無菌化操作は次の方法で行った。維持培養しておいたNitzschia sp.の培養液に対し、実験開始一週間前に抗生物質混合液AM9（表1）を25、30、35、40％になるように添加した（図1）。培養器の中で48時間静置後、Nitzschia sp.を培養容器の底に沈めた状態で、培養液50mlのうち上澄みを40ml抜き取って新鮮培地を40ml添加するという作業を4回繰り返した。

　また、無菌検査は次の方法で行った。無菌化操作を行った培養液から少量を抜き取り、グルタールアルデヒドを添加して1時間以上固定した。その後、DAPI（4’、6−diamidino−2−phenylinodole）を添加し、1時間発色させた。それをSudan black Bで染めたフィルター（Nuclepore、φ0.2μm）上に捕集した。これをスライドガラス上に置き、直ちに無蛍光エマルジョンオイルを滴下してカバーガラスをかぶせてプレパラートを作成した。これを数日間冷蔵庫で安定させ、落射型蛍光顕微鏡で検鏡した（Porter and Feig 1980）。

　継代培養には、広島湾表層海水を用いて調整した海水強化培地f／2（Guillard and Ryther 1963、Guillard 1975；表2）を濾過滅菌（Millipore Sterivex−GV、φ0.22μm）して使用した。一方、前培養ならびに本実験の際には、人工海水L1培地（Guillard and Hargraves 1993、Keller et al. 1987；表3、4）を同様に濾過滅菌して使用した。また、両培地ともケイ酸塩を添加し、HClまたはNaOHでpH8.2に調整して用いた。さらに、セレン添加の必要性が注目されていることから（Ishimaru 1989、Doblin et al. 1999）、全ての培地にセレン（Na₂SeO₃）を添加した。なお全ての場合に付着基質となるガラスビーズ（井内盛栄堂、ガラスビーズ、BZ−01）を添加した。

　培養時の水温、塩分、光強度はそれぞれ本種の増殖至適条件である15℃，25psu，30μmol m⁻²s⁻¹（広島県環境保健協会　2002）とし、明暗周期を12L：12Dに設定した。