伊藤憲一(議長) ありがとうございました。
それでは、吉田さん、お願いいたします。
吉田春樹 既に結論が出ているようなところもありますので、手短に申し上げたいと思いますが、私もやはりEUの地域主義と、これからアジアで行おうとしている、私たちのこの地域の統合ということは、同じ次元で考える必要はないのではないか。時代も違えば背景も違う。時代の変化のテンポというものも読み込まなければいけない。こういうふうに思っておりますので、必ずしも日中永久平和と日米同盟がバッティングするとは思っておりません。これを乗り越えていくのが私たちの知恵ではないかと思っております。
また、そのような意味で、確かに日本の社会改革、これを私どもは構造改革という非常に広い概念でつかまえていますが、これを行わないと、とてもそんな東アジアの共同体統合は進まないのではないかというご意見は、私は100%賛成でございます。しかし、理論としては賛成であっても、現実問題としては、そちらを先にしないと東アジアの共同体は無理だよということになりますと、大変苦しいのでして、実は同時に進めていかなければならない。これは大変なことでございまして、日本人の責任といいますか、やっていかなければならないことですけれども、国内に向かっては改革をもっともっと強く主張すると同時に、この場、東アジアの皆さん方、あるいはさらに開かれてアジアの方、非アジアの方も含めて、我々はこういうことをしていくんだと、やっていきましょうという呼びかけは同時並行的に進めていかなければいけないのではないかと思っております。
伊藤憲一(議長) どうもありがとうございました。
黒田さん、お願いいたします。
黒田 眞 最初の白石先生のお話を伺っておりまして、最後のところで少し経済連携と制度的なところが弱いかなと思っておりましたが、その後の補足で全く軽視しているものではないというお話がありましたので、ぜひ、自発的にでき上がった地域下で、やはり国がいろいろ邪魔していることがあるわけですから、それを取り除くためのいろいろな工夫がある種の経済統合だということは大いに考えていただきたいと思います。
次に、今の吉田さんのお話にもあったんですけれども、日本が農業とか労働とか言い出すと、みんな難しいなという感じを持つわけですが、これらに手を触れないで果たして経済連携の強化はできるのだろうかという点については、まさにそのとおりですが、逆にもう少し議論を進めて、日本が現在抱えている閉塞感というか、閉塞状況から脱却するためにはそのぐらいの思い切った措置をとるべきだということは、日本ではあまり受けないのかもしれませんけれども、そのぐらいのリーダーシップというか、政策提言があっていいのではないかと思います。
中国がWTOに入ると言ったとき、だれしも「ほんとかね」と思ったんですが、しかし、それを近代化、開放化の突破口にしようという、大変なリーダーシップが発揮されたと、私は評価しているんです。
3番目に、日・米・中の三角関係のところで、張さんが大変おもしろいことをいろいろ言われて、私は一生懸命ノートしました。まず日米同盟を壊す必要はないぞと言われました。それは日本としての議論のスタートです。次に中国がアセアンと話を進めようとしているのは何故かという答えとして、やりやすいところからやるんですよという。これは非常に実際的な議論であって、日本がアセアンといろいろな話を始める、FTAから経済連携から。中国も進める。それを競争的関係と見るのか、それぞれ意味があって、白石先生が言われるように、中国がアセアンと連携が強化されれば、アセアンにある日本企業にも裨益するだろうとおっしゃいましたけれども、それぞれがやりやすいところからやって、はっと気がつくと、日中間には何か障害があるけれども、日本とアセアン、中国とアセアンはすーすー抜けているというのは大変おもしろい状況かもしれないので、そのときには日中の話し合いが容易になるかもしれない。
それを逆に日中がよく話をしながら、組んでアセアンと何かやりましょうということになると、大変時間もかかるし、米国大使館のミカラックさんがサスピシャスになって、何を日中が一生懸命組んでやろうとしているんだというように見られるかもしれないので、私は張さんのお話を伺っていて、日本がやりやすいところ、中国がやりやすいところをやりながら、あんまり大きな話にならないように事実上進めるというのも、もしかすると非常に実際的なアプローチかなという感想を持ちました。
ありがとうございました。
伊藤憲一(議長) アメリカの問題が何回か出てくるのですが、アメリカ大使館からミカラックさんが来ておられますので。
マイケル・ミカラック(在日アメリカ合衆国大使館経済公使参事官) ありがとうございます。
第1に、ピロムさんのコメントに関して申し上げたいのですが、世界で第2の経済を有する国で、しかも太平洋において軍事力が第2で、G8の国であり、またPKOを世界的に展開している国はミドル・パワーからほど遠いということで同じ意見であります。私自身がいろいろな大使の中でミドル・パワーだと思いますが、日本がミドル・パワーだとは決して見ておりません。
張先生がおっしゃったことに非常に勇気付けられました。すなわち、東アジアの統合が今後続くと。そしてその際に米国を必ずしもメンバーとして取り込む必要がないということ。これはもちろん東アジア側が決めることだと思います。ただ、私が勇気づけられたのは何かと申しますと、張先生が仰ったように、これはオープンのプロセスであって、また、協議は米国のみならず、すべてのこの地域の国々と行うべきである。メンバーでないモンゴルとか、その他の国、オーストラリアとか、そういったところとも協議は必要だということを仰った点であります。将来は何らかの形でこういった国も関連してくるでしょう。
私どものゼーリックUSTR大使は、何らかの統合が行われるとより移住化が進み、そして全般的なグローバル経済の進展につながる。そうすると効率性も上がり、また、関与するすべての人々の生活の向上に繋がるということを言っております。私もそうだと思います。ですから、黒田さんはあまりにも懐疑的になる必要はないし、私たちもそう思っておりませんが、協議はぜひしていただきたいと思うんです。
伊藤憲一(議長) アメリカについては、かなり前の段階では東アジアの国々だけで集まるという動きには抵抗を示していた時期もございましたけれども、もう20年近く前ですね。そういう段階はもう過ぎ去ったという感じを受けていたのですけれども、今のミカラックさんの発言で改めて確認した思いがいたします。
申しわけありません。まだご発言ご希望の方が何人か残っておられますが、時計を見ましたらあと2、3分しかないので、申しわけございませんが、またの機会にお願いいたします。きょうは時間がなくなってしまって。
白石さんから最後の総括的なおまとめをいただいて、閉会に進みたいと思います。
白石 隆 2点だけ申し上げます。
本当にミドル・パワーというのは私が予想していたよりも遥かにいろいろな反応を招いたようでございますが、何度も申し上げておりますとおり、その趣旨は日本の自画像の見直しというのが今必要なのだということであります。
それから、1つだけ、黒田さんが非常に重要なことを補足的に言っていただいたので、その点だけ確認したいと思います。それは、経済統合において国が邪魔しているところがあるとおっしゃったのですけれども、まさにそのとおりでして、その意味では規制緩和だとか、制度の標準化のようなことが非常に大事で、それ自体、実は東アジア共同体というのを作っていく上での鍵になるだろうと思います。それでは、そのときどういう制度をつくるかというと、やはり原則の問題になってきて、それは先ほど有馬大使がおっしゃったような、例えば規範の問題に関わってくるということだけ確認して、もう私としては大体申し上げたいことは申し上げておりますので終えたいと思います。
伊藤憲一(議長) どうもありがとうございました。
本日は、朝10時から、ただ今もう午後5時を過ぎておりますが、長時間にわたり、この会議にご参加いただきました皆様に主催者を代表して御礼申し上げたいと思います。もちろんこの会議に出席するためにわざわざ飛行機に乗って、北京、ソウル、バンコクから参加していただきました張さん、金さん、そしてワッタナヤゴーンさんには最も感謝したいと思います。
それから、本日の会議の基調となる考え方を研究し、提言してくださった白石さん、添谷さん、高原さん、それから研究会のメンバーで、きょうパネリストには参加しませんでしたが、読売新聞の林田さんにも感謝したいと思います。
それから、本日のこの会議の模様は読売新聞さんが協賛してくださいまして、紙面にとりまとめてくださいます。本日、読売新聞社からレポーターの方がお越しでございます。
それからまた、本日、会議を裏方で支えてくださいました同時通訳の皆さん、速記の皆さん、また山田美樹を筆頭とする当フォーラム事務局の皆さんにも「よくやった」といってやりたいと思います。
それでは、皆さんに感謝して、皆さんで拍手をお願いいたします。(拍手)
どうもありがとうございました。これをもちまして閉会いたします。
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