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報告
CIMAC WG6“Heavy Fuel”No.48
参加報告書*
宮野春雄**
 
 
 マリンエンジニアリング技術者の海外派遣事業の一環として、第48回CIMAC WG“Heavy Fuel”会議[Shell Centre、LONDON、UK、2002年10月2日]に出席したので会議内容を報告する。日本からは小職に加え、若月 祐之氏(MHI Europe)がハンブルグから出席した。
 
1. 日時等
1) 日時 10月2日9:00〜15:00
2) 場所 Shell Centre、LONDON、UK
3) 参加者 19名
 
2. 概要
 委員長(Mr. K. Aabo氏)が欠席のため、事務局のW. Fabriek氏が議長を務め、議事を進行した。新メンバーの紹介の後、前半は「CIMAC Vol.11 Recommendations regarding Fuel Requirements for Diesel Engines, 1990(以下Vol.11 Fuel Requirements)」の修正点等の確認を行った。
 後半は「CIMAC Vol.9 Recommendations concerning the Design of Heavy Fuel Treatment Plants for Diesel Engines(以下Vol.9 Fuel Treatment)」の改訂に関する打合せ、および小グループに分かれて、分科会を開催した。
 
3. 議事
 3.1 議事録確認 前回委員会の議事録を確認した。
 
 3.2 Vol.11 Fuel Requirementsの改定 次の内容が報告された。今回の委員会で改定作業はほぼ終了した。
 (1)H2Sガスヘの注意喚起、硫黄分規制値見直し
 前回委員会(WG“HF”No.47)で、燃料油中のH2Sガスヘの注意喚起コメントの作成およびIMO MARPOLの硫黄分調査結果の発表を待って、硫黄分規制値の見直しを行うことが決定された。事務局は、Vol.11 Fuel Requirementsの改定作業はほぼ終了しているので、これに手を加えることは避けたいとの意向を示し、関係のある、あるいは興味を持っているメンバーを選定してCIMAC WG “Heavy Fuel”委員会として報告書を作成したらどうかとの提案があった。メンバーや内容については次回委員会で検討することとし、コメントがある委員は次回委員会までに提出することとなった。
 (2)廃油の検定方法
 廃油混入指標であるCa、Zn、Pの分析方法についてIP(Institute of Petroleum:英国石油学会)と協議していたが、これが決定したと議長より報告があった。試験法の発行は2003年の1月〜2月になる。
 補足:Vol.11 Fuel Requirements改正案中には、廃油混入の指標であるCa、Zn、Pの規制値が規定されているが、残渣燃料油中のこれらの成分の公的分析方法が存在しなかった。このためCIMAC事務局は分析法を決定すべく、IPと協議を行っていた。日本はこれまでの舶用重油の実態調査結果から、この規制値が高すぎるため見直すことを提案していたが、公的分析法が存在しないとの理由で検討が先送りされていた。分析法が決定されたことによりCa、Zn、P規制値の見直しが実施されることになる。
 (3)Ca、Zn、Pの記載方法
 VoL.11 Fuel Requirements中の表1および2のCa、Zn、Pの記載方法が「Ca≦30 or Zn≦15 or P≦15の場合は、廃油が混入していないとみなす」、に変更された。
 
写真1 会議の休憩時間に撮影
 
 
 前回委員会では、「Ca>30 and Zn>15 and P>15の場合は、廃油が混入しているとみなす」との記載方法とすることが決定されたが、Vol.11 Fuel Requirementsの性格上、使用可能な性状を記載すべきとの意見があり再検討が行われたものである。
 (4)今後の予定
 次回委員会までに、改定案をCIMACホームページに掲載する。少なくとも次々回までには確定させる。
 
 3.3 Vol.9 Fuel Treatmentの改定 1987年に作成された、Vol.9 Fuel Treatmentの改定作業が前回委員会から開始されている。全体を下記の9章に分け、各章毎にサブグループを組織してドラフトの作成を行い、その後全体の検討作業に入り、サブグループでは対応できなかった問題点を解決する。
 (1)サブグループミーティング
 いくつかのサブグループに分けてドラフトの検討を行った。
・グループおよび解説内容
1 Definition of the Fuel Treatment System
2 Fuel Properties
3+4 Layout of the Total Treatment and System, Tanks
5 Fuel Cleaning System
6 Fuel Conditioning System
7 Sludge Treatment System
8 Fuel Treatment(additives)
9 Sampling
 
 
写真2 Westminster橋から臨んだLondon eye(別名Millennium Wheel:2000年を記念して建造された高さ130mの観覧車)とLondon County Hall(旧ロンドン市庁舎で現在は水族館、ダリ美術館、ホテル等に使用されている:手前の低い建物)および今回の会議場であるShell Centre(奥の高い建物)。
ちなみに、宿泊したホテルはLondon County Hallと同じ建物内にある。話には聞いていたが、ロンドンのホテル宿泊料が高いのには驚いた。
 
 
 若月氏は「Fuel Cleaning System, Fuel Conditioning System」に参加し、宮野は、「Fuel Treatment(additives)」に参加してドラフトの検討を行った。
 (2)日本提案
 サブグループミーティングに先立ち、Vol.9 Fuel Treatmentに関する日本提案を説明した。本提案はCIMAC WG“HF”の国内対応委員会である「CIMAC WG“HF”および“EEC”合同国内対応委員会」で作成したもので、主な内容は次のとおりである。
1)燃料前処理システムの目的を明確にすること。
2)エンジン入口の燃料油推奨性状を明確にすること。
3)前処理装置では対応不可能な燃料油性状項目の取扱いを明記すること。
4)遠心分離機およびフィルタの能力表示方法と共通の試験法を確立すること。
 (3)今後の予定
 4か月以内にサブミーティングを個別に開催し、ドラフトの修正を行う。サブグループでの作業が終了後、これをWGメンバーに配布しWGでの検討に入る。WGでは、サブグループで解決できなかった問題やFCC触媒残渣の検討を実施する。
 
4. 次回予定
 次回No.49は、2003年4月または5月にHuston(米)で開催予定であるが詳細は未定である。
 
5. 雑感
 本WGは、舶用燃料油を主として検討する委員会であるが、IMO MARPOL73/78付属書VIによるNOxおよびSOxの排出規制の開始が迫っていることや、新たに、GHG(Green House Gases)の検討が開始されたことを考慮すれば、燃料油と環境保全との関係は今後ますます強まってゆくものと考えられる。
 これまでのCIMAC WG“Heavy Fuel”には、サロン的な雰囲気があるが、強制力を持たないこのWGの存在を今後もアピールしょうと思えば、より責任を持った対応が求められるのではないかと考える。CIMAC合同国内対応委員会においても、委員各位のデータを活用させて頂き、WGを有効に利用したいと考えている。
 
6. 謝辞
 本事業は、日本財団の補助金を受けて実施されました。文末ではありますが日本財団に深く感謝の意を表します。また、今回の会議出席に際して、お骨折りいただいた日本マリンエンジニアリング学会および、CIMACの国内窓口である日本内燃機関連合会事務局の方々、並びにハンブルグからご参加くださった若月祐之氏に厚くお礼申し上げます。
 
*原稿受付 平成15年1月20日
**正会員 日本油化工業株式会社(戸塚区上矢部町2418−3)







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