1−2. リン酸塩取り込み予備実験
藻類による栄養塩の取り込み速度は基本的には環境水中の栄養塩濃度に依存するが、細胞内に栄養塩プールを持つ場合には、そのプール・サイズの大小によっても異なることが知られている(Eppley et al. 1969a)。したがって、取り込み速度の濃度依存性を評価するためには、栄養塩添加後、その取り込みが一定である時間内、すなわち、細胞の履歴が変化しない時間内で実験を行う必要がある(Harrison et al. 1989)。そこで、本実験に先立ち、リン酸塩取り込みの経時的変化を次のように調べた。
上記のNitzschia sp.海田湾株を用いてリン源を含まないL1培地で、細胞の増殖が停止するまでバッチ培養を行った(図2)。リン酸塩(P04−P)の最終濃度を約10μmolに調整したL1培地を250ml培養容器(フィルターキャップ培養用フラスコ、ポリスチレン、γ線滅菌済、Nalge Nunc International社製)に80mlずつ分注し、これに細胞培養液を20mlずつ添加した。これらを軽く撹拌した後、培養開始0、10、20、30、45、60、90、120、180、240分後に培養液を濾過し、リン酸塩濃度の経時変化を追跡した(図3)。
図2 前培養手順。リン酸塩を含まないL1培地でNitzschia sp.無菌クローン株の培養を細胞の増殖が停止するまで培養を行い、リン酸塩枯渇細胞を作る。培養条件:15℃、25psu、30μmol m−2sec−1。培養前後で細胞数の計数とリン酸塩濃度を測定することで、増殖停止を確認。
図3 予備実験操作手順。次に行うリン酸塩取り込み実験の実験時間設定のための実験。
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