30歳でカナダに留学し、音楽療法を学ぶ。

　カナダ音楽療法協会公認音楽療法士（MTA）としてバンクーバー・セントポール病院で緩和ケア病棟,集中治療室を中心に勤務。

　その間、サイモンフレーザー大学においてカウンセリング心理学修士を取得。現在、GIM（Guided Imageng & Music）のアドバンストレーニングを受講。

　11年間のカナダ滞在から帰国し、2003年4月より北海道医療大学看護福祉科助教授として医療学生の音楽療法の啓蒙教育に携わる。

　

　2002年7月、ライフ・プランニング・センターの主催によって行われた国際ワークショップ＆フォーラムは「医療の中の音楽療法」と題し、カナダにおける音楽療法士教育を紹介するとともに、音楽療法の一つの領域であるターミナルケアに焦点を当てたものであった。本誌はそのときのワークショップに基づきながらカナダにおける実際の音楽療法について紹介し、音楽療法士の役割を明らかにしていくことを目的としてまとめたものである。

　

　カナダの音楽療法の歴史は、1950年代半ばにアメリカ、イギリスでそれぞれ訓練を受けて帰国した3人の女性音楽療法士、フラン・ハーマン、ノーマ・シャープ、そしてテレーゼ・ペイガンから始まる。その意味で、カナダの音楽療法は、アメリカの認識行動学を中心とする音楽療法^＊1と、ヨーロッパの深層心理分析的、または心理療法的音楽療法^＊2との統合的音楽療法ともいえる。彼女たちは、音楽療法に関心のあるカナダ全土の医療関係者に対して音楽療法の啓蒙的教育に奔走し、1970年までに300名に及ぶ医療関係者が音楽療法についてある一定の知識をもつことになった。そして1974年にオンタリオ州で初めての音楽療法学会を開き、そこでカナダ音楽療法協会が設立された。1976年には、カナダでの音楽療法学士教育プログラムが、キャロライン・ケニーと、ナンシーマ・クマスターの2人の音楽療法士を講師として、ブリティッシュコロンビア州のカピラノ大学で始まった。

　

＊1　音楽（リズム、メロディー、ハーモニー）と、それに対する人間の生理学的、情緒的反応行動の相互関係の研究を基にしたアメリカの認識行動学的な音楽療法

＊2　とくに音楽の象徴的かつ審美的な側面を心理分析に用いたヨーロッパの心理療法的な音楽療法

　

　現在、カナダでは以下の4つの大学において、音楽療法学士教育および修士課程の教育プログラムを提供している。なお、養成者数は各大学とも1学年おおよそ15〜20名である。

　

　すべての音楽療法士養成教育カリキュラムは、カナダ音楽療法協会によって一定の基準が設けられており、その意味ではすべてのプログラムには共通点があるが、地域の独自性や教授陣の哲学的背景、リサーチの傾向などによりユニークな面をもっていることも確かである。　

　以下では、カナダで初めての音楽療法士養成プログラムであるカピラノ大学における音楽療法学士教育カリキュラム（2年間4学期〈1年間に2学期開講〉＋インターンシップ〈1000時間〉）と、カナダ音楽療法協会公認制度について詳しく説明しよう。

　

　

1）入学資格（以下の科目を履修していなければならない）

　

　

　入学資格が「すでに大学の一般教養、そして音楽大学卒業に値する教育を受けている」ことなので、音楽療法士のために要する年数は2年間（4学期）で、学士課程の修了となる。

　そのほかに、次のような条件がある。

　

　

2）音楽療法学士課程プログラム内容

●1年1学期（計18単位）

　

　

●1年2学期（計19単位）

　

　

●2年3学期（計18単位）

　

　

●2年4学期（計18単位）

　すべての科目を修了した後、インターンシップの中でまとめたケーススタディやグループレポートに加え、自分自身の音楽療法哲学に関するエッセイと、音楽療法協会から出題されるいくつかの倫理的問題に関する具体的なケースについて自分なりに答えをまとめ、カナダ音楽療法協会に提出して匿名の5人の公認音楽療法士の審査官により基準に達していると認められれば、認定資格をもつことになる。カナダ音楽療法協会が認定した音楽療法士は,MTA（Music Therapist Accredited）の称号が与えられる。また、MTAの資格を維持するためには、5年ごとに専門知識と技術をどのように発展したかという体験を確認する更新審査がある。2002年夏現在、カナダ音楽療法協会が把握する公認音楽療法士は約200名である。