5)真実を語ること
真実を語ることは木のすべての大枝を取り巻くものとして描かれている。ホスピス実践は「患者の人生における現実の問題について真実を語ること」を必要とする。ホスピスナースは何が真実かということを理解するための多くの生物学的・心理学的・社会的な臨床知識を必要とする。真実が語られてこそ、先に述べたような真実の選択も可能となる。「真実によって人々は解放され」、生死について自由に選択できるようになる。熟練ホスピスナースの「真実を語ること」には、指摘されなければならない恐ろしい話題について難しい質問をしたり話したりすることも含まれる。「彼らは真実を知りたがっている。そのタイミングが技術を要する。」熟練ホスピスナースはガンと死のこと、症状の意味、通常の終末期の過程、医学的治療により何が得られるかなどについてオープンに話す。しばしば真実自体が変化する。それはホスピス患者にとっての現実が、治療によって回復する病理のことから残された限られた生の中でのQOLへと焦点を変えるからである。真実を語ることには回避に対しどのくらい押し迫るべきか、またいつ引き下がって否認を選択したことを尊重すべきかを知ることも含まれる。たとえば、家族メンバーが顔をそむけたり、乱暴に部屋を出て行くようなとき、ナースはその話題を追求すべきか、話題の変化を尊重すべきかを選択する。なぜならその話題を続けることは今まで築いてきた関係を変えてしまうかもしれないからだ。
6)協働すること
協働することはホスピスの木の中心から伸びる最初の枝として描くことができる。すべてのホスピス看護実践は、オフィスのカンファレンステーブルの周りでは常に、また訪問の間もしばしば協働的である。ホスピスチームからの最初の訪問者はたいていナースなので、他の専門職者を引き入れるのもたいていナースである。つなげることで関係を築き、選択を促すことには他のチームメンバーからの助けを受けるという選択が含まれる。ある専門職者はチームの中でいかに事を運ぶかについて次のように述べている。「入っていって、彼らを身体的にできるだけ快適にさせ、物事を落ち着かせる。彼らを楽にするために入浴用補助具を入れる。それからソーシャルワーカーに依頼し、彼らの相談相手となり、金銭的な問題について話し合ってもらう。そのあと牧師が来る。」
多くのホスピスナースは、患者や家族の抵抗があるときに援助を引き入れる挑戦について話す。抵抗の理由には次のようなものがある:自己能力の過大評価、援助を求めることへの恥じらい、外部との強い結びつきとともに家族ダイナミクスが困難に巻き込まれること、プライバシーの強い欲求、患者や家族のコントロールしたいという欲求、援助の必要性の増大に直面したくない、または直面できないということである。一般的にナースは、家族はチーム全体の助けがあるほうがよりうまくやれると信じているが、にもかかわらず自らを守るための患者や家族の選択を尊重する。これはとりわけ、基本的な人間の欲求さえ満たされていないのに、「一人にさせてくれ」と要求する患者においては難しい。熟練ナースは、患者の選択の尊重と技術の追求とのバランスをとり、寝たきりで、自分の排泄物にまみれ、呼吸さえ困難な患者を説得して、ホームヘルスエイドを導入したり、親族への援助を要請することなどを納得してもらう。
チームワークの実践はホスピス実践の中で高い満足感が得られる側面である。「チームがなかったら、たった一人で患者のニーズを解釈しなければならない。」チームワークにおいては機能がオーバーラップすることもあり、ナースが、「ケアを与える人そのものであるという愛着を手放す」ことを必要とする。症状コントロールに不可欠な医師との密接な協働は、ホスピスの実践にとって非常に重要である。症状を緩和する能力についての議論でも見られるように、ホスピスナースは常に変化する症状の問題を解決するために高いレベルの主導権をもっている。医療の実践とのオーバーラップは重要である。「医師には私自身の経験から話します。私は彼らに有効であることがわかったことを話します。彼らが私の経験や助言の利益について受け入れてくれる時はやりがいを感じます。また彼らは、私が彼らに何をなすべきか教えようとしているように感じるときもあります。」「あなたがいらいらの種だと医師たちが感じていても彼らから離れてはいけません。あなたは試してみるべきことがあるのを知っているのです。知識を豊富にもち、彼らが受け入れられるようなやり方で医師に情報を提供するようにしなければなりません。AプランかBプランかを推薦しなさい。」ホスピスナースは、とりわけ他の医師が有効な緩和的手段を使うことに抵抗している場合には、ホスピスのメディカルディレクターとともに働くときがある。さらにホスピスナースは患者の擁護者として、抵抗する医師だけでなく、既存の規制システムにも立ち向かわなくてはならない。たとえば、処方や麻薬に関する複雑な規制、サービス償還を取り巻く規制などである。ナースは家族の擁護のために地域の機関を動かし、例外を作る必要について役人に対して「真実を語る。」
7)家族を強くすること
在宅でのホスピスケアでは家族メンバーによる介護が必要となる。この議論のために、血縁関係、姻戚関係、または個人的なかかわりのある人々を家族と定義する。違いを生み出したことについてのナースの逸話には末期患者の家族を強くするための仕事に焦点を当てた、広範囲の話も含まれている。4つの側面が描き出された:1)アセスメントすること、2)能力を発展させること、3)架け橋となること、4)限界を認識することである。
家族をアセスメントすることには家族ダイナミクスの観察、家族の歴史を学ぶこと、家族の人生のすべての側面に対し死にゆくことが与えるインパクトを見極めること、彼らの能力を見極めることが含まれている。「家に入ったら、主介護者を観察するだけでなく、他の家族についても観察しなければならない。悲しみやストレスを見、協力してやっていく能力を探し出さなければならない。」
能力を発展させることには、介護者の能力を育てるために教えたり他のアプローチをとったりすることが含まれる。「教えることが一番重要。それが他のすべてのことを可能にする。」教えることは家族の理解と学ぼうとする姿勢について見極めることから始まる。学ぶ能力はたいてい強い情緒的反応により妨げられる。教えることには、患者の身体的・情緒的状態について「なぜ」こうなっていて、「どのように」ケアをすれば良いのかを説明することを含む。ホスピスナースは反復と役割モデルを使用する。「家族のために、私は彼の個人的ケアをしたり、話しかけたり、彼のそばにいたり、彼の言うことを受け止めたり、彼の感情を認めたりする役割を演じて見せた。」
広範囲な問答による対話もまた良く行なわれている。患者と家族メンバーの情緒的・身体的反応は、通常の死の過程で予測されることについてのナースの知識に関連して解釈される。「これらは通常の崩壊と悪化です。」介護者の能力育成に関連したアプローチとしては、新しい治療法のタイムトライアルや行動計画の提案をして、家族の力を強める外部のサポートシステムを再編成したり、開発することが含まれる。介護者の強みを肯定することにより能力は継続的に強められる。「私は彼らに、彼らがいかによく彼をケアしているかということや、彼らの行なったすべての良い決断について、多くの励ましとフィードバックを与えた。」
家族メンバー同士の架け橋となることは、家族の力を強くしようとするホスピスナースの仕事のユニークな側面である。「お互いに話す必要があることを話す」ことができるように、ナースたちは家族メンバーに互いのコミュニケーションの仕方についてたびたびアドバイスする。感謝の気持ちや許しを表現することはとりわけ奨励される。死に対する一般的な反応についての卓越した理解に基づき、彼らはある家族メンバーの別のメンバーに対する行動について解釈する。時には、家族メンバーが互いに話をするのを助けるためにナースの存在を利用することもある。「第三者の存在があってこそ互いに耳を傾けることができるときもある。」ときには、家族メンバーが互いに話さないとき、ホスピスナースが仲介者として働くこともある。加えて、ナースは家族メンバーのニーズを反映している他の家族メンバーの話に耳を傾けることもある。ナースは、コミュニケーションのためにしばしばベッドサイドやキッチンのテーブルやリビングルームに家族メンバーを集める。集めることにはしばしば子どもを巻き込むための特別な努力も含まれる。
最後に、限界を認識することが、家族の力を強くする仕事においてしばしば非常に重要になる。熟練ホスピスナースは彼らの能力を制限している環境を見分け、彼らを裁かないことを学んでいる。「機能不全の家族は死にゆく過程とその後まで機能不全のままである。」そのような場合、熟練ナースは目標を達成可能なレベルに制限する。「私は彼らを変えるという目標は設定しない。」たとえば、死に直面していても口汚く罵り合う関係が変わりそうもないこともある。限界を認識することには反社会的な行動に対する限界を設定することも含まれる。「彼女はスタッフを互いに敵対させようとする。我々は彼女に団結して向かい合う。」
8)苦痛を緩和すること
苦痛を取り除くことは患者の経験と選択を強く尊重することから生じる。苦痛の緩和は、医師との協働を通して成し遂げられる一方、他方ではその時々の苦痛緩和を行う家族の力を強くすることによって成し遂げられる。熟練ホスピスナースは苦痛の緩和の選択肢や方法などについて熟知している。「適切な方法がXかYかZであるというとき、私は複数の方法をもつことができることを本当にうれしく思う。」。熟練ホスピスナースは家庭訪問のとき、いつも現在の苦痛のレベルを注意深くアセスメントする。広範囲な苦痛緩和のための戦略には次のようなものが含まれる:1)実際に手をかけてケアをすること、2)苦痛緩和のニーズを予測すること、3)多様な選択肢を試すこと、4)薬剤の効果のバランスをとること、5)治療法を組織化し、また再構築すること、6)治療法の大きな変更をすること、7)伝統的でない治療を始めること、8)限界を認識することである。
実際に手をかけてケアをすることには、安楽を提供するための基本的な看護処置の巧みな実践と、頻繁な創造的応用とが含まれる。「我々は徐々に分泌物を制御することができ、ドレッシング材を複雑でないようにすることができたので、扱いやすくなった。」「我々はダブルベッドの隣にシングルベッドを置き、それを一緒にして枕を用意したので、彼女は大きく膨れた足を楽に置くことができ、彼らは彼女に痛みを与えずに添い寝できるようになった。」実際のケアには徐々にレベルアップする技術的洗練、つまり注射部位やポンプやほかのハイテク手技を巧みにとり扱うことも要求される。
苦痛緩和のニーズを予測することは、熟練ホスピス看護の顕著な特徴で、「危機を予測することにより危機を回避できる。我々は起こりうることが何か、何をすべきかということを通して、彼らを一歩一歩導いている。」もし出血の可能性があれば、ナースはどのように対処したらよいか、家族とともにリハーサルをする。呼吸困難の可能性がある場合も同様なことをする。これらの予期される状況で用いるために抗不安薬や他の症状緩和薬が確保され、家に置かれる。
ホスピスのエキスパートはいつも症状緩和のため多様な選択肢を試みる。「いつもいくつかのオプションをもって戻ってくる。異なる方法や時間で薬を飲ませてみる。」効果的で、高度な技術を要しない方法が経済性と非侵襲性から最初に選択されるが、ホスピスナースは必要であればハイテクを用いる方法を提案する専門技術ももっている。
薬剤の効果のバランスをとることは、多くの種類の大量の麻薬と、症状をコントロールすることができる、そのほかの薬剤を用いて行なわれる。「大切なことは、彼女がコントロールされていないと感じないようにするためにどのくらい与えるべきかを決定することだった。」
症状をコントロールし副作用を最小化するために、ほとんどの訪問において治療法を組織化し、再構築することが行なわれている。「投与ルートを変更し、スケジュールを変え、酸素を与え、個人的ケアニーズを特定した。」
たびたび症状が変化するときは、治療法の大きな変更が必要となる。「彼女は翌日吐き始めた;彼女は腸閉塞を起こしていたのだ。私はCompazineの座薬を与え、鎮痛薬をVicodinからDuragesicに変更した。」
熟練ホスピスナースは代替的なアプローチを用いること、伝統的でない治療を始めることに対し非常にオープンである。「我々が彼のウォークマンに音楽を流すと、次第にかすれた呼吸と興奮とが変化していった。」
以上に示してきたような卓越した伝統的な方法や新しい方法による症状コントロールにもかかわらず、ホスピスナースは限界を認識するようになる。「私は馬を殺せるくらいの量のHaldolを与えたが、彼女はまだ叫び声をあげていた。」
9)スピリチュアルなケアをすること
ホスピスナースはしばしば患者のニーズやケアの特別な側面を解釈するのにスピリチュアルな言語を用いる。ナースの中にはホスピス看護は基本的にスピリチュアルであるという信念をもつ者がいる一方、正反対にスピリチュアルな視点を拒否するナースもいる。後者のナースは、特定されたスピリチュアルな問題はすべてスピリチュアルなことに関するカウンセラーにもちこむ。「この仕事をするのには自分が何を信じているかということについての強い意識をもつことが必要である。」スピリチュアルなケアをすることには、1)スピリチュアルな問題を認識すること、2)スピリチュアルな問題について会話すること、3)和解を促すこと、4)死に近づいている経験を分かち合うことが含まれる。
スピリチュアルな問題を認識することには、宗教的な信念についてのはっきりした問題の認識と同様、意味・目的・許し・超越した存在などについてのあいまいな葛藤について気づくことも含まれる。何人かのナースは忘れがたい経験を強い動揺と緩和されない苦悩とに関連づけており、それがスピリチュアルな原因によるものと考えていた。あるナースは、神の名のもとに多くの礼拝を行ってきたのに神が彼を死なせようとしていることに対して怒っている宣教師について語った。「私は彼の魂の中に多くの不安があると感じた。それは明白であった。彼は信じられないほど多量のモルヒネを与えられているのに非常に強い痛みがあり、彼はじっとしていることができなかった。彼は常に動いており、死から逃げようとしていた。」
スピリチュアルな問題についての会話は真に分かち合っているという感覚をもっている。「私は自分の魂が本当に彼らの魂と分かち合っているように感じる。」「私は魂と魂とが話し合っていることがわかった。」スピリチュアルな問題をもつことが不快でないナースは、信念やスピリチュァルな問題が起こってくるとそれを探り出していく。「我々は彼のスピリチュアルな問題について3日間分かち合った。」「『どうして私がこうなったの?』彼等が話したがっていることはそういうことなんです。」スピリチュアルなケアをすることには本題をオープンにするような質問をすることも含まれる。「実際のところ人生はあなたにとって何を意味していたのですか?」家族メンバーの架け橋となることはナースが患者と家族の体験をお互いに対して通訳する役割を果すことを示している。「あたかも彼は誰かが自分の愛する人々に対して起きていることについて説明してくれるのを待っているようであった。そうすれば彼らは彼に対して言うべきことを言うことができるからである。」
和解を促すことには他人と、神と、そして自分自身の人生との関係を解決することが含まれる。ナースは人生の振り返り、過去の人生経験の統合を促し、意味があるという感覚と許しを見つけることができるようにする。「彼らはビールとピザを注文し、私たちはビールとピザで少し彼の死後の思い出の時間を過ごした。私は『私は彼のことを短い間しか知らなかった。あなた方は彼について何を思い出しますか?』という。私たちはジョークを言い、泣き、笑い、仕事をすませることができた。」あるナースはこれを「家族とともに和解の機会の窓」を開くプロセスと呼んだ。
最後に、ホスピスナースたちは死に近づいている経験を分かち合うことについて語った。「彼女は天使と話していた。私は家族に、彼女がこの経験から得ている慰めについて伝えようとした。」多くは、彼らの経験をホスピスナースの著者Callanan & Kelley(1992)の教えによって解釈していた。彼らは末期患者によって「近づく死に気づくこと」が、近づく旅路について語り、見ることのできない存在について報告し、美しい場所を見、いつ死ぬのか知っていることとして特徴付けられたと述べている。2、3人のナースは死にゆく患者をケアしているときの自分たち自身の神秘的な経験について語った。
10)解放に導くこと
最後のケア能力は、人々がすでにわかっているように、人生を手放すことを助けるプロセスである。この能力には、1)以前の希望や活動を手放させること、2)人生自体から解放すること、3)差し迫った死を予測すること、4)死に立ち会うことが含まれる。「私は解放という概念全体とこれをどのように行なうかということに取り組んでいる。」「あなたにこれが起こりうるということは、他の人にもそれが起こりうるということを意味している。」この仕事のすべてには悲しみ、怒り、恐れに注意深く耳を傾けることが含まれる。「彼女は、自分自身の恐怖をいくらか言語化することができたときに解放された。」
解放のプロセスは物質的な所有と日常の活動や関係性を手放すことから人生自体を手放すことへと進行する。以前の希望や活動を手放すのを導くことには、感情に左右されずに動き、それぞれの別れをどのように行なうかという解決法を見いだすことが含まれる。喪失とはたとえば、車の運転・独立した生活・効果のない治癒目的の治療・固形物を食べること・愛する人と共にいることなどを最後にはあきらめることである。「ホスピスケアの中で何度も何度もすること、それは人々がもはや現実的ではない希望をあきらめ、来るべきことを予期するよう助けることである。」
人生自体から解放されるのを手助けすることには、終わっていない仕事に苦悶している人々に対する援助と意識的に人生を手放すことを選んだ人々に対する援助が含まれている。人々が末期状態の疾患を長く患っているとき、熟練ホスピスナースはしばしばその人々がリラックスして「平和のうちに逝く」のを妨げている未解決の問題を探す。終わっていない課題は何か?言えずにいる言葉は何か?「患者はただ解放されていないだけだ。彼女はただあきらめたくないのだ。家族は彼女に許しを与えていた。彼女が何かしなくてはいけないことにまだすがりついていることは明らかだった。」対照的に、死に対して積極的に準備をし、いつそれが起こるかを予測さえする人々もいる。この人々は人生の中の終わっていない仕事を解決するために積極的に看護婦の手助けを求める。「彼女はリストをすべて片づけ、すべて終わらせて死んだ。」
差し迫った死を予測することには、ある人々は自分の死を予測することができ、そのような予期はまじめに受け取らなくてはならないという卓越した知識がある。さらに、熟練ホスピスナースは差し迫った死の生理学的、心理社会的、スピリチュアルな手がかりを認識することができる。「私たちはいつ人々が亡くなるかを評価することを学んでいる。」しかし、ナースたちは常にそういう技能をもち合わせているわけではなく、驚かされることもある、と警告している。ホスピスナースは最期が近づいていることがわかるということから、あるナースはその実践を患者と家族のための「予期と準備」であるとまとめている。ホスピスナースは家族に自分たちで自宅で死を診断し対処する方法を教えることを強調しているが、実際に死の時にその場にいることはナースの最も忘れがたい経験のいくつかを呼び起こす。彼らは死が差し迫っていることを診断し、起こっていることを解釈し、家族が集まるよう促し、お別れの役割モデルを演じ、締めくくりの最期の言葉を強調する。多くのナースは家族メンバーが亡くなる患者に人生を手放す「許し」を与える、すなわち「彼に逝ってもいいことを保証し続ける」よう励ます。まれに最期に非常に苦しいこと、たとえば出血や急性呼吸不全や急激な痛みなどが起こるが、熟練ホスピスナースは緩和的な方法の医療設備の管理をする一方で、落ち着かせ、安心させる役割を引き受ける。
卓越したホスピス看護は死で終わるわけではない。ホスピスチームのメンバー、しばしばナース自身が死別した家族を自宅に訪ねたり、電話をしたり、手紙を書いたりして家族とナース自身が締めくくり解放されるのを促す。
◆考察
ホスピスナースには現在実践モデルがなく、ホスピス看護実践を描写するための概念的な言語は充分に分かち合われていない。能力についてのサマリーをレビューした後、ある熟練ホスピスナースは「明らかに私たちホスピスナースは同じことを行っており多くを分かち合っている」と締めくくった。この質的な描写により、実践ナースたちは一般的な実践的知識を明確な精神的描写として描き出すことができ、それによって彼らはお互いに、また管理者・同僚の専門職者・患者・家族・学生・政策作成者・一般的住民と、よりよく意志を伝えあうことができる。ホスピスケアモデルは看護学校やホスピス機関や夕ーミナルケアを提供しているすべての機関でホスピス看護教育のための枠組みの1つとなりえる。
将来の管理されたヘルスケアシステムの中で、ホスピス看護が寄与できることは何か?「善良な」ナースはこの仕事ができなくなってしまうのか?作られるべき、資金を提供されるべき、維持されるべき、改変されるべき、または削除されるべきヘルスケアプログラムについて決定がなされるとき、ホスピスケアモデルはホスピスのリーダーがホスピスナースのユニークな臨床的寄与をはっきり表現するために役立つだろう。
最後に、このホスピスモデルが1992年に太平洋岸北西部の32人の熟練ナースの目的的サンプルのインタビューから作られたことを忘れてはいけない。結果の解釈は状況と時期とに縛られる。この解釈は1人の研究者によってなされ、参加者との緊密な協働によって洗練され、結論は個人的な経験と価値観とに強く影響されている。このように、結果が広く応用できるかどうかはまだはっきりしておらず、読者は調査結果を広げ、洗練させてほしい。この研究は、実践の場にあるホスピスナースの卓越した臨床的英知を記録するために必要な拡大的な質的研究のほんの始まりにすぎない。
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