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3. 調査研究の計画概要
3.1 事業計画概要
 平成13年度実績を踏まえて、平成14年から平成15年度までの2年の期間において、「試験方法及び判定基準調査研究委員会(仮称、危険性評価部会)」を設立、開催する。この部会において、試験マニュアル記載の「自己反応性物質及び有機過酸化物(以下、SRS・OP)の輸送要件判定試験」フローチャートにおいて実施される、爆轟伝播性・爆燃伝播性・密閉下加熱・爆発威力・自己加速分解性による危険性を適正に評価するスクリーニング試験方法開発のための調査研究及び火薬類危険等級分類に規定される煙火についての簡易試験方法の開発、及び危険等級判定基準の見直し案の策定を行う。
 当該テーマのスクリーニング評価法(予測手法)として、昨年度は、MCPVT(改良型密閉式圧力容器試験)装置の導入、及び操作の習熟のための標準物質による試行試験を行った。今年度は装置の不都合点の改良、測定条件の検討及び各種物質の試験データ収集を行い国連ラウンドロビンに対応可能な体制を整える。
 また、SRS・OPフローチャートのスクリーニング化のテーマにおいては、 爆燃伝播性及び爆発威力について調査するため、C80熱量計及び小型爆燃試験装置により既知物質の測定を行い既存RADEX熱量計等による結果との検討を行った。今年度はC80熱量計の測定条件及び機器の特性把握を行い、既存国連勧告例示試験との整合性を検討することにより当該試験のスクリーニング化の可能性を調査研究する。
 さらに、前記内容及び関連業界からの知見・データを集約し、DSC試験(示査走査熱量測定試験)結果及び推定ガス発生量から自己反応性物質のスクリーニング化の体系的評価システムを確立する。
 今年度新規テーマである「煙火の分類及び試験方法の研究」に関しては、煙火の殉爆メカニズムの研究、包装方法の改良、簡易試験方法の開発、及び経験的知見による判定も加味し、危険等級分類基準の見直しを検討する。
3.2 事業内容
3.2.1 調査研究及び委託研究 
3.2.1.1 MCPVT 圧力容器試験の研究 2
 :(社)日本海事検定協会理化学分析センター及び株式会社カヤテック
 国連勧告において自己反応性物質等に対し規定されている圧力容器試験は、物質の外部からの加熱による分解の激しさを再現性よく調べるためのものである。MCPVTは、密閉下での電気加熱を用いた均一加熱による物質の分解に伴う圧力上昇挙動を計測することにより危険性を評価する試験である。従来の各種試験は部分加熱法であり試験結果の再現性に問題があった。
 化学品の分類基準の統一を目指すためには、物質本来の危険性を評価し、高い再現性を持つMCPVTは重要なテーマである。対比する試験方法としてはバーナー加熱のオランダ式及びアメリカ式圧力容器試験、ケーネン試験がある。
 現在、国連においては、この日本提案のオリフィス非使用型MCPVTについてのラウンドロビン試験が予定されているが、日本国内においては試行機器を消防研究所が保持している程度であり試験の円滑な実施が危ぶまれていた。
 昨年度2台分の試験装置及び圧力容器を導入し試行を開始したが、装置としての完成度が低く、装置のシステム化と試行が事業の中心となった。
 今年度は、昨年度実施した基準物質のデータによる装置測定条件のとりまとめを行い、各種物質に対応できる試験実施標準プログラムを作成し、試験装置の改良を行い、当該試験の実施体制を整える。また、日本提案の優位性をデータで示すため、試験結果に影響を及ぼす要因の検討及び各種物質のクロスデータ収集を行い、従来試験データとの相関の検討を行い、標準試験条件に基づく判定基準の策定をも検討し、国連ラウンドロビン試験に対応できる体制を作りあげる。
3.2.1.2 自己反応性物質及び有機過酸化物の国連勧告試験方法及び判定基準のスクリーニング化に関する研究(2)
 :東京大学大学院新領域創成科学研究科
 自己反応性物質及び有機過酸化物の試験方法及び判定基準のうち、爆轟伝 播性、爆燃伝播性、爆発威力に注目した。これらの試験方法は、いずれも規模が大きく、試験自体の危険性が懸念されるのみならず、試験場の確保も難しく、省エネルギー、省資源、鉛排出による環境問題等の観点からも我が国における実施は必ずしも現実的ではない。この問題を解決するために、必要試料量が少なく、安全、簡便、かつ従来の標準試験法による評価結果を確実に再現する簡易的な試験手法、あるいは計算による予測手法の開発を目指し、 以下のイ−ハを課題とした。
 
イ 国内では、爆轟伝播性のスクリーニング試験として示差走査熱量測定(DSC)試験が一般的に行われている。この試験方法について、国連勧告試験方法のスクリーニング試験方法としての国際的認知を得るために、理論的化学計算による爆発熱の推定値と併用することにより、精度の高いスクリーニング手法として開発することを目指す。
ロ 爆燃伝播性試験方法について、小型の密閉系爆燃試験装置を開発し、数グラム規模で、より正確な爆燃特性を計測する手法を開発し、時間/圧力試験、爆燃試験のスクリーニング試験方法として開発する。
ハ 爆発威力試験方法について、理論的化学計算及び熱力学計算による、反応時あるいは分解時に発生する熱量の総量及び発生速度の推算結果と、C80等の圧力・熱量測定装置及び小型爆燃性試験装置による時間/圧力曲線から爆発威力を推定するスクリーニング手法を確立する。
 昨年度は、主として爆燃伝播性及び爆発威力のスクリーニング化の検討を行った。その結果、爆燃伝播性を評価する試験方法の一つである、時間/圧力試験及び、爆発威力の評価試験については、それぞれ、小型爆燃試験による爆燃特性(圧力発生挙動)評価、及びC80熱量測定装置による、熱及び圧力発生挙動の同時評価によるスクリーニング化の可能性が示された。
 今年度は、爆燃伝播性のもう一つの評価法である、爆燃試験と爆轟伝播性の評価法に関するスクリーニング化を検討する。具体的には、爆轟伝播性については熱量計による熱発生挙動評価と化学計算による爆発熱の推定値との併用によるスクリーニング化を、また、爆燃試験については、小型爆燃性試験を線燃焼速度測定に適用してスクリーニング化を行う。
3.2.1.3 自己反応性物質及び有機過酸化物の分類フローチャートのスクリーニング化
 :(社)日本海事検定協会理化学分析センター
 前記2テーマと密接な相関を持つテーマである。国連勧告に基づく危険性評価基準としてICAOにおいては、自己反応性物質及び有機過酸化物質(以下、SRS・OP)がリストに掲載されており、危険度の低いタイプC以下の危険性と評価されれば全てのデータがなくとも輸送が許可される。
 但し、物質を対象としたスクリーニング試験方法は確立されていないので SRS・OPの危険性を評価するため、その危険性、現状の試験方法、安全輸送のための技術基準を参考に調査研究を行い、SRS・OPのスクリーニング手法を確立し判定基準を策定する。
 主たる試験は示査走査熱量測定(DSC試験)による分解熱の測定となるが、有機過酸化物においては過酸化水素及び活性酸素の含有量に基づく理論評価等も加味した危険度タイプ分類の基準を策定する。調査研究課題を下記する。
 
イ SRS・OPの内で国連番号が存在する物質についてのDSC試験データを収集し、発熱量・分解速度などと分類タイプとの相関を調べると共に当該試験の標準試験方法をも定める。
ロ イの試験に平行して、選択した物質のガス発生量の理論計算及び知見に基づくデータの収集を行い、タイプ分類の基準策定に供する。
3.2.1.4 煙火の分類及び試験方法の研究
 :(社)日本煙火協会
 8号玉以下の煙火(花火)は危険等級1.3隔離区分Gで輸送されているが、 オランダでの事故の影響で、危険等級の国際的な見直しが提言された
 現行の煙火に対する国連勧告試験方法である、単一包装試験、積み重ね試験及び外部火災試験はその実施に多大な困難を伴う。よって、その定める判定基準に整合し、同等の判定結果の得られる試験方法及び判定基準を策定し煙火の従前通りの流通の確保を目的とし、以下の調査研究を行う。
 
イ 当該試験の実施にあたっては、広大な試験場、高額な試験費用、煙火には適当でない判定基準など、不都合点が多い。この問題点に対処するため、国連勧告試験方法に準拠し、かつ、前記不都合点を改善した簡易試験方法を開発し、容易な煙火危険区分の判定基準を策定する
ロ 大量爆発のメカニズムを究明するため、代表的な種類及びサイズの煙火について、殉爆の有無、煙火の変形などについて圧力計測のデータをもとに調査し、煙火の殉爆メカニズムを解明し、その結果から、包装材料・包装方法など殉爆防止の対策について研究する。
ハ 上記結果を考察し、煙火の種類、成分組成、薬量、サイズ、構造から非試験により、経験的知見に基づいて危険性を評価するデフォルト分類法についても、検討を進める。
 
 上記調査研究項目及び委託研究項目は独立したものであり、テーマ毎に後述する。







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