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IX. 港湾物流分野のEDI普及の現状と課題
1. 官民ネットワークの進展と計画概要
1.1 行政ネットワークと行政手続電子化の動向
 
 まず、港湾物流分野における行政手続電子化の進展と計画の概要を眺めて見ます。海上貨物通関情報システムが平成4年からスタートし、平成12年にいわゆる更改Sea-NACCSが構築され、稼動を開始しました。その後、平成14年から限定的なインターネットを導入したCuPESがスタートしています。
 さらに、平成15年3月の稼動開始を目標に、オープン・インターネットを導入したnetNACCSの開発が進められています。現在行なわれているSea-NACCSによる行政手続きが、このnetNACCSでも行なえるようになります。
 次に、国土交通省所管の「港湾EDIシステム」は、平成12年から稼動を開始しており、平成13年末にはSea-NACCSとの接続を実現し、さらにシングルウィンドウに向けて、今、最終段階に入っているという状況です。
 
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図表−1 行政手続電子化の進展と計画概要
 
 これら行政手続電子化のバックボーンとなっているのは、平成13年に公布されたeJapan重点計画であり、それを受けて同年7月に交付された新総合物流施策大綱です。その内容を見てみると、まず、eJapan重点計画には5項目あって、その第4番目に『行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進』があり、ワンストップサービスの実施について述べられていますが、その中で特筆すべきなのは『2003年度までの輸出入手続の電子化の一環として、民間の各種輸出入手続の申告・申請・受付システムと、それから貿易関連手続の電子化にかかわる民間システムとの連携等を検討する』としており、シングルウィンドウ化の次には民間ネットワークとの相互連携を目指すと明示されていることです。
 次に、新総合物流施策大綱でもeJapan計画を受けて、同様の文言が並んでいます。その中でも、『国際物流拠点の機能強化等のための施策』の中で、各種手続の電子化、ワンストップサービス化がうたわれており、さらに、民間ネットワークとの相互連携の方向が示されています。
 『陸上輸送、外航海運、港湾運送等、様々な事業者が介在する国際海上貨物輸送分野においては、民間におけるEDIの導入を促進すると共に、UN/EDIFACTとの整合性を確保した形で、EDIデータ項目の定義等を行い、国内物流EDIや民間貿易金融EDI等』つまり、民間ネットワーク等との連携を支援していくとうたわれています。
 
1.2 民間EDIネットワークの動向
 
 次に民間EDIネットワークの進展経過と計画概要について図表−2に纏めています。(社)港湾物流情報システム協会(以下「港シ協」という)は、もともと民間の任意団体「SHIPNETSセンター」として発足したが、1993年に現在の社団法人に改組している。この間、港湾貨物情報ネットワーク「SHIPNETS」を1986年から1995年まで提供し、1995年からVAN to VAN、いわゆるVAN間接続のPOLINETを構築、運営しています。
 その後、2001年2月からインターネットを導入したWeb-POLINETとCyber-POLINETを稼動させ、2002年4月から海貨業務システム(eForwarder)ASPサービス、つまりアウトソーシングサービスを開始しています。
 荷主を中核としたネットワークとしては、S.C.NETが1987年に立ち上がりました。さらに、1990年にS.F.NETが立ち上がりましたが、2000年の春には解散し、その機能は、貿易金融EDI(TEDI)に継承されています。TEDIの前身は、EDENプロジェクトとして、1997年の暮に設立され、それがTEDIプロジェクトになり、そして2000年から商用化がスタートしています。一方、ヨーロッパでスタートしたBoleroは、その後、極東にも展開されまして、1999年からBolero.net(ボレロ・ドット・ネット)として日本やアジアで稼動を開始しています。
 また、GSJ(グローバル・サプライチェーン・システム・ジャパン)研究会が2001年に設立されて、2003年のサービス開始を目標に研究が進められているようです。
 それから、港湾物流情報プラットホーム構築に向けた検討組織が、2002年秋に発足して、現在その中身について検討が重ねられています。
 
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図表−2 民間ネットワークの進展と計画概要
 
1.3 官民ネットワークの相関関係
 
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図表−3 官民ネットワークの相関関係図
 
 前図に示す通り、現在、民間の各業界はPOLINETやTEDI、あるいはBoleroなど複数のネットワークにつなげています。理由は、各ネットワーク同士の相互接続が実現していないからです。各業界の事業者は、利用目的毎にネットワークの選別をして、それぞれ接続して利用していかなければシームレスな電子商取引ができません。
 例えば船会社は、TEDIやBoleroに接続すると同時に、POLINETあるいは行政のNACCS、そして港湾EDIシステムといった複数のネットワークと接続することを要します。また、海貨や通関業者についても似たようなもので、荷主とのデータ交換にはTEDIかBolero、それから船社との間ではPOLINETないしはSea-NACCSを経由してやり取りすることが必要です。
 POLINET以外の民間ネットワークの概要については、別項に記述されていますのでそちらをご参照ください。







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