流量調査の目的
空堀川は、上流の武蔵村山・東大和・東村山・清瀬の四市を縦断して流れ、清瀬市内で柳瀬川に合流する全長約14kmの一級河川です。
この川の流量調査は、四市の環境課が「空堀川浄化対策会」をつくり、昭和51年から定期的に行っていますが、調査の目的は公害としての水質にありますので、季節変動や河川環境を維持するうえでの適正流量の視点には欠けたものであると思います。
平成11年から空堀川の流れが途中で途絶えてしまうという断流現象が起こってきました。この現象は年を追うごとにしばしば発生し、13年には夏場を中心に1か月にもわたり川から水が消えてしまいました。14年はさらに断流の回数が増え、6、8、10、12月も水の涸れた川になっておりました。
原因追求もさることながら、この空堀川が柳瀬川の合流点まで流れ着くまでに、どの程度の流量が必要なのか、また、川として正常な機能を維持し、生きものも絶えることなく普通の川として存在していけるのか、それらを調査の目的としました。
単に流量を測るといっても簡単ではありません。まず川幅と深さから流水の断面積を測り、ここを通過する流れの速度、つまり流速を測って、さきの断面積に流速を掛けて流量を計算しなければなりません。
○実際の測定と留意事項
通常、流量を測定する場合は水深の6割の深さのところを測定するのが良いとされています。これを1点代表流速といい、2割と8割部分の深さの流速を測定し、平均をとって行う方法を2点代表流速というそうです。
空堀川の場合は、水深が浅く場所を選ばなければ流速計を差し込むことも出来ません。
このような状態の中で右岸、左岸、中央部とも流速計を使用できる場所を選んで測定を行いました。
大きな河川では、5m、10m、20mと河川の幅を区切って1点法、2点法と細かく測定するそうですが、空堀川には当てはめることは出来ません。
河川形態と流速の関係
○乱流と整流
自然の川は流れが一様ではなく流速も刻々と変わります。自然の川ではすべてが乱流であり整流はありません。
図は、真っ直ぐな水路に障害物が置かれた時の流速の分布図です。水とほぼ同じ比重の物質を流して側面から観察した結果です。川底付近では流速は0に近く、障害物の後ろでは逆方向の流れが生じます。
障害物付近での流速の分布
難しい流速の測り方
東村山市立第三中学校の自然科学部の生徒たちと川の中に入って、流量を調査した結果、“流速計の扱い方が難しい”“機械での測り方は良く分からない”等の生徒からの意見で、二度目には流速の測り方に工夫をしました。同じ場所から二つの浮子(うき)を同時に流して観察してみよう、そして流速計と浮子と両方で流速を測ってみよう、そうすれば流れの状態がわかることに気づきました。
果たして浮子を流して見ると流れが良くわかりました。浮子は何回流しても絶対に同じ流路を通らない、早く流れるものと、道草を食って遅れるものが出る。これはどういうことなのか?一見、どこも変わりはないように見えても、一定の流れの中に脈打つような瞬時の強弱がある。これは川自体の傾斜と川底の変化に由来するものではないだろうか?と考えました。
○「浮子」を使った測定方法
測定する川を一定の長さに区切ります。この区間にロープを張り、場所によって1m、5mと適宜に選定したところに浮子を流します。その浮子が目標点に達した時間を計り、60秒で割ったものが1秒間に流れる流速となります。流速V、距離L、時間Tとすると、
 で求めます。
例えば、1mの間を10秒かかって浮子が流れた場合、100cm÷10=10cmとなり、1秒間に10cmの流速になります。20秒かかったら5cm、5秒で流れたら100cm÷5=20cmです。また、5mの間で50秒かかって浮子が流れたときの流速は、500cm÷50=10cmになります。
○流速計を使った測定方法
流速計を使って水の流れを測って見ると、これもまた同じように流遠はそのつど異なります。流速計は水の流れの速度を流速計の先端についているプロペラが流速に応じて回転し、プロペラの両側についている発光素子と受光素子との間を通りぬける電気から回転数を測るものです。前回は緑藻が多く、細かくちぎれたものがプロペラの回転軸にからみ、常に数値が違って出てきました。このため、箒で川の中を掃除して藻類が絡まないときの平均をとりました。
しかし、毎回の計測結果が異なるのは当然だったのです。上流の河床の状態、川の蛇行、計測場所の川底によって流れは一様ではなかったのです。こんな苦労を重ねながら、次のような方法で測定を繰り返しました。
川の幅を測り、両サイドにロープを張って、三等分した中の中心から浮子を流し、速度をストップ・ウオッチで測りました。二個の浮子を同じ箇所から同時に流しても同じようには流れていかないのです。1mで1秒も違った結果が出る。何度やっても結果は同じでした。石にぶつかり、僅かな淀みで道草をして、時にはすばやく流れ、時にはそのまま留まってしまいます。流速計でも5cmから10cmも測るそのつど数値が異なっていました。
どういう事か考えて見ました。
これは上部の石、川底の石、起伏の状態等で水の流れは変化していくということが分かりました。川の流れはすべて乱流であり、樋の中に水を流したような整流ではないということです。それぞれ、5回の平均を比べてみると浮子を流した平均値と、流速計の平均値は一致し、浮子でも正確に測れることがわかりました。
流速計の使い方
支援を受けて購入した流速計 CR−7型(有限会社 コスモ理研 製)
計測方法
(1) |
まず、ブローブはカバー・ストッパー(4)を緩め、カバー(3)を防水チップ(1)側にずらしてから流れに挿入する。回転羽根は岩などにぶつけないように注意する。 |
(2) |
流れに対して受光素子(6)(黒色のポッチ)側を上流にして垂直に挿入する。 |
(3) |
本体の電源スイッチ(8)を60−20000r.p.mの位置に移動させ、測定はこの範囲で行う。 |
(4) |
MEAS.とHOLDの選択スイッチ(9)はMEAS.側にする。
(このとき回転数は、デジタルメーター(10)にビー音とともに表示される。) |
(5) |
値が安定したら速やかにスイッチ(9)をHOLD側にして、その値を読みとる。 |
(6) |
測定が終了したら電源スイッチ(8)をOFFにする。
((5)、(6)の操作は電池(内蔵)の消耗を防ぐため。) |
(7) |
流速は測定した回転数(r.p.m)から校正表によって求める(cm/sec)。 |
例えば、流速計の表示が4000と表示された場合、校正表(次頁表)で求めると62から63cm/秒程度となります。これを計算式に当てはめると、
流速=0.0145×4000+5.07で63.07cm/秒と求められます。
○回転数(r.p.m)から流速の求め方
校正表で交差する値を求め、下表から流速を出す。また、流速係数から流速を計算する。
流速y=0.0145x+5.07
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