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今後の取り組み
「ホームヘルパー自身が今取り組む事は何か」について
*本稿は、7月15日に開催した「介護を支えるヘルパーの会NO.2」に於いて中間集計結果をもとに提起した内容について、最終集計結果の内容を加味し、改めて提起するものです。
 
「ヘルパー自身が今取り組む事は何か」
(はじめに)
 一昨年12月、目前の介護保険制度導入に当たり私達は大きな不安を抱きました。
 何故なら、その年の滞在型ホームヘルプサービス委託料に関する国の補助基準の改定に伴ない派遣活動費単価の家事中心型が切り下げられた他、事業運営費が廃止となり、それがそのまま当時のホームヘルパーの労働条件にも大きく影響したからであります。
 移動交通費の減額、会議費など業務関連経費の削減そして稼動単価の切り下げなどが多くの事業所で提案され、中には実施されたところもありました。
 この会に所属するホームヘルパーの事業所でも、実際に提案がなされ、嫌なら退職も止むを得ないという事態となりました。話合いの結果、なんとか現状維持にはなりましたが、国・自治体の施策の方向性が自分達の労働条件に大きく且つ直接に影響するのだということが判りました。
 同時に、事業体も国・地方自治体の施策の前には無力であることが判りました。
 そのような中、介護保険制度を自治体の中で運営するにあたっての議論が介護保険策定委員会という処でなされましたが、最後までホームヘルパーの労働条件や現状の抱える問題についての改善は議題となりませんでした。
 札幌地区連合に編纂をお願いし、2000年1月に発行した「札幌市ホームヘルパー労働条件白書」は、このホームヘルパーの実態を何とか行政・事業者そして福祉現場に働く人々に認識してもらうために企画されたものです。
 同白書の中に如実に表れていた、ホームヘルパーの実態はその後、改善されたでしょうか。
 間違いなく改善はされておりません。私達が、現場で働いていて、そして相談を受けてみて実感するところでは、労働条件に限って言及すれば悪化していると言えます。
 私達は、その悪化の内容が何であるのか、そして何処に原因があるのか、改善するためにはどうしたら良いのかを議論すべきであると考えました。そして、今回の集会・アンケートの実施に至った次第であります。
 介護という地域中心型福祉については絶対に質の低下はあってはならず、常に内容を検証しながら、適宜対応し充実したものにしていく必要があります。
 そのためには、介護の中心的担い手であるホームヘルパーがどうすべきであるかを、「札幌市ホームヘルパー就労・生活実態調査」の集計を基に提起してまいります。
 
1. 2000年4月からホームヘルパーの労働条件改善の主体は誰か
(1)介護保険制度の中で改善された状況から
(1)利用者に対する改善はある
i. 介護保険料の減免措置
 低所得を理由として、第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料を減免する市町村が、本年5月8日までに道内では41となっている。また、現金支給等の措置を含めると59、何らかの利用者負担の減を合わせると91となる。
 福祉と生活を守るという観点からは、当然と思うが厚生労働省では、「公平負担の原則からみて好ましいものではない」という姿勢に一貫している。
 本年2月時点で、要介護認定者数が12万4,587人、サービス利用者は9万4587人となっている。
 これらの、地域住民と接する地方自治体では、10月からの保険料全額徴収を控えて、保険料負担を理由として高齢者がサービスの利用を減らさないよう、何らかの措置が必要であると認識し、このような結果となった。
 減免に関する利用者への配慮については、利用者自身の他、様々な機関から行政に要請があることから、行政としても動かざるを得ないという状況といえる。
 
ii. 苦情申し立て
 介護保険制度導入時より介護保険審査会が要介護認定に関する不服を受け付けているが、札幌市では2000年4月より「福祉サービス苦情相談センター」を設置し、介護サービスを含めた福祉サービスに関する相談を利用者から受け付けている。実態として、民間の介護サービス提供事業者に関するものが51.6%と一番多いものとなっている。
 また、行政の介護に対する姿勢・対応方についての苦情は、本年3月に設置された札幌市オンブズマンにより受け付け可能となっている。
 利用者対民間事業者という構図の中ではこの他に市場原理に基く企業独自の苦情処理が、内容はさておき存在する。
 行政については、制度の円滑な推進のための措置として、民間事業については、市場競争に勝ち抜くための顧客獲得の措置として、苦情に対する配慮をせざるを得ないという実態である。
 
iii. 付帯環境について
 札幌市についていえば、昨年10月に札幌市介護保険・福祉サービス事業所ガイドブックを作成し、区別に事業所の概要をまとめ公表している。
 さらに改善を求める要請も受けており、札幌市では改善の予定としている。
 調査もの・出版ものについては、よほどの経費・作業が見込まれない限り実施に至る。
 
(2)ホームヘルパーのための成果については
 本年4月に各事業者宛に、雇用保険の適用基準の改定が通知された。
 内容は、「ホームヘルパーの雇用保険の適用と労働時間の算定について」と題して、ホームヘルパーの労働時間には、利用者宅間の移動時間及び業務上必要とされる報告書等について作成に要する時間が含まれる、とした。
 知る限りでは、介護保険制度が導入されてから、ホームヘルパーの働き方について行政から方針がなされたのは、これが初めてである。
 しかしながら、これは公共職業安定所から各事業主へ通知されたものであって、地域福祉の総括責任者である地方自治体については知らされていないのが実情である。
 
(2)主体が当事者でない
 以上の通り、利用者の立場から見た、既存高齢者福祉との比較に於いての不利益に関する保護については、制度開始前から、介護保険制度の中の改善については導入時から、正に走りながらとはいえ検討されている。
 しかしながら、介護の担い手であるホームヘルパーについては、国の労働行政機関からやっと、一つ出されたという程度である。
 これは、何処に原因があるのだろうか。
 やはり、改善を求める主体が誰であるのかというところではないかと考える。
 残念ながら、これまでホームヘルパーの労働条件や処遇改善が、ホームヘルパーが主体となって取り組まれた事例は少ない。
 職場で交渉のできる組織、所謂「労働組合」を結成したとしても事業所内の改善交渉に帰結し、その数が少数ということであれば、残念ながら地域福祉の「元締め」である自治体には、現場・主体者の声としては届きにくい。札幌地区連合の進めてきた取り組みの限界はここにある。
 従って、未だに自治体が認識するホームヘルパーの労働条件・処遇は、あくまで個別労使間の問題である。
 決して、地域福祉の充実を担保するものとは考えていないのである。
 
(3)主体にはなれないのか
 6月10日に開催した「介護を支えるヘルパーの集会NO.1」には、150名を越えるホームヘルパーが参加し、7月15日に開催した「介護を支えるヘルパーの集会NO.2」には60名を越えるホームヘルパーが参加した。しかし、実は、昨年3月5日、ホームヘルパーは独自で学習会を開催しているのである。
 内容は、札幌地区連合が編纂した「札幌市ホームヘルパーの労働条件白書」をベースにした、介護保険制度が導入されようとしている時に自分達の労働条件はこれでいいのかという学習会的なものであった。50名規模の小さな会場であったが、収容人員を上回る数のホームヘルパーが参加しているのである。やはり、自分達の生活や仕事のプライド・在り方に間違い無く関係するというものについては、高い関心があるのである。
 また、今回のように、改善のための問題提起がなされていれば必ず多くのホームヘルパーが集る。これは、現状のホームヘルパーの意識として高く評価される。
 この意識がある以上必ず主体となることはできるのである。







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