IV. 電子情報交換に関するモデル取引当事者間協定書(TPA)
はじめに
国連CEFACTとOASISの協同で推進しているebXMLイニシアティブに関連して、法律問題グループ(Legal Group:LG)は、ebXML標準に基づく「ebXML取引当事者間協定書」(ebXML Trading-Partner Agreement:ebXML TPA)の開発を検討しました。第1章「電子商取引のための国際ルール構築への取組み」で述べたように、「ebXML Trading-Partner Agreement(Version 1.0)」(CEFACT/2000/G020, December 2000)は、TPAの第一次案で、それ自体が独立した協定(書)ではなく、EDI交換協定書の技術的付属書に含まれている情報伝達規約や情報表現規約などの取り決めに関するもので、CPPおよびCPAに関する仕様書、技術的付属書の性格を持つ文書です。
その後に出たのが、RosettaNet、EDIFICE、ESIAとUN/CEFACT/LGのTPA作業グループによって開発されたTPA第二次案(Draft V0.2)で、2001年9月には発表されました。この「取引当事者間協定書」(Trading Partner Agreement:TPA)は、「電子情報交換協定書」を構成する一組のモデル条項をTPAのユーザーに提供するもので、構成および内容が大きく変わっています。TPA第二次案の1ヵ月後の2001年10月にTPA(Version 01.00)が発表されました。これは、第二次案に若干修正を加え、「付属書1. ポータルサービス」、「付属書2. XMLサービス」および「付属書3. EDIサービス」にそれぞれ用語解説が追加されました。最新版はTPA(Version 2.00)で、次の5つから構成されています。
1. TPA 一般の法的問題に関する条項(General Legal Provisions:GLP)
2. TPAモジュール:非開示協定書(Non-Disclosure Agreement:NDA)
3. TPAモジュール:付属書1. ポータルサービス(Appendix1-Portal Services)
4. TPAモジュール:付属書2. XMLサービス(Appendix2-XML Services)
5. TPAモジュール:付属書3. EDIサービス(Appendix-EDI Services)
LGでは、今年の第9回総会に、電子情報交換に関するモデル取引当事者間協定書として「TPA(Version 2.00)」を提出する予定で作業を進めています。
1. TPA GLP(2版)
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1. 一般の法的問題に関する条項
(General Legal Provisions)
1.1 用語の定義(Definition of Terms)
・採択フォーマット(Adopted Format):適用される仕様および付属書に従って承認された電子情報交換(electronic information exchange)の方法、または両当事者が書面で合意したその他のフォーマット。
・承諾の確認(Confirmation of Acceptance):ビジネス請求の承諾を確認するために請求当事者(requesting Party)に返信される電子情報。
・受信確認(Confirmation of Receipt):ビジネス請求の受信を確認するために請求当事者に返信される電子情報。
・データログ(Data Log):データログとは、当事者間に交換されたデータの完全な記録をいう。
・デジタル署名(Digital Signature):デジタル署名とは、メッセージ発信者またはドキュメントの署名者の身元(identity)を認証したり、送信されたメッセージまたはドキュメントの元の内容が改変されていないことを保証するために使用可能な電子署名をいう。
・電子情報交換(Electronic Information Exchange):電子情報交換とは、電子商取引の方法であり、これには、電子データ交換(EDI)、ファクシミリ、電子メール(Electronic Mail)、ならびにXML(Extensible Markup Language)およびポータルテクノロジーを使用したインターネットに基づくトランザクション(internet-based transactions)などの情報交換技術を利用するメッセージ、ドキュメントおよびデータの交換が含まれるが、これらに限定されない。
・電子署名(Electronic Signature):電子署名とは、契約書やその他のドキュメントに添付されるか、または論理的に関連付けられ、ドキュメントに署名することを意図して行使または採用された電子的なサウンド、コード、記号またはプロセスをいう。
・暗号化(Encryption):暗号化とは、数学的アルゴリズムの方法でデータを権限のない者によって容易に理解されることのない形状(秘密コード)に変換することをいう。
・情報(Information):情報とは、データ、テキスト、画像、サウンド、コード、コンピュータプログラム、ソフトウェア、データベースなどをいう。
・記録(Record):有形の媒体上に記された情報、または電子的媒体あるいはその他の媒体に保存され、認知可能な形状で復元される情報をいう。
・サービス(Service):サービスとは、サービスプロバイダーによって提供されるプラットフォームにアクセス可能なネットワーク上に展開されるソフトウェア・モジュールをいう。そのインターフェイスはサービス・ディスクリプションで説明される。それは、サービス請求者の要請によるか、または請求者との相互作用で実現する。
・サービスプロバイダー(Service Provider):取引当事者がそれぞれ自社のコンピュータ内に設置する代わりに、電子情報交換サービスを取引当事者に提供する会社をいう。サービスプロバイダーは提供されたサービスの所有者である。
・仕様(Specifications):本取引当事者間協定書(Trading Partner Agreement)(以下、「協定書」と称す)に明示されている採択フォーマットを使用し、合意済みの電子情報交換に適用される取引上および技術上の手続、規則、その他の条件を示した一組の標準、プロトコルおよびドキュメント。
・トランザクション(Transaction):企業や消費者の行為または複数の当事者間の商業上の業務に関連した活動(action)または一連の活動をいい、これには(a)(i)有体および無体の動産、(ii)サービス、および(iii)それらの組み合わせの売買、リース、交換、ライセンス供与、またはその他の譲渡、および(b)不動産に関する権利の売買、リース、交換、その他の譲渡、またはそれらの組み合わせが含まれる。
1.2 目的および範囲(Object and Scope)
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両当事者は、従来の紙ベースの書類の代わりとして電子情報交換を使用することに合意する可能性があることから、本協定書は、当事者相互の利益のため、利用可能な電子技術を使用することによって、そのようなトランザクションが法的に無効または強制不能でないことを保証するものである。
両当事者は、契約の成立、変更、取消、法的権利または救済の変更を決定するような本協定書のいかなる部分も[本協定には]適用されないこと、本協定または両当事者間におけるその他の協定の一部にならないこと、および両当事者間に代理(agency)、組合(partnership)、合弁事業関係(joint venture relationship)またはその他の取引関係も生じさせるものではないことに合意する。
1.3 一般取引条件(General Terms and Conditions)
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各当事者は、(a)本協定を締結し、ここに定められた義務を行使するのに必要な第三者の承認、同意および権限をすべて得ていること、(b)各社を代表して本協定書に署名する者が、署名する明示的な権限を有するものであり、かつ署名することにより、当事者を拘束すること、(c)本協定書が有効かつ当事者の義務を拘束し、その条件に従って強制可能であることを、意思表示しかつ保証する。
前項に明示されている事項または他に別段の合意がある場合を除いて、いずれの当事者も一切の意思表示または保証を行わず、かつ各当事者は明示的または黙示的の別を問わず、本協定に関連するあらゆる意思表示および保証をここに明示的に否認する。
本協定書は、事前に他方の当事者の書面による合意なしに、いずれの当事者もこれを譲渡または移転することはできないこととする。
1.4 記録および保存(Recording and Storage)
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両当事者は、データ保護に関し、それぞれの地域および国の関連法および規制に従うこととする。特に、取引上の係わり合いから取得可能な個人データは、意図した目的以外の目的で保持したり使用したりしないこととする。
1.5 機密保持および第三者(Confidentiality and Third Party)
他に別段の合意がある場合を除いて、本協定の下に伝送される電子情報、および交換の安全対策として使用される電子署名とデジタル署名は、すべて発信者側当事者(originating Party)の機密事項(confidential property)と見なし、両当事者間の非公開協定書(Non-Disclosure Agreement)の取引条件に含まれ、その対象となるものとする。
電子情報は、直接交換するか、あるいはいずれの当事者も契約することが可能なサービスプロバイダーを通じて交換することができる。サービスプロバイダーと契約する当事者は、そのサービスプロバイダーが機密情報を開示しないこと、あるいは両当事者間で締結した非公開協定書の取引条件よりも安全性の劣ることのない取引条件が含まれた協定書に署名し、これに従ってサービスを提供することを唯一サービスプロバイダーに求めなければならない。
両当事者は、他方の当事者に30日前に書面で通知することにより、サービスプロバイダーの利用または変更を行うことができる。
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