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2)ネットワークシステムの特徴
 海底ケーブルを基幹システムに採用することで、本ネットワークシステムは以下のような特徴を持つ。
(1)海底ケーブルの広帯域伝送路を利用するため、大量の観測データをリアルタイムで伝送することが可能となる。
(2)海底ケーブルから観測機器に電力を供給することが可能であるため、長期間の連続観測が可能となる。
(3)海底ケーブルに接続した複数の観測機器を同期させ、広範囲での同時観測が可能となる。
(4)双方向性を有するため、陸上から観測機器のパラメータを調整することや機械装置類を遠隔操作することが可能となる。
(5)通信用海底ケーブルに利用されている信頼性の高い技術をベースとしているため、長期間(20年程度)の使用に耐えうる。
(6)複数の陸上局や海底中継器を設けてネットワーク化し、さらに人工衛星等を組み合わせることで、システムの一部に障害が発生しても、システム全体の機能を損なわずに運用することが可能となる。
 
3)システム構成
(1)陸上局
 海底ケーブルの陸揚施設、およびAISシステムの陸上局等がこれにあたるが、各施設は陸上の光通信網を利用してネットワーク化する。また、海底ケーブルに接続されていないモニタリングシステムのデータを、人工衛星経由で収集するための衛星通信機能を持たせる。
(2)海底ケーブル
 海底ケーブルの最も重要な役割はデータの伝送であるが、それ以外に観測装置への電力供給、さらにはケーブルそのものをセンサーとして活用することも考えられる。ケーブルとしては、広帯域のデータ伝送に対応可能な光ケーブルを利用する。
 ケーブルのルートについては、ARENA計画で想定されているルートをもとに、プレート境界域や大陸棚斜面等に沿ってケーブルを敷設することを想定し、日本海南部や東シナ海などにまで拡張した図3−5に示すルートが考えられる。
 
 
図3−5 想定される海底ケーブルのルート
 
 
(3)海底ステーション
 海底ケーブルに一定の間隔(ARENA計画では50km程度)で接続される海底ステーションには、以下のような機能を持たせることが考えられる。
○海底ケーブルの信号を増幅する中継器・分岐装置
○ブイシステム等他系統の観測システムを接続するジャンクションボックス
○各種観測機器を装備した海底総合観測プラットフォーム
○トランスポンダーを装備した海中ナビゲーションシステム
○ハイドロフォンアレイによるクジラ追跡システムおよび船舶監視
○AUVのデータ回収・電力供給を行なうドッキングステーションなど
(4)人工衛星
 情報通信基盤として機能する人工衛星については、当面は既存の通信衛星を利用することが想定されるが、将来においては安価な専用衛星の導入を検討することも必要である。
 一方、観測衛星については、平成14年12月に打ち上げられたばかりのADEOS-IIを今後活用していくことが想定されるが、平成8年に打ち上げられたADEOSがトラブルによりほとんど機能しなかったことを考慮し、単機能で数年の使用を想定した安価な観測衛星を開発し、順次海洋観測に投入することも検討する。







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