3. ADRの種類:
訴訟以外の紛争解決手段=ADRの主なものは、「調停」と「仲裁」になると思います。それぞれに就いて以下に概略を示します。
3.1 調停:
民事上、紛争解決のための手続で、第三者の仲介によって、紛争当事者が相互に話し合い和解97・示談98の成立に努力するもの。
但し、調停の場合、紛争が解決するには、あくまで両当事者の合意(和解)が必要ですから、和解に達することが出来ない場合、最終的には、訴訟に行くか仲裁に行くかの選択をせまられることになります。
また、契約上別途合意無き限り、時効が停止しませんので、時効を止める為に、取りあえず訴訟ないし仲裁を開始して時効を止め、その後、調停を進めることも有ります。
(現在のところ、消費者の電子商取引に関する紛争処理機関の業務の実態は、斡旋かせいぜい調停に止まっている例が多い様です。それでも或る程度は機能するのでしょうが、深刻な争いの場合、上記した様な理由により、不十分と言わざるをえないでしょう。)
3.2 仲裁(手続):
仲裁人が仲裁判断によって当事者間の争いを解決する為に行う手続。
仲裁手続が行われるためには、先ず仲裁契約の存在が必要です。
また、仲裁判断は、当事者間では、確定判決と同様の効力を持ち、それに基く強制執行も可能であるのが原則です。
3.2.1 仲裁契約:
当事者双方がその間の現在又は将来の争いについての判断を第三者である私人(仲裁人)に委ねてその判断に服することを約する契約。
日本法上の要件としては、当事者が係争物について和解をする権利があること、仲裁人に争いの判断をさせること、将来の争いに関するときは、一定の権利関係及びその関係から生ずる争いに関することなどが必要です。
この仲裁契約は、独立した文書としてでではなく、主たる契約中の仲裁付託条項という形で成立することが多い様です。
仲裁契約がある場合に限り、仲裁手続によって紛争を解決出来るとともに、仲裁契約により、当事者はその間の紛争を仲裁手続により終了させる契約上の義務を負いますから、当事者の一方がこれに反して訴えを提起したときは、相手側は、裁判所に対して仲裁契約の存在を主張し、その訴えの却下を求めることができます(仲裁契約の抗弁=妨訴抗弁99の1つ)。
97 和解:争っている当事者が互いに譲歩して争いをやめる契約(民695条)
98 示談:民事上の紛争を裁判外で話合いによって解決すること又はその結果生じた合意。示談が成立しても、裁判上の和解と異なり、民法の和解契約としての効力しかないが、紛争解決方法として最も基本的なものである。
99 妨訴抗弁:原告の訴えが不適法である旨の主張、例:管轄違いの抗弁、仲裁契約の抗弁
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