まえがき
本報告書は、国土交通省海事局の指導のもとに、平成14年度に日本財団助成事業として行われた「物質の危険性評価のための試験方法及び判定基準に関する調査研究」(副題:発火・爆発性物質の危険性評価試験方法のスクリーニング化に関する調査研究)の成果を、当該調査研究委員会である海上貨物運送調査会・危険性評価部会において報告書として取りまとめたものである。
海上貨物運送調査会・危険性評価部会
−敬称略、五十音順−
部会長 |
田村昌三 |
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 |
委員 |
新井充 |
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 |
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飯塚義明 |
三菱化学株式会社 科学技術研究センター |
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岩倉正剛 |
社団法人 全国火薬類保安協会 |
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遠藤新治郎 |
日本無機薬品協会 |
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大石淳三 |
株式会社 カヤテック厚狭事業所 |
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梶田浩史 |
日本油脂株式会社 化成品研究所 |
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古積 博 |
独立行政法人 消防研究所 |
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鈴木勝 |
社団法人 日本海事検定協会理化学分析センター |
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田中則章 |
住友化学工業株式会社 生産技術センター |
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藤井昭彦 |
日本カーリット株式会社 危険性評価試験所 |
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二股英雄 |
社団法人 日本煙火協会 |
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松永猛裕 |
独立行政法人 産業技術総合研究所 |
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八十川欣勇 |
国連危険物輸送専門家委員会 委員 |
オブザーバー |
田淵一浩 |
国土交通省 海事局検査測度課 |
1. 調査研究の目的
船舶により運送される物質の危険性評価について、危険物船舶運送及び貯蔵規則(以下「危規則」)は、運送前に荷送人が危規則により定められた試験方法及び判定基準により分類(危険性の種類)及び容器等級(危険性の大小)等を決定することを要求している。
この「試験方法及び判定基準」は、国際海上危険物規程(IMDG Code)が引用している国連危険物輸送専門家委員会が策定した「危険物輸送に関する勧告(以下、国連勧告)」に定められた試験方法及び判定基準に基づいている。
当協会では、平成10年度より3年間にわたり、日本財団助成事業として、国連勧告に新たに導入された新試験方法の基本的調査研究を行い、その成果を平成12年度に冊子として公表している。
平成13年度からの調査研究対象である発火・爆発性危険物である自己反応性物質及び有機過酸化物は、ファインケミカルとして我が国化学工業の得意分野の一つであり、必然的に新しく開発される物質も多く、それら未知物質に対する輸送上の危険性評価の必要性も高くなっている。国連勧告におけるこれら物質の危険性評価方法としては、火薬類と同様、複雑な手順並びに試験方法及び判定基準が定められており、我が国においては試験実施場所や設備の点からその実施上の多くの問題点を抱えている。
このような状況のなか、発火・爆発性危険物である自己反応性物質及び有機過酸化物の危険性評価手法について、平成14年度は、MCPVT圧力容器試験関係の継続調査研究を行うと共に新テーマとして「煙火(花火)の分類及び試験方法の検討」を行う。 煙火についてはオランダでの事故以来、危険等級の見なおしが急務とされており、簡易試験方法及び経験的知見による等級分類方法の改定が緊急提言されていた。
国連勧告が要求する危険性評価手法と同等の安全性が担保され、我が国に適応した評価手法について、簡便試験方法の開発を行うと共に、スクリーニング化に関する調査研究をとりまとめ、その評価手法を策定、公表することは重要であり、最終的には自己反応性物質及び有機過酸化物の分類判定スキーム全体及び火薬類のうち煙火に適用される試験及び危険等級分類基準に簡易試験方法及びスクリ−ニング評価手法を導入、簡便化し、その成果を国連危険物輸送専門家小委員会に日本案として提案することを目的とする。
さらに、この危険物に対する評価手法を利用し、輸送のみならず、製造、貯蔵、消費、及び廃棄にいたる全ライフサイクルに対する適切な危険性評価手法を確立することによりグローバルハーモニゼ−ションのために役立てることも目標とした。
2. 事業計画実施概要
2.1 委員会の開催
海上貨物運送調査会の下に試験方法・判定基準調査研究委員会として、「危険性評価部会」を継続設置し、国連勧告に規定されている試験方法及び判定基準の調査研究、及び委託研究内容に対する審議及び承認、並びにその報告書の作成を行った。
委員会の開催状況等は次のとおりである。
(1)委員構成:学識経験者、関係官庁及び業界関係者、合計15名。
(2)部会開催回数:年間4回(平成14年度)。
(1)第1回会合:平成14年04月23日;部会の位置付け・運営方針・目的等の確認及び各調査研究テーマの紹介、調査研究課題の審議・内容の検討及び承認を行った。
(2)第2回会合:平成14年09月19日;各調査研究テーマ進捗状況の報告及び今後の検討課題の整理・検討を行った。
(3)第3回会合:平成14年12月18日;本年度調査研究実施報告及び追加試験実施についての審議を行った。
(4)第4回会合:平成15年01月20日;調査研究課題5テーマに対する年度報告書の審議・まとめ・及び承認を行った。
2.2 調査研究及び委託研究の実施
:物質の危険性評価のための試験方法及び判定基準に関する調査研究(2)
(副題:発火・爆発性物質の危険性評価試験方法のスクリーニング化に関する調査研究)
2.2.1 調査研究の実施
(1)「MCPVT圧力容器試験の研究 2.1」については、当協会理化学分析センターにおいて実施した。
(2)「自己反応性物質及び有機過酸化物の分類フローチャートのスクリーニング化」については、当協会理化学分析センターにおいて実施した。
2.2.2 委託研究の実施
(1)「自己反応性物質及び有機過酸化物の国連勧告試験方法及び判定基準のスクリーニング化に関する研究(2)」については、試験の特殊性及び当該テーマに知見豊富な研究機関である、東京大学大学院新領域創成科学研究科 新井助教授と当会の間で委託契約を結び、委託研究として実施した。
(2)「MCPVT圧力容器試験の研究 2.2」については、圧力試験容器部会委員でもあり当該試験について経験豊富な危険性評価試験機関である株式会社カヤテックと当会の間で委託契約を結び、委託研究として実施した。
(3)「煙火の分類及び試験方法の研究」については、試験の特殊性及び当該テーマに知見豊富な団体である、社団法人日本煙火協会と当会の間で委託契約を結び、委託研究として実施した。
2.3 報告書の作成と成果の公表
報告書を70部作成し、関係先に配布するとともに一般に公表し、機会あるごとに利用者、関係者に周知徹底する。
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