2.4 第4回貿易手続簡易化特別委員会(平成14年10月25日)
2.4.1 ebXMLの情報モデル コア構成要素
菅又委員より、資料「ebXMLの情報モデル コア強制要素」に基づいて報告が行われました。概要は次のとおりです。「取引当事者など汎化された情報構成要素をコア構成要素といいます。これを実際のビジネスに使うときビジネス情報項目となります。コア構成要素の構造は階層化されており、集約コア構成要素(例:取引当事者、住所)が上部にあり、その下に基本コア構成要素(例:契約日、支払い金額、国コード)をもちます。その下のコア構成要素タイプには日付、コード、金額など11個があり、補足情報として、それを管理する機関があります。コア構成要素名称の構成は、オブジェクトクラス、特性用語、表現形式から成ります。例えば、発注日:注文+発行+日となります。UN/CEFACTモデリング手法において、コラボレーションプロトコル合意書、ビジネス文書、XML化コア構成要素は全てXMLで記述されます。」
上記の報告に関連して、次のような質疑応答が行われました。
Q:当初ebXML TPAとなっていましたが、ロゼッタネットTPAではXMLサービスはポータルサービスやEDIサービスなどとともにTPAモジュールの一部になり、TPAは電子情報交換として広い内容になっています。
A:情報モデルはEDIFACTとかXMLとか関係なしに定義され、そのときの最新のシンタックスに落とそうという考え方です。
Q:ロゼッタネットのモジュール3、4、5のコアコンポーネントなど技術的仕様を当事者が決めればXMLで情報交換が自動的にできるようになるのですか。
A:ITインフラが変わればモジュールは増えていきます。ロゼッタネットTPAはロゼッタネットで実際に動いています。それを参考にebXMLは作られています。その仕様にあわせてロゼッタネットもバージョンアップしようとしているものです。
2.4.2 取引当事者間協定書(TPA)の構造について
朝岡委員長より「取引当事者間協定書(TPA)」と題する資料に基づいて報告が行われました。概要は次のとおりです。「菅又委員からebXMLのコアコンポーネントについての説明がありましたが、それとTPAの『付属書2:XMLサービス』と関係があると思います。取引当事者間協定書(TPA)の構造は、(1)一般の法的問題に関する条項(GLP)、(2)TPAモジュール:非公開協定書(NDA)、(3)TPAモジュール:付属書1:ポータルサービス、(4)TPAモジュール:付属書2:XMLサービス、および(5)TPAモジュール:付属書3:EDIサービス、からなっています。なお、不明点等を“「取引当事者間協定書」(TPA)に関するコメント”としてまとめました。」
2.5 第5回貿易手続簡易化特別委員会(平成14年11月19日)
2.5.1 第20回AFACT関連会議等の報告
伊東氏(国連CEFACT副議長)より「第20回AFACT関連会議/EDICOM2002コンファレンス報告」に基づいて以下のような報告がありました。
「10月27日〜11月1日に第20回AFACT/EDICOMがマレーシアで開催され、12カ国から150名強が参加し、日本からはAFACTでは中垣氏を団長として4名が参加しました。IIC(Inter-Networking Implementation Committee)、XMLWGなど12の合同作業グループ会議が10月28日、29日の2日間にわたり開催され、29日午前中は「XMLデー」と称するセッションが特別開催され多数が参加、菅又氏ほか2名がXML関連のプレゼンテーションを行いました。運営委員会ではe-ASIA Awardの行事やebXMLアジア委員会がAFACTの準メンバーとなることが承認され、次回第21回AFACT開催国はパキスタンに決定しました。同委員会でAFACTの今後の進むべき方向としてUN/CEFACTの新組織に沿ったAFACT合同作業グループの再編が提案され、それに対するコメントが来年3月31日期限で求められています。」
「EDICOMが10月31日および11月1日に開催され、延べ400名が参加、初日午前中に「Challenges in Implementing e-Business through XML/EDI over the Internet」と題した講演を行いました。Mr. D. Jost(WCO Officer)は「Customs e-Solutions Key for Secure and Efficient International Trade」と題して、同時多発テロ以降セキュリティー面が厳しくなっているが(例:CSI)、FacilitationとSecurityとは裏腹の関係があるというところにポイントを置いて発表しました。また日本メテオーラ社から5名がEDICOMに参加し「The New Internet Security System based on UN/Recommendation No.26,"More Civilized Net" 」と題してセキュリティー関連のプレゼンテーションを行いました。中国は過去3年間出席していません。おそらく台湾が正式メンバーになったこと、常設事務局になったことなどが影響していると思われますが、引き続き参加を促していきたいと思います。現在AFACFT加盟国は16で、まだアジア太平洋全体の3分の1以下ですから、アジア地域でのEDI啓蒙普及は大変であると感じています。特に通信関係のインフラ整備が一番問題です。発展途上国ではパソコンの普及もまだまだで、デジタルデバイドや合理化反対の問題も抱えています。アジア域内での啓蒙普及の余地はまだあるのではないかと考えています。」
2.5.2 CPP/CPA仕様と関連仕様について
菅又委員より「ECOM XML/EDIニュースレターNo.8(2002.3.15)」に基づいて報告がありました。「BPSSによって記述されたビジネスプロセスはCPP、CPAによって使い方が定義されます。合意されたCPP、CPAはヘッダー情報に記載されます。ビジネスプロセスの事例として、RosettaNet PIP3A4のビジネストランザクション会話を示しました。4種のビジネス電文交換の返信時間などの制御パラメータが定義されています。ebXML BPSS仕様を使用した受発注処理のビジネスプロセス文書の具体例を示しました。この文書は、(1)ビジネス文書の定義(2)ビジネストランザクションの定義(3)バイナリーコラボレーションの定義から成っています。この定義によりビジネスプロセスエンジンが動きます。XMLで記述されたCPP文書(Company A)の具体例が紹介されています。CPA文書とビジネス電文ヘッダー情報の具体例としてXMLで記述されたメッセージヘッダー(注文書‘Purchase Order Request')が紹介されています。この中に既存のメッセージ(例EDIFACT)を乗せることは問題ありません。」
2.5.3 ADRに関する最近の動向について
朝岡委員長より「ADRに関する最近の動向」と題する資料に基づいて説明がありました。
・「仲裁制度:消費者が選択できるよう」(朝日新聞、2002年10月28日):仲裁を選ぶと後で裁判を起こすことも不服申し立てをすることもできないので、消費者取引について一律に仲裁合意を認めることには賛成できません。トラブルが起きた段階で消費者が裁判を含めた解決策を自由に選択できる仕組みにしておくことが絶対必要であると思います。
・「企業紛争 裁判せず処理−国際商事仲裁協会:国内企業向け、迅速・安価に」(日経新聞、夕刊、2002年11月6日):(社)国際商事仲裁協会は1月に(社)日本商事仲裁協会に名称変更し、「調停センター」(仮称)を開設して国内企業間を対象にADR事業を始めます。申立金は5万円で、管理料金は20万円ですが、零細企業や小型案件では安い金額を検討しているとのことです。
・「消費者に係わる紛争処理:裁判からADRへ」:先月ECOMでODRに関するセミナーがありました。最近インターネットが急速に普及しているが、トラブルも急増しています。トラブルの種類も取引上の紛争だけでなく、詐欺、名誉毀損、プライバシー権・肖像権の侵害、国際電話課金、著作権侵害など多岐にわたっているのが現状です。最近の消費者は仲裁ではなく和解の斡旋と調停の中間的な助言の提供を求め、納得のゆく解決を追求し満足しています。情報社会におけるADRの考え方は、市場や企業の信用を高めることによって消費者の信頼を得ることが主体となってきています。消費者は信頼から生まれる解決に満足し、アナログ的欲求、可視的公正性、手続の透明性を求めており、企業が消費者の信頼を得るにはこれらの要件に答える努力が必要です。
・EU電子商取引指令では16条で行動規範、17条でADRの勧告を行っています。EUではインターネットなど新しい社会情勢変化の中で消費者保護というものを行動規範とかトラストマークという形で企業が消費者に対する信頼をどうやって得るかということを模索しています。紛争解決はADRで迅速・低廉に消費者の苦情処理を行っていくことが必要だという考え方の上にODRという問題が処理されていくものと考えます。
・早坂委員:「英国の場合、英国法で仲裁を依頼すると判断結果が公表されるため、契約書の文言の判断材料に生かせることが出来ます。日本の場合は、その場限りで仲裁結果が公表されないため、公表される裁判が好まれる傾向にあります。」
2.6 第6回貿易手続簡易化特別委員会(平成14年12月10日)
2.6.1 各省のシングルウィンドウ化への取組み
関係各省よりシングルウィンドウ化について説明を頂いた。「港湾関連手続シングルウィンドウ関係府省合同説明会資料」が席上配布され、全体説明に続き担当各省の説明が行われました。
(1)全体説明:
「シングルウィンドウは来年の出来るだけ早い時期に供用開始できるよう完成を目指しています。船舶が港を利用する場合、手続に必要な書類の記載事項は重複しており、一回の入力・送信で全ての必要な手続が完了するシングルウィンドウ化が求められてきました。政府内でもe-Japan重点計画で『2003年度のできる限り早い時期までに、手続のシングルウィンドウ化を実現する』と明言されています。シングルウィンドウ化の骨格はNACCSと港湾EDIシステム間の接続により実現します。それにより利用者は専用線やインターネット利用により1回の入力で全ての必要な行政手続を完了できるようになります。入出港届(船社業務)は代表的なシングルウィンドウ化対象手続で、1回の入力・送信によりシステム内で書類を作成し利用者が選択した行政機関へ送信されます。とん税納付申告や積荷目録提出などは、Sea-NACCS、港湾EDIいずれの端末からでも行うことができるワンストップサービス対象手続例です。シングルウィンドウ化に当っては入港届など送信タイミングの統一が行われます。また船舶情報などシステムに登録されているデータの活用により重複入力の回避と入力手間の軽減が実現されます。利用者はシングルウィンドウを利用する為には各システム全てへの利用者登録が必要となります。」
(2)財務省:Sea-NACCS関連手続
「Sea-NACCSから港湾関連手続を行う場合は、船舶情報の登録により重複入力を回避しつつ入出港届などのシングルウィンドウ対象業務や係留施設等使用申請などのワンストップサービス対象業務に活用できます。Sea-NACCS利用者の利便性の向上として、前述の重複入力回避、インターネット対応、乗組員・旅客氏名表登録人数拡大、港単位船舶運航情報が登録可能となり、現行自社システム利用者への配慮を行いました。電文の流れとして、例えば入港届を提出すると、処理結果通知、格納通知、関連省庁送信通知情報、回答情報等が送られます。」
(3)国土交通省:港湾EDIシステム
「船社・船舶代理店がインターネットを介して港湾EDIシステムにアクセスすることで港長、港湾管理者に対する手続を行うことができます。平成11年10月より試行的に運用開始しました。現在600事業所、月2万件の利用があります。入力方法は、インターネットによるWeb申請、申請者パックでのメール申請、ゲートウェイによる自社システム直結があります。シングルウィンドウ化後のWeb方式での手続の流れを例にとると、本船の過去データ利用、名簿のCSVファイルによるアップロード、入力データの再利用、確定情報の追加入力などの流れで手続が行われることになります。次に開発中の画面を紹介します。(Web申請者メニュー画面、入港届の入力画面、手続の状態確認画面、が紹介され、タブ方式、プルダウン入力など<使い易い画面>の説明が行われました。)Web申請のメリットとして、インターネットがあれば、どこからでも、いつでも申請が行う事ができます。」
(4)厚生労働省:検疫手続システム
「検疫法に基づく船舶入港時に必要なシングルウィンドウ化にともなう検疫手続システムの概要について説明します。船舶代理店等が行う検疫手続は、現行紙ベースのものが、シングルウィンドウ化後は、コンピュータ端末より可能となります。具体的には、事前に入港通報を受信すると検疫所より通知番号を返します。次に通知番号で検疫通報を送信すると、無線検疫検査結果通知書が返信されます。本船が到着後明告書(=入港届)を送信(同時に乗員名簿も送る)、検疫所より検疫済証が送信される流れになります。開発中の入港通報画面と、明告書(=入港届)を例示します。港湾EDIシステムに加えメール申請、NACCS端末からの申請も可能となっています。明告書に必要な船長サインは、システム化後、サイン登録により省略すべく法整備をおこなっているところです。」
(5)法務省:乗員上陸許可支援システム
「入管の仕事は、全ての人の出入国管理、外国人在留管理、外国人退去強制、難民認定、外国人登録があります。その中で全ての人の出入国管理に特例上陸許可というのがありますが、その内の乗員上陸許可(船舶のみ)をシステム化したものです。同システムは平成11年度より開発に着手し、現在最終段階に入っています。シングルウィンドウ化後は、共通の入出港届、乗客名簿等はSea-NACCSあるいは港湾EDIシステムより入管のサーバーに接続、入管独自の乗員上陸許可申請等はインターネットから入管サーバーに接続されて、入管ネットワーク経由各出張所の端末と連携していくシステム構成となっています。シングルウィンドウ化にあたっては漢字の使用は廃止します。またトラブル窓口としてサポートセンターも設置することとしました。臨時出入国港指定願書、行動範囲拡大許可申請書、乗員上陸許可者到着報告書、は電子化対象外としました。乗員上陸許可申請はインターネットで乗員システムにアクセスしてログインすることにより可能となります。送信状況、受信状況、送信履歴、受信履歴、印刷画面が用意されています。」
2.6.2 ADRに関する最近の動向について
朝岡委員長より「仲裁法制:例外つくらず制度生かせ」(朝日新聞、2002年12月5日)という投稿の紹介がありました。前回の委員会で、ADRに関する新聞記事により、「一方的仲裁合意ではなく消費者側には裁判を起こす権利も残しおくべきだ」という意見を紹介しました。今回の投稿によると、「迅速処理の観点から仲裁条項は必要で残すべきだ」との見解が述べられています。
早坂委員は、これに関連して次のような見解を表明されました。「見解全体としては賛成です。途中の記述で『仲裁では...法律にとらわれることなく、実情に即した和解案の提示や仲裁判断をする』とありますが、契約準拠法に基づいて仲裁を行うのが原則で、実態は仲裁にはいり調停(和解)になっていると思われる。仲裁と調停はルールが異なるが、法律にとらわれる仲裁とこれにとらわれない調停が混同されていると思われます。欧州では裁判が長引くため一般的に仲裁が好まれる傾向があります。契約書に『紛争が起きた場合は仲裁で解決する』との条項は、欧州では有効ですが、米国では無効となります。」
2.6.3 「EUのODRに関する政策と活動」について
朝岡委員長より「EUのODRに関する政策と活動」と題する資料に基づいて説明がありました。
(1)わが国の仲裁制度の現状
(2)司法制度の改革とADR
(3)わが国の仲裁機関の扱うADR
(4)わが国のADR推進の現状
(5)わが国におけるODRの実証実験
(6)EUのODRに関する政策と活動
2.6.4 「貿易金融EDI(ボレロ)の現状と導入・活用事例」について
服部委員より「貿易金融EDI(ボレロ)の現状と導入・活用事例」と題する資料に基づいて報告書の内容説明がありました。
(1)当初の計画(出資構成、サービス、ビジネスプラン)
(2)問題点と修正(問題点、対応、開発資金の調達と株主構成の変化)
(3)現状(アジアに重点、アジア商流のボレロ化モデル、グローバル展開等、米国テロ対策)
|