2−7 システム試験運用の成果発表シンポジウム
2−1節、2−2節で見たようなサポート資源提供システムの開発状況や、2−5節・2−6節で見たようなシステム試験運用の成果について社会に発信すること、および、全国の類似の取り組みを促進することを目指して、2001年10月27日に、公開シンポジウム「企業が動くと社会が変わる! サポート資源提供システムがめざす企業とNPOの新しい関係 企業もNPOも、社会的な価値を生み出すために活動している!」を開催した。(会場 日専連BEEB5階コンファレンスホール(宮城県仙台市青葉区一番町4−1−3))
シンポジウムは、大きく2部構成で行った。第1部 「サポート資源提供システムがめざす企業とNPOの新しい関係」では、まず、東北大学大学院経済学研究科教授の大滝精一氏と、安田火災海上保険株式会社地球環境部長であり、経団連社会貢献推進委員会の社会貢献担当者懇談会共同座長である瀬尾隆史氏より、話題・事例提供をいただいた。
大滝氏からは「企業とNPOの連携」と題し、企業の社会貢献活動を取り巻く状況の変化(チャリティとしての関係から本業での連携へ)や、企業とNPOの現状、さらに、NPOとの連携が企業に与える効果といったポイントについてお話いただいた。さらに、今回のシステムの特徴・意義について、以下の6点を指摘いただいた。
(1) |
社会貢献活動型の連携に基礎を置き、その先により強い連携を目指していること。 |
(2) |
NPOと企業との連携のインフラを整備し、お互いの顔が見えるマーケット作りをし、NPOと企業をマッチングしていること。 |
(3) |
NPOの情報公開と情報開示の場を設置することで、NPOのアカウンタビリティを果たしていること。 |
(4) |
「物・場所」「情報・パソコン」「金」「人」といった多様な資源提供メニューが含まれており、やれるところから支援をすることができ、長続きする連携が生じること。 |
(5) |
大企業の少ない地方都市にとってのモデルとして重要な意義を持っていること。 |
(6) |
このシステムを上手く発展させていくことによって、大きな意味での地域振興や地域活性化の基礎づくりができる可能性があること。 |
続いて瀬尾氏から、安田火災海上保険株式会社の社会貢献への取り粗み(環境教育の取り組みや、学生をNPOに派遣する奨学金制度等)や経団連での取り組み(社会貢献推進委員会、社会貢献担当者懇談会など)についてご紹介いただいた。
さらに第1部では、瀬尾氏と、株式会社一ノ蔵代表取締役社長の浅見紀夫氏、およびせんだい・みやぎNPOセンター常務理事・事務局長の紅邑晶子の3者によるパネルディスカッションを展開した。
浅見氏より、社会貢献へのスタンスや、NPOと関わるようになったきっかけ、サポート資源提供システムの開発に参加しての印象などをお話いただきながら、企業から見たNPO像の変化、最近の企業の社会貢献の現状と課題、といったテーマに話題が展開した。
続く第2部では、サポート資源提供システムの試験運用報告が行われた。せんだい・みやぎNPOセンター代表理事・常務理事の加藤哲夫より、システムの概要・運用状況・今後の展望について概略の報告を行った後、サポート資源提供システムを通じて資源を受け取ったNPO、およびシステム開発に参加した企業からの報告が行われた。
まずNPO側を代表して、特定非営利活動法人宮城県断酒会の理事長である鈴木武氏より、システムを通じて提供された中古パソコンを活用した、アルコール依存症からのリハビリのためのパソコン教室についてご報告いただいた。
宮城県断酒会 報告の様子
この他、NPO側からは、精神障害者のグループホーム、小規模作業所を運営する「ソキウスせんだい」より、書面による報告があった。
続いて最後に、サポート資源提供システム開発参加企業からの報告があった。
(株)フレックス池田代表取締役の池田鏡一氏から、NPOに関心を持ったきっかけや、(社)宮城県情報サービス産業協会からのパソコン提供について、現状と、今後の方向性についてお話いただいた。
続いて宮城労働金庫の北 尚登 氏から、創立50周年事業の一環で企画している「ボランティア助成」、「NPO寄付システム」、「振込手数料免除」について説明をいただいた。
さらに、(株)日専連ライフサービスの山田照明氏、金子勝裕氏から、クレジットカードを活用した寄付の仕組みを説明いただいた。また、最後に書面にて、仙台青葉ライオンズクラブの助成事業についての報告が行われた。
この公開シンポジウムは、サポート資源提供システムの試験運用開始後初めて、関係する企業とNPOが直接顔を合わせる場となった。このことは、これまでシステム開発に参加しつつも、なかなかNPOの顔が見えなかった企業担当者にとっても、資源提供を受けたNPO関係者にとっても、新鮮な経験であったようである。今後もこのような交流の機会提供をシステムの事業の1つの柱として展開していきたい。
ただ、今回のシンポジウムは、参加者も内容も多様であったこともあり、若干焦点がぼやけた感もあった。そのことは、前3回のセミナー(企業向け1回、NPO向け2回)のアンケート結果と比べて、満足度が低く出ていることに反映されている。今後の企画に際しては、このような多様な関心・背景を持つ参加者をどのようにひきつけて、交流を促進するか、工夫が必要なところである。
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