対に取扱われないものに民間の決済業務があります。このような制約がありますから、国際港湾物流そのものの完全電子化を目指す場合には、この辺のところに大きく配慮する必要があります。
 
2.3 港湾物流業務のEDI普及状況
 
 港シ協会員の海貨事業者を対象に行なわれた「2000年から2002年までのEDI伝送経路」に関するアンケート調査(図表−6)によると、2002年のEDI予想件数は、POLINET経由データ件数とSea-NACCS経由を比べてみても地域的に若干の違いはあるものの全国合計ベースで半々という状況でした。これを2000年から2002年までを合計ベースの百分率で眺めてみると、Sea-NACCS経由のEDI利用比率が少しずつ伸びているのに対してPOLINET経由は、ほんの少しずつですが、下降しています。とはいってもPOLINETとSea-NACCSの合計値は、全体として20%に満たない。つまり80%強の業務情報は書類ベースでやり取りされている実態です。
 地域別に眺めてみると、若干地域的な特色が出ていますが、総じて西側に行くほど、Sea-NACCSよりもPOLINET経由の方が多いようです。けれども、全体としては80%強がまだ書類搬送の世界なのです。
 
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図表−6 海貨事業者のEDI伝送率の現況
 
2.4 海貨業者および船社・代理店等のEDI事情
 
 海貨業界における情報化の歴史的な経過からみると、海貨各部門の業務システムをバラバラに構築してきた事業者が多いため情報の共有化が部門ごとになされ、全社的共有システムが多くないということです。部門別独立システムによる弊害も出てきています。それを解決する方策としては、各部門の業務システムをリンクして情報共有化を図るしかないが、それを構築しようにも、部門間の縄張り争いやデータ項目定義やコード体系が異なるなど社内にいろいろな阻害要因が内在しているようです。
 さらに大きな問題は、社内業務システムとEDI対応システムが連携しておらず、別系統で構築されている例がかなり見受けられるため、よくEDIは導入しても二重入力が避けられないという話は、この辺に原因があるようです。単に会社がEDI対応しているといっても、個々にみるとこのような問題があるため現場の実務担当者の業務効率化にはつながらないのでなかなかEDI率が高まらない結果となっています。
 
 次に、船社・船舶代理店におけるEDI対応状況を眺めてみると、大手の邦外船社はEDIを導入してコンピュータB/Lを作成するなど100%活用していますが、問題はB/Lの元データとなるD/R情報のEDI比率が少ないことです。多いところでも3割から4割程度。大部分はSea-NACCSを含めても2割程度ということですから、残りの8割は書類授受になり、船社側でデータ入力している状況です。
 このため、大手船社は、日本の高い入力コストを回避させる目的でベトナムやフィリピンなど経費の安い国にファックスでD/Rを送って、そこで入力させデジタルファイルを日本に再度伝送させてコンピュータB/Lを作るシステムを導入しています。
 
 一方、船舶代理店のEDIは殆ど未対応の状況です。これにはいろいろ原因があるわけですが、最大の理由は経済的な理由です。代理店のコミッション収入は多くないので、そのコミッションの範囲内で大手船社並のコンピュータB/L作成システムを導入するということは難しい状況です。これを解決する方策としては、海貨業務システムASPサービスと同じように、船舶代理店向け代理店業務システムASPサービスの提供が効果的と考えられます。







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