4. 調査・研究結果
(1)底泥の浄化能力としてのリン酸塩取り込み能の評価
4−1. 無菌化操作の結果
AM9を用いた無菌化操作では、AM9の濃度が25%ではほとんど除菌されず、濃度が増加するにしたがってNitzschia sp.の死滅割合が増加した。DAPI染色の結果では、30%で約1/4、35−40%で約1/3のNitzschia sp.が死滅し、45%では急激に死滅割合が増加し、すべて死滅した。この結果から、45%では不適切とみなし、40%濃度がNitzschia sp.の無菌化に適していると結論された(図8)。
図8 AM9を用いた無菌化操作の結果。(a)操作前と(b)40%濃度、48時間適用後。AM9の適用により、バクテリア(白点)数が明らかに減少していることが分かる。Nitzschia sp.の赤色に光っているのはクロロフィルによる自家蛍光。
4−2. リン酸塩取り込みの経時変化
Nitzschia sp.によるリン酸塩取り込み速度は、培養開始後約90分間はほぼ一定であったが(0.0015〜0.0024 pmol cell−1 hr−1)、120〜240分では低下し(0.0010〜0.0014pmol cell−1 hr−1;図9)、それらの間には有意な差(t検定、P<0.05)が見られた。そこで以下の取り込み実験の時間を90分に設定した。
(拡大画像:92KB) |
 |
図9 Nitzschia sp.によるリン酸塩取り込みの時間依存性
4−3. リン酸塩取り込み速度と半飽和定数
リンを枯渇させたNitzschia sp.細胞を用いて90分間のリン酸塩取り込み実験を行ったところ、環境水中のリン酸塩濃度(S)が高くなるにつれて取り込み速度(ρ)は大きくなり、本研究で設定した最高濃度条件(1280μM)でも飽和せず、さらに高濃度でも取り込み速度は大きくなるように思われた。これらの実験値をMichaelis−Menten式(式1)に当てはめたところ、最大取り込み速度(ρmax)は0.371pmol cell−1 hr−1、半飽和定数(Ks)は2480μMが得られた(r2=0.915;図10)。
(拡大画像:89KB) |
 |
図10 Nitzschia sp.によるリン酸塩取り込みの濃度依存性
|